日本人としては、いつまでも「パールハーバー」を非難されるのには納得がいかない。そもそも戦争などというものはフェアなものではなく、奇襲はつきものである。「だまし討ち」ぐらいのことを非難するのならば、原爆投下や東京大空襲を実行したアメリカのほうが、よほど人の道に反している。そういう思いは、日本人ならば当然のように強く持っているはずだ。

日本人ジャーナリストとして全米を取材しているが、アメリカで「パールハーバー」の話題が出るたびに、「日米両国民は完全に分かり合えないだろう」と絶望感にさいなまれる。それほど「パールハーバー」は日本人とアメリカ人の双方の考え方に違いがある問題なのだ。

このため日本とアメリカの外交の席で、アメリカの大統領が「パールハーバー」という言葉を使うことは今までなかった。歴史認識の違いを表に立たせるだけで、外交には何の得もないからだ。複雑な過去を持つ日米外交のアメリカ側の「礼儀」のようなもので、今回トランプ大統領が「パールハーバー」を口にしたことは、外交の「礼儀」をわきまえない、日本に対する「非礼」な行為といってもいい。

日本への「非礼」に高市首相は、目の前に本人がいながら一言も反応しなかった。アメリカ側が自由なトークで日本をたたいたのだから「日本は多くの犠牲をはらって平和国家として歩み続けている」ぐらいの発信をしておかないといけなかったのだ。

「パールハーバー」発言は、アメリカから非難されっぱなしで、結果的に中国がほくそ笑むこととなった。高市首相は日本の「国益」を大きく損ねてしまったようだ。

【谷中太郎】
ニューヨークを拠点に活動するフリージャーナリスト。業界紙、地方紙、全国紙、テレビ、雑誌を渡り歩いたたたき上げ。専門は経済だが、事件・事故、政治、行政、スポーツ、文化芸能など守備範囲は幅広い。