看護師と性風俗店の二足のわらじで「月収100万円弱」虐待を経験した30歳女性が働く理由
高校生だったゆまさんは、高校2年生のはじめから卒業目前までを児童自立支援施設で過ごした。妹たちは年齢が離れていたため、別の施設に引き取られたという。薬物などの非行で入所している人や、ゆまさん同様に親との生活に何かしらの問題があってきている人が多かったと振り返る。同時に、「あのころ、まず『3食きちんと食べられるんだ』と安心したのをなぜか今でも思い出しますね」と笑った。
高卒後に実家からは離れ、看護の専門学校を経てゆまさんは看護師資格を取得。現在も、病棟勤務をしている。不安定な家庭で育ったからか、「どんな家庭をみても、自分よりマシに思えてしまう」と顔を曇らせる。それが悲劇を招いたこともある。
「26〜28歳のときに交際していて、婚約もした彼氏の話です。名のしれた企業に勤めており、ご両親にご挨拶をした際も非常ににこやかで『嫁姑問題も少なそうな、良い家庭だな』と感じました。ところが、入籍予定日の数日前になり、いきなり彼から『実は同時進行で交際していた女性がいて、妊娠したらしいから、その人と結婚したい』と告げられたんです。突然のことで、頭が真っ白になりました」
そのさらに数日後、ゆまさんの妊娠が発覚する。婚約者との子どもだ。
「彼にはそのことを伝えたのですが、『俺は(同時進行で交際していた女性と)結婚するから、産んでもらうのは自由だけれども、結婚はできない』と言われました」
本来であれば結婚と妊娠の喜びが二重になっただろう。だがゆまさんは失意のなかで中絶を選択せざるを得なかった。
◆救われた経験を国際協力に活かしたい
その後、冒頭で紹介したように性風俗店に勤務することを選択。「たまたまSNSで風俗の女性が『これくらい稼げる』みたいな動画が流れてきて……自分にもできるかなと思って」。けれども、「いまだに男性を心から信じることができないかもしれないです」と力なく微笑む。
現在は性風俗店の出勤日数も限定的だというものの、最盛期は看護師と風俗の二足のわらじで月収100万円弱を稼いだ。そこまで働いて「国際協力をしたい」と思うのはなぜなのか。
「私自身、不遇な学生時代を過ごしたと思いますが、家族に虐げられたときに公助によって救われた経験が大きいからだと思います。日本では誰もが平等に医療につながることができますが、たとえば紛争地帯などでは医療にアクセスすることさえできずに亡くなるお子さんも多いと聞きます。そうした格差を是正するために、微力ではありますが私も力になれればと思ったのが大きいでしょうね」
=====
傷ついたり悲惨な目に遭ったとき、「自分だけが不幸だ」と思わないことは存外難しい。どん底にいても、どこかで誰かに感謝をすることは結果的に自らを救う。きっとゆまさんはその誠実な心で、彼女だけにわかる“救われていない人”を探し、傷を癒やしていく。
<取材・文/黒島暁生>
【黒島暁生】
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
