この中で心境著しい1人が中島ではないか。ご存じの通り、2月28日のブラウブリッツ秋田戦でハットトリックを達成。J2クラブを相手に今季初勝利の原動力となったのだ。

 沖田監督は札幌時代から中島を指導しており、彼の長所やマイナス面、性格的なところもよく分かっていた。そういった関係性も中島の成長にプラスに働いていると見ていいだろう。

「大嘉に限らず、他の選手に対してもアプローチはまったく変わっていなくて、僕自身はプロとして契約に至っている時点で、ものすごい個性や特長がある選手たちだとリスペクトを感じています。その良さをどうやって一緒に伸ばしていくか、試合に出て活躍できるように仕向けていくかという部分に日々、向き合っているということですね。

 昨季のスタート時の順応力に驚かされた話をしましたけど、選手たちは自分の良さや凄さに気づいていないケースもけっこう多い。『ここまで攻撃の練習ばかりしたことがなかった』『やっていてすごく楽しい』という声も耳にしましたし、未知なる能力もピッチ上に表われてくると感じたし、実際にそうなってきています。

 我々の攻撃サッカーが実践された時に、大嘉の持つ得点能力も引き出される。実際、あんなに強力なフィニッシャーはなかなかいないので、もっとできると思います」
 
 沖田監督は筑波大時代に教員免許を取得したというが、選手たちを見る目線が“学校の先生”に近いものを感じさせる。中島もこれまでのレンタル先では「難しい選手」といった見られ方をされがちだったが、沖田監督は「時間が足りない。もっと向き合えば良さを引き出せるのに」ともどかしく感じていたことだろう。そうやって親身になって一人ひとりと向き合い続けることで、群馬は個の力と総合力の両方が上がっていくはずだ。

 超攻撃サッカーを研ぎ澄ませて、上のカテゴリーに上り詰めるのは、ロマンのようにも感じられるが、そういう大仕事をプロ経験のない40代の成長途上の指揮官がやってくれれば、Jリーグも活性化されるかもしれない。

 そういう意味で、沖田監督の一挙手一投足に注目だ。ここから百年構想リーグを経て、本番の26/27シーズンで勝てる集団へと変貌できるのか。その動向を興味深く見守っていきたいものである。

※このシリーズ了(全2回)

取材・文●元川悦子(フリーライター)

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