宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「はやぶさ2」ミッションによって採取された小惑星リュウグウのサンプルから、DNAおよびRNAを構成する標準的な核酸塩基5種「アデニン」「シトシン」「グアニン」「チミン」「ウラシル」がすべて見つかったことがわかりました。

A complete set of canonical nucleobases in the carbonaceous asteroid (162173) Ryugu | Nature Astronomy

https://www.nature.com/articles/s41550-026-02791-z

小惑星リュウグウ試料から5種すべての核酸塩基を発見 | JAMSTEC | 海洋研究開発機構 | ジャムステック

https://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20260317/

2014年、日本の探査機「はやぶさ2」は、大きさ約900メートルの小惑星リュウグウからサンプルを採取するというミッションに出発。2020年、はやぶさ2は設計時の目標サンプル収量(0.1g)を大きく上回る約5.4gのサンプルを地球に持ち帰ることに成功しました。2023年の研究では、これらのサンプルにRNAを構成する4つの塩基の1つ「ウラシル」が含まれていることが示されました。



JAXA

このサンプルを新たに追加で入手した研究者らは、試料量の制約から以前はできなかった高精度な解析評価を実施。その結果。DNAとRNAの構成要素である5種類の塩基の全てが含まれていることを明らかにしました。

研究者らは「生命誕生以前の化学進化においては、RNAが遺伝情報の担体であると同時に触媒としても機能していたとする『RNAワールド仮説』が提唱され、生命誕生につながる有力な説の一つとして受け入れられています。したがって、RNAを構成する核酸塩基が、どのような環境で生成され、どのようにして初期地球に供給されたのかを理解することは、生命起源研究における重要な課題です」と伝えました。

今回の解析では、5種の主要な核酸塩基のほか、関連分子であるヒポキサンチンおよびキサンチン、チミンの構造異性体である6-メチルウラシル、ビタミンB3であるニコチン酸およびその同族体分子、その他の含窒素有機分子群(アミノ酸、尿素、エタノールアミン)も新たに検出されています。

研究者らは「これらの結果は、リュウグウ試料中に存在する可溶性有機分子群が、従来考えられていた以上に多様性を有することを示しています。特に、地球上には存在しない6-メチルウラシルの検出は、リュウグウ試料中の核酸塩基が非生命起源であり、新鮮な小惑星リュウグウ起源であることを示す重要な証拠といえます」と述べました。

2023年にアメリカ航空宇宙局(NASA)の宇宙探査機「OSIRIS-REx(オシリス・レックス)」が小惑星ベンヌ(ベヌー)から持ち帰ったサンプルからも、今回と同様にアデニン、グアニン、シトシン、チミン、およびウラシルが見つかっています。2つの小惑星から5種の核酸塩基全てが発見されたことは、「遺伝物質の構成要素が太陽系形成過程において普遍的に生成されていたことを意味する」と、研究者らは記しています。

なお、ベンヌ等から地球上の生命の基盤となる分子が見つかったことは、生命に利用される多くの小さな有機分子が宇宙で生じたとする擬似パンスペルミア説を裏付けるものだとの指摘があります。生命の起源が別の天体にあり、地球の生命は宇宙から来たものを起源だとするパンスペルミア説も存在しますが、これには「その宇宙からやって来た生物はどのようにして発生したのか、という疑問が新たに現れるだけで、生命の起源説とは言えない」という考えもあります。

今回の研究で、研究者らが過去に地球へ飛来したオルゲイユ隕石とリュウグウ、ベンヌを比較したところ、アンモニア濃度とプリン/ピリミジン比の間に負の相関性を認めています。研究者らは「このようなアンモニア濃度と核酸塩基合成の相関関係は、これまでの室内実験では報告されておらず、地球外核酸塩基の生成メカニズムを理解する上で、重要な指標となります」と指摘しました。

研究者らは今後、リュウグウやベンヌに加えて他の太陽系物質について高精度な分析を進め、核酸塩基組成とアンモニア濃度との関係性をより体系的に明らかにしていく予定だと伝えています。