3月、寒波と雪の時期を乗り越えて、季節は少しずつ春へと歩みを進めています。けれど、星空ではまだ冬の星座が数多く見られます。


まず目に入るのは、南西に位置する「オリオン座」です。中央に3つの星がならび、その周辺を4つの星が長方形に囲んでいる特徴的な形から、日本では「つづみ(鼓)星」とも呼ばれています。鼓は日本の伝統的な和楽器のひとつです。雛祭りの雛壇に並ぶ五人囃子のなかにも、この鼓を手にした奏者の姿を見ることができます。


オリオン座には二つの1等星があります。北東に赤く輝くベテルギウス、南西に青白く光るリゲルです。


ベテルギウスは、冬の大三角を構成する星の一つです。同じく1等星である「おおいぬ座」のシリウス、「こいぬ座」のプロキオンと結び合わせると、冬の大三角が完成します。正三角形に近い美しい形で、こちらも目を引きます。


大三角の上には木星があります。明るさは現在-2.3等(※1)で、これはシリウスの約2.2倍に当たります。


惑星は恒星と異なり、太陽の周囲を巡るため、星座の間をゆっくりと移動します。今、木星が位置しているのは「ふたご座」の領域です。目印となるのは、橙色に輝く1等星ポルックスと、白く光る2等星カストル。ギリシャ神話に登場する双子の兄弟の名が、そのまま与えられています。


この二星は、日本では「ひなまつり星」と呼ばれることもあります。古代ギリシャの人々が兄弟の姿を重ねたように、私たちの祖先は仲睦まじい夫婦を思い描いたのでしょう。


まもなく雛祭り。桃の花がほころび、空気がやわらかな香りを帯びる春が、静かに訪れようとしています。


【▲ 2026年3月中旬 21時頃の東京の星空(Credit: 国立天文台)】

※1…木星の等級は日本時間2026年3月15日0:00時点のもの(国立天文台暦計算室 今日のほしぞら参照)


※2…星座や天体の見える方角や位置関係は2026年3月15日21時頃のものです


2026年3月3日 皆既月食

2026年3月3日には皆既月食が見られます。皆既月食とは、太陽‐地球‐月が一直線に並び、地球の影で月が完全に覆い隠される現象です。


地球の影に月が隠れても、完全に真っ暗になるわけではありません。太陽光が地球の大気で屈折し、月まで届くためです。太陽光にはさまざまな波長(色)の光が含まれていますが、そのうち波長の短い青い光は大気中で散乱されやすく、波長の長い赤い光が多く残って月面に届くため、皆既月食の月は赤黒く見えます。


また、皆既月食の前後には部分月食が起こります。段々と地球の影が月を覆い、月が欠けて暗くなっていく様はとても神秘的です。


今回の皆既月食の全行程は以下のとおりです。


部分月食の始まり:18時49分皆既月食の始まり:20時4分皆既月食の終わり:21時3分部分月食の終わり:22時17分
【▲ 2026年3月3日 皆既月食中の月の位置(Credit: 国立天文台)】

前回(2025年9月8日)の皆既月食は深夜に起こり、観察しづらい時間帯でしたが、今回は夜早い時間に見られるため、お子さん連れでも楽しみやすいでしょう。
なお、この皆既月食を見逃すと、次に日本で見やすい皆既月食が起こるのは2029年1月1日。3年近く待たなければなりません。


ひなまつりの夜、春霞の中に浮かぶ幻想的な赤い月を、夜空で見上げてみてください。


 


文・編集/sorae編集部


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