「夫が刑務所行きに」タイ人男性と結婚した日本人女性を襲った“過酷な現実”
Eさん夫が収監されたパンガー県の刑務所はファミリーデイのほか、『LINE』を使った隔週15分間のビデオ通話もできる。
このビデオ通話はタイ国内の刑務所いくつかでできる。家族などが予約サイトに登録すれば話せるもので、そのサイトを見るとすべての刑務所ではないものの、そこそこの数が対応していた。おそらく罪状があまり厳しくない受刑者を収監するところなら可能ということなのだろう。
「ただ、そのまま入れるわけではなく、靴は脱がされました。アクセサリーもダメ。でも、バンドが入ってて案外にぎやかですし、ハートのオブジェが設置され、受刑者と写真撮影もできる。2時間はあっという間でした」
受刑者もこのときは囚人服ではない。そんなのんきな時間も過ごせるのだが、夫だけでなく、Eさん自身にも問題が忍び寄ってきていた。ビザ問題だ。
◆夫がいることが前提の配偶者ビザ
タイの配偶者ビザは延長時にタイ人配偶者本人と共にイミグレーション警察を訪問し、延長手続きを踏まなければならない。もし子どもがいれば、子どもも学校を休ませていく必要がある。これが原則だ。
夫が刑務所に入ってしまったEさんの場合、その原則を守ることすらできない。逮捕時はどたばたでそんなことに頭が巡らなかったが、落ち着いたときにふと数か月後に迫る滞在期限を思い出した。
「すぐにプーケット県のイミグレーションまで行って何人もの係官に話を聞きました」
ここはタイあるあるで、係官によって法令の解釈が異なる。そもそも、受刑者を夫に持つ外国人女性が珍しすぎる。大概は離婚してしまうこともあって、係官もこういったケースではどうなるのかわからない。ある人はダメだというし、別の人は夫に延長申請書類にサインをさせればいいという。
「サインを面会日にもらいに行きました。けれど、結局正式に延長は不可と通達されました」
これによりEさんは期限内に国外に出なければならなくなった。とはいえ、別のビザを取得する方法が残されている。年齢的には年金生活者向けのリタイアメント・ビザも申請できる。というのは、タイのこのビザは満50歳以上が条件で、実際に年金受給をしているか否かは申請要件に関係ないからだ。
ビザを問題なく取得できても、再入国時にタイ政府が厳しく目を光らせる。近年、東南アジア圏内に中国人マフィアが特殊詐欺拠点を設けていることもあって、外国人の入国審査が厳しい傾向になったのだ。特に長期滞在後に別カテゴリーでビザを取り直して再入国する人は目をつけられやすい。ここに来て、さまざまなタイの問題点までがEさんにのしかかってくる。
配偶者ビザはタイ人の夫や妻がいることが前提だが、その「いる」は物理的にそばに存在していないといけない。婚姻関係にあっても離れていてはいけない。延長申請時に夫婦でイミグレーションに出向くが、その際には一緒に暮らしている証明を写真でいいので提出しなければならない。誰もがそれが普通だと思っていたものだが、よく考えてみれば他地域に単身赴任で出稼ぎに出ることになったり、配偶者が当ケースのように刑務所に入ってしまったら。
結局、タイのビザは、諸条件がシンプルゆえに、やっぱり難しいのである。
◆それでもワタシは見捨てない
パンガー刑務所はプーケット県内のEさん自宅から片道120キロはある。プーケットをはじめ、タイ南部は島が多い。プーケット県はタイ唯一の島の県だが、実際には本土と橋でつながっているくらいに近い。

