後藤容疑者が詐欺被害を相談していた釧路署

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認知症を発症していた

 恋愛感情につけ込んで金品をだまし取るロマンス詐欺。2年前に発覚した事件を巡って逮捕されたのは、あろうことか、僧侶だった。しかし、容疑者には極めて複雑な事情があったようなのだ。

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【写真を見る】知的障害の疑いがある後藤容疑者 給料のほとんどを詐欺につぎ込んでいた

 問題の人物は、北海道釧路市の後藤徳雄(のりお)容疑者(66)。岩手県で発覚したロマンス詐欺事件の被害金を暗号資産化し、資金洗浄を手がけたというが、

「彼は、マネーロンダリングのなんたるかも認識できていないと思う」

 と、後藤容疑者を知る関係者が重い口を開いた。その証言の前に、まずは社会部デスクが事件の概要を解説する。

後藤容疑者が詐欺被害を相談していた釧路署

「1月21日、岩手県警大船渡署が後藤を組織犯罪処罰法違反(犯罪収益隠匿)容疑で逮捕しました。逮捕場所は釧路署です。直接の逮捕容疑は、2024年4月にロマンス詐欺の被害者から後藤名義の口座に約100万円が入金された。後藤はこの金が犯罪の被害金と知りながら、90万円超を暗号資産化して“別の人物”に送ったというものです」

 事件が発覚したのは24年4月中旬ごろで、

「岩手県内の60代男性が大船渡署に相談したことがきっかけです。男性はSNS上でだまされ、複数の口座に約250万円を入金していた。そのうちの一つが後藤の口座だったわけです。後藤は容疑を認めて“同様に複数回、計約1億円をマネーロンダリングした”とも供述しています」

 この後藤容疑者について冒頭で証言したのは、彼が働いていた寺の関係者だ。

「正直なところ、暗号資産化する手順なんてまったく理解できていないと思う。もともとそういうことを理解できないレベルの人だったのに加えて、最近は認知症を発症していたことも分かっています」

「月給20万円のほとんどをつぎ込み……」

 ただし、と、寺の関係者が証言を続ける。

「外見からは見分けがつきませんし、職場で指示された仕事はできていました。一方で、自身のSNSやそのDMに届く詐欺メッセージを疑うことはできない。ふた桁以上の詐欺業者に、運転免許証やマイナンバーカード、パスポートのコピーまで送っていたのです」

 前出の知人の証言にある「もともとそういうことを理解できないレベル」というのは、このあたりのことも示している。一般常識や理解力にかなり深刻な問題を抱えているということだろう。結果、総額1000万円ほどの詐欺被害に遭ったという。加害者は被害者でもあったのだ。

「はじまりは20年ごろでした。彼が騙されたのは、ロマンス詐欺をはじめ“登録料が滞納されている”といった架空請求や投資の詐欺。21年に唯一の肉親で心の支えだった母親を亡くすとエスカレートし、月給約20万円のほとんどをつぎ込んでいました」

 その詐欺被害は一度、地元紙で記事になっている。

「23年でした。彼の名前は出ていませんが、SNSで知り合った米国軍人を名乗る女から“基地に持ち込んだ荷物が没収され、取り戻すためにお金が必要”などと日本語でメッセージを受け取った。挙げ句、複数回にわたって680万円を振り込んだという話です」

誰も詐欺被害を把握できず

 記事の“事件”以降も、

「詐欺被害に遭い続けていました。でも、誰も把握していなかった」

 と、寺の関係者とは別の知人が明かす。

「後藤さんは、昨年1月に心筋梗塞で、3月には脳梗塞で入院しています。3月の入院時、看護師が詐欺の関連書類を見つけて記事以外の被害も露見しました。業者とのやりとりで“国際通貨基金”や“みずほ国際銀行”などの名称が出ても、おかしいと気付かなかった」

 さらには、五つの銀行から300万円借りていたことや、住民税、固定資産税などの未納状態も判明した。

 こうした状況、「加害者」の特性は、大船渡署にも共有されていたはず。むろん、刑法に触れる罪を犯したのは事実であり、警察は、犯行時においては刑事責任を問える状態にあったと判断したのだろう。だが後藤容疑者は、巨額のマネロンに手を出した動機を語れるのだろうか。今回の事件では、そもそも後藤容疑者を利用して、金融機関の口座を不正に活用した犯罪者組織はまだ判明していない。

 被害者が加害者に転じるなどややこしく、未解明の部分も多いロマンス詐欺事件だが、1月29日発売の「週刊新潮」では、事件の背景と後藤容疑者の生活ぶりなどについて、詳しく報じる。

「週刊新潮」2026年2月5日号 掲載