「父が亡くなったその日から、電気代すら払えなくなった」…“親の年金”に頼っていた氷河期世代の末路
高齢の親と同居し、親の年金に生活の大部分を依存していた中高年が、親の死をきっかけに困窮状態に陥るケース。とくに就職氷河期に社会に出た「ロスジェネ世代」は、非正規雇用や低収入のまま年齢を重ね、貯蓄も乏しく、単身では生活を維持できない人も少なくありません。親の死とともに支えを失い、家計が一気に崩壊する──その実態を、ある女性のケースから見ていきます。
父の死とともに年金停止、口座には預金数千円
「父が倒れたと病院から連絡を受けたのが、朝の7時過ぎ。間に合わず、すぐに“死亡確認です”と伝えられました。その瞬間、私の頭に浮かんだのは、悲しみよりも“生活、どうしよう”という不安でした」
そう語るのは、都内在住の女性・木村香織さん(仮名・52歳)。大学卒業後に正社員になった経験はあるものの、結婚・離婚・体調不良などで仕事を転々とし、ここ10年ほどは実家で父親とふたり暮らし。パート収入は月8万円前後にとどまり、光熱費や食費の多くを父の年金(月約17万円)でまかなっていたといいます。
「父の口座から引き落としていたのは、電気代・ガス代・固定電話・ネット代など全部。私はスマホと、食費の一部しか出していませんでした」
父の死とともに年金受給も停止され、引き落とし口座にあった預金も数千円のみ。直後に請求が来た電気代の引き落としにすら対応できず、滞納通知が届きはじめたといいます。
「まさか“電気が止まるかも”なんて現実が来ると思っていませんでした。50を過ぎて、誰にも頼れない自分が本当に怖くて…」
香織さんはその後、市役所で生活保護の相談もしましたが、「親名義の家に住んでいると、すぐには難しいかもしれません」と言われ、そのまま手続きを見送ることにしました。
※厚生労働省のガイドラインでは、持ち家があっても一律に申請が却下されるわけではなく、資産価値や生活実態に応じて個別に判断されます。
葬儀費用のために親戚から一時的に借金をし、なんとか数ヵ月を乗り切ったものの、「このままでは生きていけない」と感じ、ようやく週5日の清掃の仕事に就くことを決意しました。
制度の“狭間”でこぼれ落ちる人たち
香織さんのようなケースでは、「住民票や名義が親のまま」「相続未登記」「資産評価で保護対象外」といった理由で、生活保護などの支援制度の適用が難しいことも多く、支援を受ける前に孤立してしまう人も少なくありません。
「正直、“なんとかなるだろう”と思っていたんです。でも、父が亡くなったその日から、“何もかもが止まる”現実を突きつけられました」
香織さんは現在、清掃とスーパーのレジを掛け持ちし、なんとか月収14万円を得ています。家も相続登記を終え、ようやく公的な支援についても再相談する段階に来たと話します。
「もう親はいない。でも、自分の人生はまだ終わってない──そう思って、ようやく動き出せました。私のように“自立のタイミングを逃してきた人”は、きっと他にもいると思います」
