『オールド・ガード2』Eli Joshua Ade/Netflix © 2025

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 DCコミックスを中心にコミック業界でさまざまな物語を紡いできたグレッグ・ルッカ。彼がオリジナルのグラフィックノベル作品で発表した一作が映画化され、脚本家デビューを果たしたのが、スカイダンス・メディア製作、Netflix配信の同名作品『オールド・ガード』(2020年)だった。

参考:シャーリーズ・セロンのアクションは健在 『オールド・ガード2』に感じた“2作目”のジレンマ

 シャーリーズ・セロンが主演を務めることになった同作の特徴は、ヒーローの能力の異質さだ。不老不死、自己治癒能力を有した秘密部隊「オールド・ガード」の戦いを描き、ヒット作となった。その続編『オールド・ガード2』が、およそ5年ぶりのシリーズ作としてリリースされている。

 第1作が好評を得て、3部作構想が明らかとされていた本シリーズ。ここでは、そんな本作『オールド・ガード2』の内容を、第1作を振り返りながら深掘りしていきたい。

 古代ギリシアから不死の身体で現代まで生き続けている、「アンディ」ことアンドロマケ(シャーリーズ・セロン)。彼女は戦士として、同じ能力を持つ仲間たちとともに歴史のなかで人類の未来を守り続けていた。だが、そんな「オールド・ガード」たちの不死能力は、利益を求める製薬会社に狙われることとなる。アンディや新人メンバーのナイル(キキ・レイン)らは、そんな邪悪な勢力を打ち倒すことに成功する。

 興味深いのは、主人公たちの能力が、基本的にスーパーパワーが不死と自己治癒のみというところ。あとは人間並みであるため、数世紀の間練り上げられた武術、殺傷術、現代的な武器の使用などが、アンディらの強さを支える。『デッドプール』の「ヒーリングファクター」に近いといえるが、戦闘自体はリアリティを重視しているところが大きな特徴であるといえる。

 とくに、『イーオン・フラックス』(2005年)や『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015年)、『アトミック・ブロンド』(2017年)などでアクションスターとして活躍してきたシャーリーズ・セロンの長身で鍛え上げられた肉体の迫力と説得力が、ヒーロー作品として抑制の効いた『オールド・ガード』を魅力的な内容にしていたといえよう。

 “不死”というテーマは、神話において繰り返し使われてきた概念で、もちろんコミックや映画にも度々使われてきた。作中でアンディたちは、そんな能力を活用することで、大胆に敵対勢力に突撃を仕掛けられ、勇敢に戦えるのだ。

 もともと人気アクション映画シリーズにおいて、ある意味、主人公は“不死”の存在だといえる。どれだけ命がけのピンチに陥ったとしても、形勢逆転し、最後には勝利してしまう。たとえ被弾したり、高所から落下したとしても、結局は助かる場合が少なくない。われわれ観客は、そんな“お約束”のなかでアクション映画を楽しむのである。

 主人公が最初から不死であるという設定は、一見すると緊張感を削ぐ要素になり得る。しかし、よく考えてみると、アクション映画の主人公というのは、そういう能力があるという設定が用意されていないだけで、そもそもが“不死”だといえる。そんな属性が観客に分かるかたちで活躍する「オールド・ガード」のメンバーは、作品にある意味でメタフィジックな視点を与えているといえよう。

 とはいえ、物語自体はそのユニークさから離れていく。主人公アンディは、何らかの力によって能力を奪われ、常人よりやや戦闘能力が高いだけの存在になってしまうのである。それによりアンディの存在は、一度限りの命という緊張感を持ちながら、実際には“致命傷を負っても生き延びる”というアクション映画における“暗黙の不死性”を体現する主人公としてシフトされている。

 その上で、作品自体は依然として“不死”要素の追求を継続する。この作品で最も凄まじいのが、“不死”であることが耐え難い苦しみになり得るという描写だ。かつてアンディの仲間だったクイン(ゴー・タイン・ヴァン/ベロニカ・グゥ)は、現代から500年前に異端者として「アイアンメイデン(鉄の処女)」なる金属製の拘束拷問具に閉じ込められ、オープンウォーター(外洋)に突き落とされるという悲劇に見舞われる。

 アンディは戦友でもあり唯一無二の親友でもあるクインを捜索するが、500年もの間発見できず、クインは海の底で溺れて死に復活するというサイクルを繰り返すという、想像するだに恐ろしい拷問を経験することになる。不死と自己治癒の能力しか持っていない「オールド・ガード」たちは、じつは敵方に捕まり拷問を受けると、死の苦痛をはるかに超える経験を余儀なくされる弱点を持っていたのだ。

 本シリーズが興味深いのは、この永遠の拷問という観念が、あまりにも凄絶だという点にあったのだと思われる。「オールド・ガード」の面々がそれぞれに深刻な表情をするように、海中の暗闇のなかで身動きすらできず、数百年ものあいだ、死と再生を繰り返すという設定は、あまりにも悲惨で、筆者自身も夜、ベッドのなかで思い出してしまうほどである。このような想像の提示が、吸血鬼伝説のような暗いロマンとして、作品全体を包み込んでいるように感じられるのである。

 さて、続編である本作『オールド・ガード2』では、アンディが不死の能力を失った状況を継続している。戦闘で傷を負うと、当然治癒までに時間がかかり、致命傷を受けると死に至るという状況にある。密かに薬局で治療薬を求める際、店員の女性に同情され助けられる描写は、本作でとりわけ印象的な箇所だ。

 このような“シスターフッド”表現は、劇中の同性愛要素と同様に、とくに本シリーズで重要なものであり、本作のラストで、それは大きな意味を持つこととなるだろう。前作のジーナ・プリンス=バイスウッド監督から、『スター・ウォーズ』続3部作で第二班監督などを務めてきたビクトリア・マホーニー監督という、女性の監督同士の継投とあわせて、ここでは一種の感慨深さが生まれている。

 アンディは本作において、ついに地上に復帰したクインと遭遇する。500年もの間苦痛を味わっていたクインは、自分にこのような仕打ちをした人間たちへの憎しみと、その間ずっと自由の身だったアンディへの恨みを募らせていた。あのような経験をしたのでは、どれほど闇を抱えていても仕方がない。その割には、アンディと拳を交えながらも、人間性を残しているように見えるクインは、むしろ「聖人レベル」と言っていいほど穏やかな存在だといえるのではないか。

 クインを演じているゴー・タイン・ヴァンは、この怒りを持ちながら心の奥の善良さを秘めるキャラクターを好演している。路地の狭いスペースでの攻防では、とくにクインの中国武術のようなアクションが、作品に奥行きを与える。本作の主要な俳優たちには、スタントパーソンがついているが、この中盤でのアンディとの格闘では、格闘術を得意とするプロフェッショナルなスタントパーソンのローレン・メアリー・キムが演じていると思われ、この種の映画でのスタントの重要性を再認識させられる。

 また、クインを操り陰謀を巡らせる謎の存在として出現するのが、“不和”の意味を持つ「ディスコード」といわれる不死者だ。数千年生きているアンディより、さらに昔から不死の状態にあるという彼女を演じているのが、ユマ・サーマンである。

 前作よりも強大な敵であり、アンディの先輩となる役柄を演じられる俳優は、数少ない。現在のハリウッドで圧倒的な存在だといえるシャーリーズ・セロンに対峙するには、それなりの名前でなければ、説得力がない。ユマ・サーマンをキャスティングできたというのは、それだけで意義深いところがあるといえるだろう。

 残念なのは、優秀なスタントパーソンのバックアップがありながらも、ディスコードとアンディとの“対決”が、物語上控えめなものとなり、大規模なアクションやカタルシスが次作にまわされている。その意味では、キャスティングが象徴としての配置にとどまってしまった印象もある。

 おそらくラストとなる第3作に繋ぐ意味がある作品とはいえ、この第2作自体は盛り上がりに欠け、製作側にとってあまりにも予定調和の流れであったという印象が拭えない。近いコンセプトであろう『スター・ウォーズ』旧3部作の第2作が、あれほど人気が集まるエピソードとなったことを考えると、こういった“次”の意識から淡白になってしまっている内容に不満が生まれることは避けられない。

 実際本作は、大手批評サイトにおいて、プロ批評家や観客のスコアが非常に低いものとなってしまっている。そして前作で最もインパクトを与えられた永遠の拷問という要素に、匹敵する仕掛けがなかったことも低評価の理由になっているものと思われる。たとえ配信映画であっても、“繋ぎ”の要素が強い作中であっても、観客は一つの映画に強いカタルシスやスリルを求めるものであり、本作はそれを取りこぼしたことは確かなのだろう。

 しかし本作で立ち上がってきた、能力の喪失の選択や、譲渡などの要素は、“不死”という本シリーズに与えられた要素に、新たな広がりをもたらしたといえる。これは明らかに、次作におけるそれぞれのキャラクターの人生の哲学的選択に影響を及ぼすものと考えられ、これが作品全体のテーマに直結するはずである。

 本作『オールド・ガード2』自体は、強い印象に欠けるものとなってしまったが、“不死”という要素には依然として力があり、原作者自身が用意する結末に期待が持てることについては変わらない。第3作の配信は、現時点ではまだ明らかになっていないが、願わくば、このシリーズのポテンシャルを発揮しきる可能性のある最終作を、心待ちにしたい。

(文=小野寺系(k.onodera))