『トイ・ストーリー』©1995 Disney Enterprises, Inc. / Pixar. All Rights Reserved.

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 7月26日の『金曜ロードショー』(日本テレビ系)で、ピクサー・アニメーション・スタジオ(以下、ピクサー)の長編アニメ映画1作目である『トイ・ストーリー』が放送される。本作は世界初のフルCGアニメーション長編映画として知られており、その映像クオリティは、公開当時全世界に衝撃を与えた。その後1999年に続編が公開され、2023年までに4作目まで公開された大人気シリーズは、2026年には5作目の公開も決定している。

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 公開から28年経っても色褪せない魅力を持つ『トイ・ストーリー』。ここでは、アニメ映画における本作の影響と、作品の見どころを紹介していこう。

アニメ映画を永遠に変えた『トイ・ストーリー』

 『トイ・ストーリー』以前の映画史では、今では当たり前だが、CGは実写映像を補完するためのものとして用いられていた。1982年に公開された『トロン』は、コンピュータの中の世界を表現するため、CGが全面的に用いられた作品として知られている。しかし同作におけるフルCGシーンは、上映時間96分のうちの15分と短く、さらにその一部に従来の手描きアニメーションが用いられるなど、本格的なものとは言い難い。これは、コストや納期の都合によるものと言われている。

 その後時代は進み、CGは本格的に実写映画の映像を補完する役割を担うようになる。『ターミネーター2』(1991年)では、CGで作られたキャラクターに人間の自然な動きを使用したり、一部CGで作られた主人公が登場するなど、その自然さは観客の度肝を抜いた。しかし製作費は9400万ドルから1億2000万ドルと、これまでに作られた映画で最も高額となり、当時CGを映画に導入することの難しさを物語るものともなった。さらに1993年に公開された『ジュラシック・パーク』でも全面的にCGを導入しているが、こちらもフルCGのシーンは上演時間126分中7分と短い。しかしCGによってスタントマンの顔を俳優の顔に置き換えたり、人間が恐竜に咥えられるシーンでは咥えた瞬間から役者をCGに置き換えるなど、革新的な技術を用いてアカデミー賞視覚効果賞を受賞している。

 一方アニメ映画では、ディズニー・ルネッサンスの代表格とも言える『美女と野獣』(1991年)のダンスホールのシーンで全面的にCGが導入されたのが、アニメーションにおけるCG使用の先駆けとなった。CGならではのカメラアングルの自由さ、奥行きのある表現が、このシーンの豪華絢爛な美しさを存分に演出している。

 そして1995年。『トイ・ストーリー』は、世界中に衝撃を与え、アニメ映画を永遠に変えた。世界興行収入は3億6200万ドルを記録し、同年の興行収入1位に。さらに製作費は3000万ドルと、コストも抑えられることを証明し、3DCGアニメの時代が到来する。当時アカデミー賞には長編アニメ部門がなかったため、監督のジョン・ラセターは、本作でアカデミー賞特別業績賞を受賞した。この賞は毎年選出されるものではなく、1972年に同賞が創設されてからラセターが受賞するまでに、14回しか授与されていない非常にレアなものだ。

 もちろん本作がアニメ業界に与えた影響は非常に大きく、アニメ制作各社はこぞって3DCGアニメの製作に乗り出した。いち早くこの波に乗ったのはドリームワークスで、1998年に長編フルCGアニメ映画『アンツ』を公開。その後、『シュレック』(2001年)は同年に新設されたアカデミー賞長編アニメ映画賞を受賞し、『マダガスカル』(2005年)や『カンフー・パンダ』(2008年)、『ヒックとドラゴン』(2010年)などの良作を生み出し続けている。

 また、2007年に設立されたイルミネーションは、第1作『怪盗グルーの月泥棒』(2010年)でヒットを飛ばし、同作の人気キャラクターのスピンオフ『ミニオンズ』(2015年)も大好評となった。その後も『ペット』(2016年)、『SING/シング』(2018年)そして『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』(2023年)と、こちらも多くの作品で高い評価を受けている。

 このように、特にアメリカでは『トイ・ストーリー』以降、アニメ映画といえば3DCGが主流になった。2001年から設立されたアカデミー賞長編アニメ賞では、これまでの受賞作23作品のうち、2002年の『千と千尋の神隠し』や2022年の『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』、そして2023年の『君たちはどう生きるか』などを除く19作品がフルCGの作品であり、そのうち11作品がピクサー、4作品がディズニーによるものだ。

映像だけに頼らない物語の秀逸さ 『トイ・ストーリー』が熱狂的に受け入れられた理由は、もちろんその革新的なCGの映像にあるが、当時の技術の限界を踏まえたうえでの世界観の設定にもある。本作は「おもちゃ」の世界を舞台としていることが、勝因の1つとして挙げられるだろう。技術が進歩したといっても、当時CGでリアルな人間の質感を作ることは難しかった。しかし「おもちゃ」であれば、基本的にプラスチックや布の質感を表現できればいい。これによって映像の違和感で観客の注意力を削ぐことなく、物語をしっかりと伝えることができている。ウッディのバズに対する嫉妬と、ともに冒険をくり広げるうちに結ばれていく彼らの友情を描いたストーリーは、老若男女問わず楽しめる。『トイ・ストーリー』はアカデミー賞脚本賞にもノミネートされており、そのストーリーの面白さも、本作を不朽の名作たらしめている理由の1つだ。

 革新的な3DCGの技術で、アニメ映画に革命をもたらした『トイ・ストーリー』。その原点である1作目は、公開から28年経った今観ても違和感のない映像で、おもちゃたちの生き生きとした冒険を届けてくれる。大人も子どもも楽しめる良質なエンターテインメントを、ぜひ感じてみてほしい。(文=瀧川かおり)