昨年12月に堤聖也(左)と試合をする穴口一輝選手【写真:荒川祐史】

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昨年12月の日本バンタム級タイトルマッチで意識不明のまま1か月強

 ボクシングのバンタム級で活躍した穴口一輝選手(真正)が2日、死去した。昨年12月に当時日本バンタム級王者の堤聖也(角海老宝石)と対戦し、ダウン4度を喫する0-3の判定負け。試合後に救急搬送され、右硬膜下血腫により緊急の開頭手術を受けた。意識不明のまま都内の病院に入院して1か月強。23歳で帰らぬ人となった。2023年度の年間最高試合賞(世界戦以外)にも選ばれたタイトルマッチ。関係者も「難しい試合」とストップの判断をしがたい内容だった。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

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 年間最高試合に選ばれた名勝負。だからといって、美談にしていいというわけではない。リング禍が起きてしまった以上、何が悪かったのか、今後どうすべきなのか、対策が必要だろう。ただ、振り返れば振り返るほど、本当に判断に迷う難しい試合だった。

 序盤は挑戦者・穴口がペースを握り、3回までジャッジ3人のうち2人が穴口に10-9をつけた。しかし、王者・堤が4回に意地を見せてダウンを先取。5回は開始から打ち合った。7回にも堤がダウンを奪ったが、穴口は再開後も引かない。打撃戦が続き、3度目のダウン。最終10回の終了間際に4度目。その後も戦う意思を見せていた。

 判定は3-0で堤の勝利だが、採点は2人が94-92、1人が95-91だった。ジャッジ2者がダウンしたラウンド以外、穴口につけるほどの僅差。最後にダウンしていなければ勝っていたかもしれない。それだけ優勢に進め、王者を追い詰めていた。何よりダウン後もパンチは鋭く、レフェリーも、セコンドも止められるような状態ではなかったはずだ。

 もしどこかで止めていれば、「早かった」という声が飛んだだろう。1月下旬、日本ボクシングコミッションの安河内剛本部事務局長は、再発防止策の必要性を理解したうえで「あの試合は難しいです。止められる試合ではなかったと思います」と話していた。

ボクシングはスポーツ、選手を守るルールが存在

 ボクシングは喧嘩ではなくスポーツ。選手を守るため、様々な厳しいルールがある。制限体重、グラブ、ラウンド数、試合間隔、年齢制限、医師による試合前後の検診……etc. 当然、今回はこれらの規定に反することなく試合が成立した。でも、起きてしまった。だからこそ、なぜルールがあるのか。なぜルールを守らないといけないのか。再認識し、現行ルールの見直しなども検討が必要だろう。

 2人の拳が最後まで激しく交差した試合。リング上で抱き合い、熱い拍手が注がれた。美談にはしない。ただ、世に伝えるべき試合だと思う。

 訃報の後、ボクシングというスポーツを否定する言葉が目に入った。リング禍の結果論を盾にして否定するのは簡単だ。それぞれの価値観だから仕方ない。でも、それは穴口選手が一番望んでいないことだと思う。

 今はただ、安らかに。心よりご冥福をお祈りします。

(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)