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NA V8エンジンを搭載した豪快なM3

高いビジョンを持って開発が進められたであろう、E92型のBMW M3。今となっては、その存在に感謝したい気持ちになる。従来までの流れを打ち破るように、フロントに押し込まれたのは自然吸気のV8エンジン。豪快なM3だった。

【画像】V8エンジンを搭載した唯一の世代 E92型BMW M3 現行のG80型M3とG82型M4も 全74枚

排気量は4.0Lで、右足へ力を込めれば8300rpmまで一気に吹け上がった。最高出力は420ps。先代のE46型M3が342psだったから、大幅なパワーアップを果たしていた。小さなハッチバック、1台分の馬力が追加されたといっていい。


BMW M3(E92型/2007〜2013年/英国仕様)

フロントエンジン・リアドライブというレイアウトは踏襲し、E92型でもドライバー次第でテールスライドは自在。0-100km/hを4.7秒でこなすが、パワー任せの直線番長ではなく、身のこなしは不足なく鋭い。

コーナーへ飛び込めば、素晴らしいシャシーバランスが生み出すグリップ力と操縦性に惹き込まれるはず。マッスルカー的ではあるかもしれないが、全方位が磨き込まれている。

多彩なドライブモードを搭載し、シーンに応じてクルマを調整できることも美点。高速道路をしっとりクルージングさせることも、サーキットでラップタイムを削ることも、それぞれが得意分野だ。

アクセルレスポンスやパワーステアリングのアシスト量、ダンパーの硬さ、トラクション・コントロールの介入度合いなどを、ドライバーが任意に選べる。その場に合わせた能力を与えることが可能だった。

ボディはクーペとオープン、サルーンの3種類

登場は2007年で、当初は6速MTだけの設定だったが、2008年に7速デュアルクラッチAT(DCT)が追加。MTはクルマと一体感の濃いドライビング体験を与えてくれるが、7速ATの乗りやすさも支持され、現在ではMTより残存数が2倍ほど多い。

インテリアは、それまでのM3のレシピに従ったもの。迫力を増したスタイリングに歩調を合わせるように、手が加えられている。Mのエンブレムが随所に施され、肉厚なリムのステアリングホイールが装備される。だが、全体の雰囲気は控えめだ。


BMW M3(E92型/2007〜2013年/英国仕様)

ドライビングポジションは良好。クーペでも、リアシートには身長が180cm位ある大人が快適に座れる。荷室が広く、実用的でもある。

E92型のM3には、2ドアクーペとコンバーチブル、4ドアサルーンという3種類のボディタイプが用意されていた。最軽量なのはクーペで、車重は1655kgとなっている。

サルーンは25kg増し。日本には未導入だったコンバーチブルは、金属製のフォールディング・ハードトップを採用しており、230kgも重い。

とはいえコンバーチブルなら、ルーフを開いてV8エンジンのサウンドを生で楽しむことができる。高回転域まで回せば、マッスルカーとスーパーカーがミックスされたような、唯一のシンフォニーを堪能できる。この音響だけでも、手に入れる価値はある。

特別なスポーツカーとしてはお手頃価格

現在、E92型M3は比較的手頃に流通しており、英国では1万6500ポンド(約275万円)程度から探すことができる。新車に近いような最高条件のクルマは、3万ポンド(約502万円)以上はするけれど。

素晴らしいV8エンジンとシャシーを備えた、特別なスポーツカーの金額としては、決して高くはない。F80型のM3では直列6気筒エンジンに戻り、ターボチャージャー付きになっているから、E92型の独自性は他より強いともいえる。


BMW M3(E92型/2007〜2013年/英国仕様)

今後、さらに価値を高めることは間違いないE92型M3だが、コレクションや投資の対象として温存するだけではもったいない。積極的に運転し、レッドラインまで回してサウンドを響かせてこそ、その真価が発揮される。

ドライバーを満面の笑顔にすること。それが、BMW M3の最大の能力だといっていい。

新車時代のAUTOCARの評価は

高回転型のV8エンジンは420psを発揮しながら、しびれるような興奮を与えてくれる。このM3のように、自在にドリフト状態へ持ち込める量産モデルはほとんど存在しない。

後輪駆動モデルを愛するクルマ好きにとって、現在販売されているなかでは、実用性も兼ね備えた最高のパフォーマンスカーといっていい。クーペとサルーン、コンバーチブルが選べるボディタイプも、M3の魅力を一層高めている。(2007年7月11日)


BMW M3(E92型/2007〜2013年/英国仕様)

購入時に気をつけたいポイント

ボディ

基本的に堅牢だが、事故の修復か所が錆びる可能性はある。フェンダーを固定するボルトなどに、塗装の違いがないか確かめたい。荷室のカーペットをめくり、不自然な変形や波打ちがないかも観察する。

ヘッドライトには雨水が侵入しやすい。曇っていないか確かめる。

エンジン


BMW M3(E92型/2007〜2013年/英国仕様)

ロッド・ベアリングが摩耗し壊れると、エンジンに重大な損傷を与えてしまう。アクセルレスポンスが冴えない場合は、スロットル・アクチュエータの不具合かもしれない。回転数が安定しないなら、点火コイルやインジェクターの不調が原因の1つ。

エンジンオイル量の確認は、iドライブを介して行う。従来のディップスティックは付いていない。

トランスミッション

MTでもDCTでも、基本的に堅牢。しかし、iドライブを介してドライブトレインに高負荷が掛かる状態に設定することもできた。すべてが正常に、滑らかに動くか確かめたい。

DCTは密閉構造だが、10万km程度でフルードとフィルター交換をした方がベター。プラスティック製のサンプは経年劣化でもろくなり、フルードが滲み出てくる。

ブレーキとサスペンション

車重は軽いとはいえず、ブッシュ類のヘタリ具合は要チェック。EDC搭載車の場合は、オイルの滲みがないか確かめたい。

ブレーキは、キャリパーが固着することがある。タイヤの偏摩耗が酷い場合は、アライメント調整の費用を組んでおきたい。

インテリア

すべての電子機器が正常に動くか、時間を掛けて確認する。ドライビングモードも同様。

専門家の意見を聞いてみる

ダン・ノリス氏:ミュンヘン・レジェンド社

「E92型は、歴代のM3のなかで1番のオールラウンド・モデルだと思います。搭載するV8エンジンは、その仕上がりから幾つもの賞に輝いています。シャシーは扱いやすく、ステアリングは感触や重みづけが最高。ボディサイズも丁度良い」


BMW M3(E92型/2007〜2013年/英国仕様)

「わたしは2万9000kmくらいのサルーンを購入し、現在の走行距離は16万8000kmまで伸びました。ノーマルのサスペンションはあまり乗り心地が良くないので、オプションだったエレクトリック・ダンピング・コントロール(EDC)付きがオススメです」

「エンジンは、ロッド・ベアリングとスロットル・アクチュエータが弱点。それを除けば、維持費はさほど掛かりません。メンテナンスは、性能を考えれば比較的安価に済むはずです」

知っておくべきこと

10mm低い車高に、専用インテリアと塗装色が与えられた、M3 クーペ・エディションが2009年に登場している。2010年には、EDCとDSCの設定が改良された、M3 コンペティションが追加された。

同じ2010年には、4.4Lへ排気量が拡大され450psを獲得したM3 GTSも登場。即完売という人気で、現在も高値で取引されている。

英国ではいくら払うべき?

1万6500ポンド(約275万円)〜1万9999ポンド(約333万円)

英国では個人売買のM3が中心で、走行距離は16万kmを超えるものが多い。クーペとコンバーチブルが殆どで、サルーンは限定的。

2万ポンド(約334万円)〜2万4999ポンド(約416万円)

状態の良い、望ましいE92型M3を狙える価格帯。走行距離は8万km前後へ短くなる。サルーンの数が増えてくる。

2万5000ポンド(約417万円)〜3万1999ポンド(約533万円)


BMW M3(E92型/2008年/英国仕様)

走行距離が短い、ベストコンディションといえるM3を英国では探せる。後期型も多く含まれる。

3万2000ポンド(約534万円)以上

極上のE92型M3を狙える。ほぼ手を加えることなく、堪能できるだろう。

英国で掘り出し物を発見

BMW M3 クーペ(E92型/英国仕様) 登録:2008年 走行距離:11万7500km 価格:1万7995ポンド(約300万円)

見た目の状態は良く、6速MTを搭載する珍しいM3。走行距離は年式を考えれば妥当。価格も内容に見合ったものといえる。1年の保証が付くという。