マニアと味わう「ご当地カップ麺」の世界

第八十二回 九州名物「焼豚ラーメン」から登場した「和歌山ラーメン」 文・写真:オサーン

カップ麺ブロガーのオサーンです。

「ご当地カップ麺」連載の第八十二回目の今回は、サンポー食品の「焼豚ラーメン 和歌山豚骨しょうゆ」をレビューします。

九州の大定番カップ麺ブランドである「焼豚ラーメン」から、なぜか「和歌山ラーメン」が登場。

......九州なの?和歌山なの?コンボなの?

九州の「焼豚ラーメン」で「和歌山ラーメン」を再現!?

「焼豚ラーメン」は、佐賀県基山町の「サンポー食品」が1978年から製造販売するカップ麺ブランド。

地元九州では最も有名なカップ麺のひとつで、どのコンビニやスーパーの店頭にも並んでいます。

九州や近県から外に出てしまうと店頭に並ぶ頻度がグッと減るのですが、九州の人にとっては当たり前に手に入りやすいので九州のものという意識はあまりないようです。

以前、スタンダードな「焼豚ラーメン」については分析しているので、詳しくはこちらをご覧ください。

というわけで、今回の「焼豚ラーメン 和歌山豚骨しょうゆ」は、九州の人からすれば「定番のブランドから発売された『和歌山ラーメン』」ですが、九州外の人にとっては「『九州のカップ麺』なのに『和歌山ラーメン』」という、さらに1つ乗った、複雑な存在なのです。

なお、「和歌山ラーメン」は、主に和歌山県北部で供されるご当地ラーメンで、豚骨醤油味が基本。「和歌山ラーメン」を代表する存在の「井出商店」のラーメンは、どろどろの豚骨ベースに濃い醤油味を合わせています。

また、テーブルに置かれた「早寿司」と呼ばれる鯖寿司や、ゆで玉子と一緒に食べる風習があります。

一方の「焼豚ラーメン」の特徴は、やさしい味わいの豚骨ラーメンで、濃い醤油味の「和歌山ラーメン」とはまったく指向が異なります。

方向性の違う両者の組み合わせで、果たしてどのような一杯になっているのでしょうか。

「和歌山豚骨しょうゆ」の内容物を確認

「和歌山豚骨しょうゆ」の内容物を、通常の「焼豚ラーメン」と比較していきます。

どちらにも共通で入っているのは「焼豚」の袋のみ。

ハート型の「焼豚」は「焼豚ラーメン」の大きな特徴で、今回の「和歌山豚骨しょうゆ」もその特徴は維持していました。

ただ、異なっている部分も多く、通常「焼豚ラーメン」は「スープ」「調味油」「紅しょうが」が入っているのに対し、「和歌山」は「粉末スープ」の袋しか入っていません。

麺量も通常「焼豚ラーメン」が72グラム入っているのに対し、「和歌山」は65グラムに減量。このことから、ちょっと安っぽくなった印象を持つかもしれませんね。

こちらは、先入れの「焼豚」と「(粉末)スープ」を麺の上に開けた状態。

焼豚は共通のようですが、スープ粉末の色が異なっており、粉末と一緒に入っているかやく類も違いがあるようです。

味よりも気になりすぎる泡立ち!

完成した「和歌山」と通常「焼豚ラーメン」を並べてみると、ハード型のチャーシューや麺の形状、そしてネギあたりには共通項がある一方で、通常「焼豚ラーメン」に入っているのがコーンや紅しょうがなのに対し、「和歌山」には和歌山ラーメンの特徴であるナルトが入っています。

とまぁ、両者の違いや「和歌山」の味などについてはおいおい触れていくとして、見た目にもっと気になることがあります。

粉末スープにお湯をかけた段階から、スープ表面に大量の泡が立ち、ちょっとやばいもの入っているのではないかと心配になるレベルです。

問い合わせが殺到したのか、22年5月6日、メーカーサイトに追加で「『焼豚ラーメン 和歌山豚骨しょうゆ』の泡立ちにつきまして」というお知らせが追加され、「※スープの泡立ちは品質に問題ございませんので安心してお召し上がりください」とアナウンスされていました。

「和歌山ラーメン」で泡立つスープというのはあまり聞いたことがなく、むしろ九州の博多ラーメンのほうが有名で、「博多一幸舎」や「博多一双」といった人気店でスープ表面の泡が知られています。特に「博多一双」の泡は「豚骨カプチーノ」と形容されるほど。

なお「博多一幸舎」のサイトによれば、泡の正体は「水分と撹拌されて空気を含んだ豚骨の脂の泡」とのこと。

今回が脂の泡なのかはわかりませんが、過去に他社が「博多一幸舎」や「博多一双」のカップ麺で再現してきた泡よりも、今回の泡の方がかなり良くできている印象です。

この泡は初めて見たらビックリするのではないでしょうか。しかも最後まで消えません。

マイルドなスープとハート型チャーシュー

大量の泡をかき分けると出てきたスープの色は、和歌山ラーメンの濃い醤油色に比べると乳白色が強く、味も甘みが強くなっています。

本家の「焼豚ラーメン」以上のマイルドさで、いつも以上に豚骨ラーメンらしいと言えるかもしれません。

「和歌山ラーメン」にも色々種類はありますが、名店「井出商店」などのラーメンは醤油の色と味が濃く、今回のようなマイルドなスープというイメージはあまりないのではないでしょうか。

そして具にはいつも通りに焼豚ラーメンの特徴である「ハート型のチャーシュー」が入っています。

紅しょうがやコーンの代わりに、和歌山ラーメンの具としておなじみのナルトが入っているものの、「和歌山ラーメン」らしさは希薄で、基本型は「焼豚ラーメン」だと感じました。

次はどんなご当地ラーメンが登場するのか

九州の「焼豚ラーメン」が再現する「和歌山ラーメン」でしたが、「和歌山ラーメン」らしさは希薄で、和歌山の醤油味やナルトといった要素は取り入れつつも、泡とクリーミーさを際立たせた進化系の「焼豚ラーメン」でした。

「和歌山ラーメン」で泡が主役とは意外すぎです。

メーカーサイトには、今回の商品について「"焼豚ラーメン"を全国のご当地ラーメン風にアレンジしたシリーズ」と書かれており、今後も意外性のあるご当地ラーメンが「焼豚ラーメン」のフィルタを通して出てくるものと思われます。

果たして次はどんなご当地ラーメンが出てくるのか、楽しみですね。