科学技術強国を目指す中国では、優秀な人材を海外から集める「千人計画」プロジェクトを進めている。日本からも中国の大学などの機関で働くよう招かれる人が相次ぎ、2020年には「日本から科学者が流出している」と問題視された。(イメージ写真提供:123RF)

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 科学技術強国を目指す中国では、優秀な人材を海外から集める「千人計画」プロジェクトを進めている。日本からも中国の大学などの機関で働くよう招かれる人が相次ぎ、2020年には「日本から科学者が流出している」と問題視された。中国メディアの百家号は5日、「日本の科学者が中国に流入しているのは、日本の研究費不足が原因だ」と主張する記事を掲載した。

 記事は日本から「流出」している科学者について、ノーベル賞候補者など優秀な科学者ばかりだと紹介した。日本ではメディアの報道で一気に注目が集まり、不安と警戒感が強まったが、彼らは好んで千人計画に参加しているわけではなく「資金不足」からやむなく中国に流れているだけだと伝えた。しかも、この傾向はすでに「ブーム」になっているので、止めることはできないとの見方を示している。

 では、科学者にとって日本と中国の環境はどのくらい違うのだろう。中国では、大学と地方政府が共同で研究費を用意するなど資金が豊富で、高い給与が保障されているようだ。ある日本人は米国で博士号を取った後、日本で仕事が見つからず研究室を用意してくれた中国の大学に行ったそうだ。そこでは給与のほかに、5年間で5000万円の資金を提供してくれたと伝えている。もっとも、「中国はそれだけの成果を求める」としているが、資金の心配なく研究に没頭できるのは、科学者にとって理想的な環境だということだろう。
 
 記事は、科学者の流出は日本の弱体化を示していると指摘している。これまで日本が製造業で強かったのは、「政府と企業が共に戦ってきた」からだが、今の日本政府には科学技術を発展させるための資金がなく、科学者が流出するのをただ見ているしかないと論じた。

 どこで働くかは個人の自由だが、優秀な人材が「日本で働きたいのに、条件の合う仕事がないので中国に行くしかない」というならば、非常に残念な話ではないだろうか。(編集担当:村山健二)(イメージ写真提供:123RF)