河北博文・河北医療財団理事長

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「民間の立場で自律の精神を中心にして医療に取り組んでいきたい」──河北医療財団理事長の河北氏はこう話す。その河北氏はソニー共同創業者の井深大氏、盛田昭夫氏の精神に共感を覚え、現在の社長・吉田憲一郎氏の「感動で世界を満たす」という考えに共鳴する。デジタル化が進む今、「スマートホスピタル」の実現や、新たな国家試験のあり方をどう考えるのか──。

SDGsを先取りした財団の理念
 ─ 前回、地域で内科診断学全般を身に着けた総合医で、患者の人生に寄り添う存在としての「家庭医」の重要性について話してもらいましたが、予防医療にもつながる存在ですね。

 河北 ええ。家庭医をもっと育成すればできると思います。ただ、家庭医が存在しているからといって、寿命が延びるとは限りません。寿命は長ければいいというものではなく、いかに「その人らしく」生きるかということが大切で、それに寄り添うのが家庭医です。

 我々、河北医療財団の理念は、1988年に制定しました。それは「社会文化を背景とし 地球環境と調和した よりよい医療への挑戦」 恕(おもいやり)と信頼です。

 ─ 今言われているSDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・ガバナンス)にも通じる考え方ですね。

 河北 そうした考え方は制定時から入っています。「社会文化を背景とし」が社会、「地球環境と調和した」が環境、「よりよい医療」が我々の本業ということになります。

 ガバナンスについて言えば、我々の訳では「自律」と言っています。民間の立場で、自律の精神を中心にして医療に取り組む。「律する」という部分がガバナンスだと考えています。

 ─ 医師でガバナンスを意識している人は、そこまで多くないと思いますが、河北さんが異業種で共感を覚える経営者はいますか。

 河北 ソニーを再生した平井一夫さん(現・シニアアドバイザー)、そして現在のリーダーである会長兼社長の吉田憲一郎さんはすごいと思っています。数字ではなく「感動」をキーワードに会社を導いていったリーダーだと思います。

 ─ ソニーを創業した井深大さん、盛田昭夫さんの精神にも通ずるものがありますね。DNAが受け継がれている。

 河北 はい。どんな意味を持って、言葉で組織をリードしていくことが、いかに大切かということです。数字は後から付いてくればいいと。

 その意味で、今の政治家の言葉の軽さには目を覆うものがあります。そして、彼らの発想は今生きている人達が何を期待しているかに捉われています。しかし社会は、それだけでは駄目だと思います。やはりもっと根底にあることについて考えなくてはいけません。

 ─ 自らの理念、原点を見つめ続けることが大事だということですね。

 河北 はい。私は日本医療機能評価機構の理事長も務めていますが、2020年に25周年を迎えました。

 この節目にあたって、25周年史を発行したのですが、この中で「将来へのメッセージ」をまとめました。

 まとめるにあたっては、津田塾大学総合政策学部教授で東京大学名誉教授の森田朗さん、元大蔵省で法政大学経済学部教授の小黒一正さんと、様々な議論をしました。

 この中では社会の成り立ちについて「公私官民」という形で分けました。「公」はパブリック、「私」はパーソナル、「官」はガバメント、「民」がプライベートです。

「公」と「私」は個人のマインド、「官」と「民」は運営主体として存在しており、これらのバランスが重要になります。この考え方で分けていくと、世の中のことが明確になります。