@AUTOCAR

写真拡大 (全6枚)

洗練性すら感じるMk4のミジェット1500

text:Alastair Clements(アラステア・クレメンツ)photo:Olgun Kordal(オルガン・コーダル)translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
Mk4のMGミジェット1500の走りは、洗練性すら感じられる。バンパーの位置を約40mm高くするため車高も持ち上げられており、増えた車重も相まって快適と呼べる乗り心地がある。

【画像】同じエンジンを積んだスピットファイアとミジェット 全30枚

アクセルペダルを少し踏み込むと、隠れていた個性が目覚めだす。レッドラインは6000rpmに設定されているが、4000rpm以上回してもエンジンから得られるものは多くない。


MGミジェット1500(1974-1979年)

トランスミッションはモーリス・マリーナ譲り。5速やオーバードライブの付かない、4速MTだ。Mk4に限らず、ミジェットはドライバーへの要求が多い。運転は慌ただしい。

若干の緊張感を伴うものの、カーブの連続する複雑な道を走らせれば、操縦性の精度は高く見返りも素晴らしい。大きいステアリングホイールも、コーナー手前でタイミングを見計らう必要なく、直感的に操れる。

サスペンションを機能させリアへ車重を移せば、オーバーステアを楽しめる。ドライ路面なら、手に負えなくなるようなパワーもない。でも太いトルクがあるから、濡れた路面では不意に滑ることはあるだろう。

フロアに近い位置に座り、背中をシートバックに押し付けた後にMGの姿を眺めてみると、思いのほか腰高でボディが厚いことに気づく。滑らかなトライアンフと並ぶと特に。

美しい曲面で構成されたスピットファイア1500は、フェイスリフトの成功例。1962年のオリジナル・デザインを、ミケロッティは見事にアップデートさせた。マジェンダやミモザといったボディカラーは、小さかった筆者にも強い印象を残した。

常に少し上を行っていたスピットファイア

今回ご登場願った、ラセットと呼ばれる小豆色も同様だ。「1970年代らしい色ですよね」。とオーナーのポール・カッティングも認める。1978年式のスピットファイアだが、クロームメッキのパーツに交換してクラシックな雰囲気を高めている。

発表はMGの1年後。トライアンフは常にミジェットより少し上を行っていた。排気量は当初から1147ccとひと回り大きく、最高出力も63psと高く、装備も優れていた。四輪ともに独立懸架式のサスペンションが、最大の特徴だった。


小豆色のトライアンフ・スピットファイア1500と黒のMGミジェット1500

ミジェットがスピットファイアへ追いつく前に、トライアンフは68psのMk2を発表。さらに2年後にフェイスリフトを受け、76psを発揮する1296ccエンジンを獲得している。

1970年のMk4では、再度イメージチェンジ。その後の1500へ受け継がれる、クリーンなデザインへ改められた。

初期のスピットファイアでは、アクセルオフでアンダーステアが発生する悪癖を備えていた。原因はヘラルド譲りのスイングアスクル。それも、スイング・スプリングと呼ばれるリア・サスペンションが設計され、修正を受けている。

1974年には、ツインキャブレターでMk4のミジェットと同じエンジンを積む1500が登場。リアのトレッドが広がり、安定性はさらに高められた。

コーナーでは挙動が自然になり、MGミジェット並みに速く走れるように。だがロックトゥロック3.75回転というスローなレシオのおかげで、ステアリングホイールの操作は忙しい。ステアリングへの意識は、ミジェット以上に必要になる。

ミジェットより豪華ながらルーズ

そのかわり、安定している。トライアンフを運転中、うかつにくしゃみをしても、進路が乱れることはない。MG以上に、小さな本物のクルマのように感じさせる。トランスミッションには変速しやすいシンクロが付き、オーバードライブも備わる。

3速から5速を使って運転すれば、現代の交通でもエンジンの回転数を耐えられるくらいまで抑えられる。97km/hで2750rpmだから、比較的静かに郊外を飛ばせる。


トライアンフ・スピットファイア1500(1974-1980年)

速いとは感じないものの、リラックスして運転できるクルーザーのよう。でも、乗り心地がそんな気分を改めさせる。不快なほどではないとはいえ、数mも運転すれば、セパレートシャシー構造だと気づくだろう。

引き締まった印象の強いMGより、ずっとルーズ。不要な振動やノイズがあちこちから聞こえてくる。

車内には、1970年代らしいビニール素材と毛足の長いナイロンが用いられ、サンバイザーも付いている。ダッシュボードからしっかりしたステアリングコラムが伸び、灰皿も用意されている。ミジェットの後に見ると、一層豪華な気がする。

車内の幅は狭いものの、前後長があり深く座るMG。対してトライアンフは誇らしいように着座位置が高い。肘は自然とドアの上辺に乗る。視界も良い。フロントフェンダーの峰を挟むなだらかなボンネットは、ジャガーEタイプにも似た眺めだ。

荷室も広く、オーナーのカッティングはスピットファイアを高く評価している。「1965年までならミジェットを選んだでしょう。でも、1975年以降はトライアンフの方が良いと思います」

長距離の自動車旅行ならトライアンフ

スピットファイアは、ひと目で恋には落ちにくい。でも一度好きになれば、長い結びつきを構築しやすい。ミジェットから感じる瞬間的な魅力は、情熱の低下とともに冷めることもある。

MGミジェットもトライアンフ・スピットファイアも、最初期のモデルがベストかもしれない。でも、最後のモデルを否定するほどではない。


トライアンフ・スピットファイア1500(1974-1980年)

年代を重ねるごとに開発が続けられ、妥協もあったが改善も施されている。日常的な乗りやすさや快適性でいえば、初期のモデルを凌駕している。

どちらが大きな成功を収めたのか。Tタイプのミジェットは18年間で述べ35万4164台が作られた。一方のスピットファイアは、ほぼ同じ期間に31万4342台が作られている。

後期型のスピットファイア1500は9万5829台と、全体の3分の1。MGはトライアンフ・エンジンのミジェットを7万3899台製造し、割合は低い。勝敗を決めにくいほど、差は前後し小さかった。

長距離の自動車旅行を楽しい以上のものにしたいなら、トライアンフは自然なチョイス。でもスタートしてすぐに笑顔が欲しいなら、ミジェットの方が勝つと思う。搭載するエンジンには関係なく。

筆者の印象では、スピットファイアの方が多くの点でベター。より論理的な選択となる。だが17歳の頃は、MGミジェットの方が欲しかった。スピットファイアは大人な選択肢だった。筆者がまだ、ティーンネイジャーだったからかもしれない。

ミジェットとスピットファイア 2台のスペック

MGミジェット1500(1974-1979年)のスペック

価格:1559ポンド(新車時)/1万1000ポンド以下(159万円/現在)
生産台数:7万3899台
全長:3581mm
全幅:1394mm
全高:1234mm
最高速度:162km/h
0-97km/h加速:12.3秒
燃費:9.9km/L
CO2排出量:−
車両重量:780kg
パワートレイン:直列4気筒1493cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:67ps/5500rpm
最大トルク:10.6kg-m/3000rpm
ギアボックス:4速マニュアル


小豆色のトライアンフ・スピットファイア1500と黒のMGミジェット1500

トライアンフ・スピットファイア1500(1974-1980年)のスペック

価格:2383ポンド(新車時)/1万2000ポンド以下(174万円/現在)
生産台数:9万5829台
全長:3785mm
全幅:1486mm
全高:1207mm
最高速度:162km/h
0-97km/h加速:12.9秒
燃費:12.0km/L
CO2排出量:−
車両重量:776kg
パワートレイン:直列4気筒1493cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:72ps/5500rpm
最大トルク:11.3kg-m/3000rpm
ギアボックス:4速マニュアル+オーバードライブ