峠の走り屋たちを描いた人気漫画「頭文字D(イニシャル・ディー)」(著・しげの秀一)。その舞台となった群馬県渋川市で、なぜだか不安な気持ちになってしまうバスが走っていると、ツイッターで話題になっている。

そのバスがこちらだ。


頭文字D...!(バスは関越交通、画像はkey@prikey1223さん提供)

バスの車体には、少々不自然に貼り付けられた、

「藤原とうふ店」

の文字。店名と、その下にある黒いラインに見覚えがある人もいるだろう。

「藤原とうふ店」は頭文字Dの主人公・藤原拓海の父が営む豆腐店の名前だ。

作中で主人公は店のロゴが入った、「ハチロク」の愛称で知られる車に乗っている。このバスには一部ではあるが、その車と同じカラーリングのラッピングが施されているのだ。

バスの存在は、ツイッターユーザーのkey(@prikey1223)さんの投稿をきっかけに話題となり、

「このバスは不安になるわww」
「峠を攻めそう」
「このバスでドリフト走行するんかな?」
「運転席に飲み物の入った紙コップ置いてそう」

といった声が寄せられている。

作中では、主人公がコップに液体を入れて車内に置き、こぼさないように車を走らせるシーンがある。もしかしたらこのバスも同じようなことをしているのではないか――そんな想像をするユーザーもいたようだ。

ドリフトする?市に聞いてみると...

Jタウンネットは2020年10月6日、渋川市観光課の担当者に詳しい話を聞いた。

担当者によれば、バスのラッピングは渋川市が行うアニメツーリズム推進事業の一環。「頭文字D」のファンに聖地巡礼をしてもらうために始めたという。

ラッピングが施されているのは、関越交通(渋川市)と群馬バス(高崎市)のそれぞれ一車両。今年7月から運行を開始し、関越交通は渋川駅〜伊香保温泉線、群馬バスは渋川駅〜水沢経由伊香保線を走っている。

ツイッターでは、作中で描かれているような激しい峠バトルを想像する声もあったが、実際はどうなのか。担当者に聞いてみると、

「もちろん路線バスですから、そんなものはあり得ないですよね。アニメではドリフトをして、などあるかもしれませんが...。バスは道路交通法を守ったうえでの運行になります」

とのこと。

また、実際にバスに乗車したという投稿者のkeyさんも、Jタウンネットの取材に対し、

「他の路線バスと変わらず安全運転でした。登坂車線で後続の車に道を譲るくらいにゆっくりでしたので」

としている。他のバスといきなりカーレースを始める...ということはなさそうだ。みなさん、安心して「藤原とうふ店」バスに乗ってほしい。


ラッピングを施した群馬バス(画像は渋川市提供)

担当者によれば、バスは観光客のほか作品のファンが利用しているとのこと。10月からは東京発着の国内旅行がGoToトラベルキャンペーンの対象となったため、「利用者はこれから増えてくるのではないか」と担当者は予想する。

同事業ではラッピングバスのほか、頭文字Dとコラボしたデザインマンホール蓋が市内7か所に設置され、デジタルスタンプラリーが楽しめるようになっている。

担当者によれば、頭文字Dのファンというだけあって車で訪れる人も多いそうで、

「スタンプラリーを始めた当初は『藤原とうふ店』と貼った車を何台も見かけました」

と話していた。

ラッピングバスやスタンプラリーを通して「聖地に来たという雰囲気を少しでも感じていただきたい」と担当者。ラッピングバスは21年7月31日まで走行する予定だ。