戸塚ヨットスクールの戸塚宏校長

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 令和を迎えるやいなや、凄惨な事件が続いて顕在化した、中年のひきこもり問題。社会の闇に巣食っていた問題が臨界点を迎えた格好だが、そこで昭和に袋叩きに遭った男が吠えた。戸塚ヨットスクールの戸塚宏校長(78)である。

 昨今の中年のひきこもり問題に、戸塚氏の歯軋りすまいことか。

「40年前、私がマスコミに叩かれたとき、世間が教育についてもう少し考えてくれていれば、日本はここまでひどくならなかったと思いますよ。ひきこもりが多いと話題の40代、50代なんて、あの時、私が治してあげられなかった世代じゃないですか」

 戸塚氏は2度、時の人になっている。1975年(昭和50年)、単独太平洋横断ヨットレースで優勝し、翌年、戸塚ヨットスクールを開設すると、スパルタ訓練で登校拒否や家庭内暴力の子供を立ち直らせたとメディアが報じ、治療依頼が殺到した。これが最初。

戸塚ヨットスクールの戸塚宏校長

 次に時の人になったのは、ご存じのように、訓練生が亡くなったのを機に、メディアが反戸塚キャンペーンに転じたときだ。結果、83年6月、傷害致死容疑で愛知県警に逮捕され、3年1カ月の勾留を経て、懲役6年の実刑判決を言い渡されたのである。

 戸塚氏は“唾棄すべき体罰”の象徴になり、おかげで“治療”ができなくなったため、ひきこもり予備軍を放置することになった、と言いたいらしい。

「中年のひきこもり問題について、社会性がないからだのなんだのと言われますが、そもそも人間性あっての社会性。正しい教育によって人間性が培われていないのに、社会性を身につけさせるなんて無理です」

 では、どうすればよかったと言うのか。

「リベラルな教育、ほめて伸ばす教育が正しいとされてしまっていますが、ほめて子供が伸びるわけないじゃないですか。学校の先生も文科省や教育委員会から“子供たちのほめるべきところを見つけましょう。叱ってはいけません”と指導されていますが、こんな教育で、人として必要な能力や人間性が身につくわけがありません。叱ったり、体罰を加えたりして不快感を与えることが必要で、子供に不快感を与えない教育は間違っています。子供が自分の力で不快感を取り除く過程で、進歩する能力が身につくんです」

中高生は手遅れ

 戸塚ブシの評価は読者に委ねるとして、平成を経て令和になっても、戸塚サンがいささかもブレずに一貫していることだけは、疑いの余地がなさそうだ。

「うちの教育の基本は大和魂。これは心身一如、精神が肉体を動かすという考えに基づく科学的な進化論です。かつて登校拒否児たちを預かっていたときも、大和魂で教えたからこそ、彼らを治すことができました。それなのにマスコミは私たちを潰した。“力による教育はイカン”と唱える連中が、力でもって私たちを潰したのです」

 その結果、もはや手遅れなのだという。

「日本は潰れます。もう立て直すこともできませんから、うちではこう言っています。“日本が潰れた後に盛り返していける人材を育てよう”。だからいま、うちのスクールでは幼児教育が中心です。日本の教育が失敗している原因は3〜8歳、幼稚園から小学校低学年の子供たちの教育がきちんとできていないところにあるからです。昔と違って、中学、高校からうちで預かっても手遅れ。ない袖は振れない。進歩する能力が備わっていない人間を教えても、意味がありません」

 戸塚ヨットスクールが昭和、平成、令和と続いているのは、極論のなかにも説得力があるからか。

「週刊新潮」2019年6月20日号 掲載