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プロレスは素晴らしいと改めて思いました!

今日は完全なにわかの気持ちで、ただただ楽しかったという気持ちを残したいと思います。新日本プロレス1月4日東京ドーム大会、素晴らしいエンターテインメントでした。俗に「1.4(イッテンヨン)」「闘強導夢」などと呼ばれ、新日の新年恒例となっている興行ですが、今年の出来は大変素晴らしいものだったのではないかと思います。

会場となる東京ドームは3万人あまりの観衆を飲み込み、ほぼ札止めという大満員。開場前のドーム周辺には大変な列が生まれたとかで、この規模の箱でやるにふさわしい「格」が漂っています。一時の低迷期には明らかにスタンドに多くの空席が見えたものが、今大会はそういったブロックが見られません。女性ファンの姿、そして外国人ファンの姿も多く見られるなど、客層も多彩に広がっているようす。惰性ではない熱気がそこにはありました。

↓ドーム前にはたくさんの人、グッズ売り場も大行列!

プロレスの復活、それも納得できる人出!

野球より多いんじゃなかろうか!


↓上から下までビッシリと人で埋まった!


明るい状態で写してもまったく問題ナシ!

掛け値なしの「満員」です!

↓イベントのアンバサダーとしてSKE48の松井珠理奈さんが堂々参戦!

仕事じゃなくて好きをこじらせてここにきたタイプ!

ちなみに、ハリウッドJURINAはプロレスラーとしてのリングネームです!


僕のイメージにあるプロレスというのは、オヤジのもので、「最強」を争っているものでした。雰囲気は場末の飲み屋のよう。リングの上には腹にたっぷりと脂肪をためた不格好な中年が上がり、それに似つかわしくない強さを発揮する。そんな世界観。しかし、今新たに時代を迎えているプロレスはエンターテインメントとしての納得感を全体に備えています。

美しく整えられた舞台と光輝く演出。リングに上がるレスラーたちは、締まった肉体に分厚い筋肉を載せています。コスチュームのデザイン、登場時のウォーキング、煽りVTRでの演出・演技や、キャッチコピー、ロゴデザインにいたるまでどれもがカッコよく仕上がっています。場末とは正反対の華麗さがあります。

そして、そこで争われるのは「最強」ではなく「最高」です。強いかどうかはもはや意識の遠い外側にあり、誰が一番最高なのかを問う肉体コミュニケーションが展開されている。それはプロレスの本質であり、一時の低迷期において間違えてしまった部分だったのかもしれません。

「最強」を争う世界では相手のワザを受けるのはナンセンスであるけれど、「最高」を争う世界では相手のワザを全部受けてこそ讃えられる。そんな単純なことを長い間、間違えていたのかなと、今さらながらに思わされます。それぐらい、この日のプロレスのリングには「最高」への意志が貫かれていました。

プロレスとはもともと技巧が問われるものです。「垂直落下」などが乱発された時代は技巧よりも危険さで説得力を出すような試合もありましたが、本質的には危険さではなく魅せ方が問われるもの。ひとつの打撃、ひとつのアピール、ひとつの逃げ方にどんな感情を乗せ、どんな表現をするかが試合を作ります。だから、上手い選手ほど「何もしていないのに」試合を盛り上げることができる。

この大会ではほぼ全試合に渡り(ジェイ・ホワイトは若かったが…)、そういう上手さで試合が作られていました。まるで全試合がメインイベントかのように充実したバトルが展開され、「こんな展開にするのか!」という驚きと「これは勝負アリですわ!」という納得がともなっていました。しょっぱい試合がない。

そのなかでも印象的だったのは、やはりメインイベント。ダブルメインイベントと銘打たれた試合はどちらも素晴らしく、その2戦だけでも興行として成立するようなエンターテインメントでしたが、特に一戦目のケニー・オメガVSクリス・ジェリコ戦は、まさに夢のような試合でした。

知らない外人だと思うので簡単にグーグル検索しますと、ケニー・オメガは外国出身でありながら日本のプロレスを自身の「ホーム」とする選手。日本のプロレスを目指し、日本のプロレスでつけたチカラで逆に世界に名を轟かせる選手です。リングネームの「オメガ」や必殺技の「片翼の天使」はゲーム・ファイナルファンタジーシリーズの用語を元にしていると言います。

クリス・ジェリコは米国のトップ団体WWEでトップ選手として活躍してきた名選手。日本のプロレスとも深い関わりがあり「ライオン・ハート」「ライオン道」などのリングネームでWAR(昔、天龍がやっていた団体)などのリングに上がってきました。日本にルーツを持ち、アメリカでスターとなったトップ選手です。

歩んだ道のりがどこか重なり、どこか対照的でもある両選手。ケニー・「オメガ」がギリシャ文字の最後の一字であり、クリス・ジェリコの愛称のひとつである「アルファ」がギリシャ文字の最初の一字であるというのも、どちらが「最高」なのかを争うにふさわしい因縁を演出します。

↓知らない外人同士の試合、こんなときは煽りVTRが役に立つ!



いろいろ悶着(ストーリー)を作ったうえで、反則裁定ナシの完全決着戦をやります、と!

WWEのトップレスラーを新日本のやり方でやっつけますよ、オウやれるものならやってみろ、と!

そういう位置づけの試合です!



まずスゴイなと思わされたのはクリス・ジェリコのプロレスの上手さ。WWEの試合運びだと比較的短時間での試合も多く、年齢的にもアラフィフということで日本式の長時間つづくタフな戦いはどうかなと思う部分もありました。ましてや、スーパースターとして確固たる地位を築いた選手です。日米野球におけるメジャーリーガーくらいのテンションで、「こなす」のかなと思う向きも。

しかし、フタを開けてみれば日本仕込みのタフで激しい試合。試合時間はゆうに30分を超え、合間には日本時代の得意技である「ライオンサルト(セカンドロープに足をかけて後ろ向きに跳び、半回転して相手にのしかかる技)」や、日本時代の所属軍団リーダーであった冬木弘道(故人)の得意技である「マッチョポーズ(ポージングしてギャーと吠える)」「サムソンクラッチ(背後についた相手に対して仰向けに倒れ込みながら逆に丸め込む返し技)」など、次々に繰り出される日本ファンの心をつかむワザの数々。

↓おおおおおおおライオンサルトだ!

本人このあと客の歓声にニッコリ!

「ライオン・ハートを覚えていてくれてサンキュー」の笑顔!

しかも、対戦相手の得意技やムーブまでよく研究し、それに沿った試合作りをしてきます。相手の技の引き出しを知り、それを活かして観衆を盛り上げる上手さがあります。日本のレスラーで言えば武藤敬司さんなどもそうなのですが、本当に上手いレスラーは派手な動きなどしなくても基本的な技と、何でもない動きだけで特別な試合を作ってしまうのです。そういう懐の深さが、この試合の魅力をグンと引き上げていました。

↓雑誌社のカメラマンからカメラを奪って場外でダウンする相手を撮影、という発想力も素晴らしい!

こういうのイイね!

誰でもできそうで、なかなか思いつかないことをやる人は好き!

↓さらに試合中には友人であり、日本でも活躍したエディ・ゲレロ(2代目ブラックタイガー)のムーブも披露!

あぁ、動作に込められた意味がわかると、何倍もストーリーが膨らむというプロレスだ…!

これはプロレスラーだ…!

↓クリス・ジェリコの試合直前のインスタでは友人で故人のエディ・ゲレロ(前述)とクリス・ベノワ(日本で活躍した際はワイルド・ペガサスと名乗る)を描いたファンアートをアップしている!

日本のリングで試合をするということに、特別な意義を感じてやってきている!

そのことがビンビン伝わってくる!

一方のケニー・オメガはクリス・ジェリコの懐の深さに抱かれ、存分に暴れます。高い身体能力から繰り出す場外へのダイブでは、「相手にかわされて海外向け実況席の机を破壊する」という見せ場を美しくやり遂げます。さらにリングの支柱にのぼっての落下攻撃、ロープをノータッチで飛び越えて体当たりするトペ・コン・ヒーロなど、一歩間違えば怪我をしかねない技を華麗に繰り出すのはとても見栄えする戦いぶりでした。

試合は反則決着ナシのルールだけあって、凶器攻撃あり、レフェリー無視アリと何でもアリの展開。リング下に何故か入っていた机やイスを大量に運び出してそれでぶん殴ったり、救急箱から何故か大量のスプレー缶が出てきて、それを噴霧したりとやりたい放題。何が飛び出すかわからない展開に大いにわきました。

そんななかでもクリス・ジェリコの上手さは光ります。自分で引っ張り出して配置した3つのパイプ椅子と長机、コレをしばらく寝かせてから試合の決着に使ってきたのです。パイプ椅子のふたつは自分が殴って攻撃する用に、そしてリング外に置いた長机は自分がその上に叩き落とされる用に。「いつ使うんだ」「どこで使うんだ」と思わせておいて、忘れるまで寝かせてから使ってくる。匠のプロレスでした。

↓この長机は自分でそこに広げたヤツなんですが、見事な調整力で真上に落下し、まっぷたつにします!

ジェリコ、コーナーポストにのぼる

オメガ、蹴りを喰らわせる

しかしジェリコは一発では落ちず

もう一発蹴りを誘う

次の蹴りが来るまでに右足を踏み替えて左後方に跳べるようにポジショニング

蹴りを喰らったあと、勢いよく机に跳ぶ!

自分で仕掛けた机が見事にまっぷたつ!

プロレスが上手いwwwwwww

すごい寝かせてから使ったなwwwww



そして試合の決着でも自分が持ち込んだパイプ椅子が巧みに使われます。試合途中では凌いできたケニー・オメガの必殺技・片翼の天使(肩車した相手をさかさまに叩きつける技)を、「自分がリングに持ち込んだパイプ椅子の上に叩きつけられる」ことで威力を増加させ、納得のフォール負けを喰らいます。両者の魅力が遺憾なく発揮され、どちらの価値も失われない見事なプロレス。さすが世界トップの激突だと、大満足の一戦となりました。

これでダブルメンイベントのもう一戦が物足りないと、何だか尻すぼみになってしまう感じもしますが、オカダ・カズチカVS内藤哲也戦もまったくヒケをとらない大熱戦。ストーリー的には長期防衛中の現王者オカダを、人気面では上回る勢いの内藤がくだし、新しい局面へと移行するだろう…つまり「内藤が勝つだろう」とプロレス的には予想される一戦でした。そんな流れを押し返して、相手の得意技を自らの得意技で切り返してからの決め技レインメーカー(ラリアット)連打で、納得の決着を見せたオカダの強さは大変なものだと感嘆しました。デカイ、強い、イイ男、なるほど金の取れる王者です!

プロレスは長いネタフリと、それぞれの個性を理解してようやく全容が見えるロングラン公演のようなもの。僕は全然熱心ではないので、よくわからない部分がたくさんあります。それでも一線を越えてくるというか、楽しめるところまで今の新日本は来ているのだろうと感じます。「何も知らない人が楽しめてこそエンターテインメント」は僕の持論ですが、映画やコンサートのように何も知らない状態からでも興奮できる、そんな質の高さを今回の「1.4」には感じました。もう少し、せめて大筋がわかる程度には流れを追ってみようかなと思いました。そうしたらもっと楽しめるかもしれませんので…!

テレ朝は来年はプライムタイム地上波でやることを再検討すべき!