「元素戦略」を守る知財戦略
レアメタルと呼ばれ、日本を支える高度技術の要となる希少元素。その機能を、鉄やアルミなどのありふれた元素で置き換え、日本を資源大国へと変貌させる国家的なプロジェクト「元素戦略」が注目を集めている。
その立役者である中山智弘氏(科学技術振興機構 研究開発戦略センター・フェロー/エキスパート)と、「元素戦略」の代表的な研究成果の1つであり、現代の錬金術とも呼ばれる「元素間融合」技術を開発した京都大学・北川宏教授をお迎えし、「元素戦略」の現在を具体的に語ってもらった。(構成:畑中隆)
迫る「元素間融合」の特許公開
北川 実は、もうすぐ今回の「ルテニウムとパラジウムからロジウムをつくる」という特許が公開になります。国内、海外で特許出願をしていますけれども、ノウハウが結構ありますので、それを見てもすぐにはマネをしたり、追いついたりできないはずです。
中山 その部分って、痛し痒しですよね。特許とか論文というのは、それを見た人が再現できないとなかなか論文にはならないけれども、本音を言うと、書きたくない部分ではないでしょうか。
北川 レシピは正直、全部詳しく書きたくないですね。すぐ真似されますので。
──研究者として、そこにはどのようなせめぎ合いがあるのですか?
北川 化学の一流誌が厳しく言ってくるのは「キャラクタリゼーション」。つまり、新物質の製造法とその同定です。「本当にそういうものができているのか、そのレシピはどうなっているのか」をきちんと公開しろという点です。再現性のないような論文では、意味がありませんからね。要するに、合成方法はきちっと明らかにして、確かにできているという証拠を見せろということです。たとえば、SPring-8を使ってX線測定をしたり、電子顕微鏡で撮った画像など、新規物質の特定をしてやらないといけないんです。それがないと一流誌に掲載されない。ところが、特許や論文にすると、すぐに真似をする国もありますから、人によっては鼻ぐすり(微量だが確かな効果をもつもの)までは書かないケースはあると思います。
──そこを書かないとなると、再現はできるのでしょうか。
北川 再現できない場合もあるでしょうね。けれどもウソは書いてはいけません。ウソを書いたら論文の捏造ですから。ただし、鼻ぐすり程度をレシピから「抜く」ということは人によってはあり得ると思います。
中山 その物質ができている証拠はきちんと示すけれども、途中プロセスは多少省くことがあるよ、ということですね。それが自分の成果を守るためでもあるし、国の税金をムダにしないための手でもあるということなんです。
