写真/中島望(会見でルールの見解を語るタイガー・ウッズ)

写真拡大

せっかくのハイテクがゴルフのルールをおかしくしている?――そんな論議がゴルフ界で巻き起こっている。問題のハイテクとは、昨年から米ツアーの一部の大会の中継で導入された3DのTVカメラだ。

ことの発端は、先週の欧州ツアー、アブダビ選手権におけるパドレイグ・ハリントンの失格騒ぎ。ハリントンはグリーン上でマーカーを拾い上げる際、ボールを動かしたのに、そのボールをリプレースせずにパットしたという嫌疑がスコア提出後にかかり、結局、過少申告で失格になった。ハリントン自身は「動いたような気がした」とあっさり認め、失格後はジュニアゴルファーを集めて「正しいマークの仕方」を教えたりもしていたのだが、驚きの事実がわかったのはそのあとだった。

驚きの事実――アナログのテレビで見ると、ハリントンのボールはまったく動いて見えない。しかし、3Dのテレビで見ると、ボールは動いたかに見える。だが、3Dテレビが映し出すその「動き」は、選手やキャディの肉眼では見えない。となると、プレー中の選手やキャディが動いたとは思わないし動いたとは感じない「ボールの動き」が、3Dテレビで見ている人々には見えることになってしまうわけだ。

振り返れば、今季の米ツアー開幕戦でカミロ・ビジェガスも失格になった。ビジェガスの場合は、グリーン上ではなく、グリーンに向かってチップしたボールが転がり戻り、そのボールが動いているうちに打ってしまったのだが、「あれはルール違反だ」と指摘したのは、選手でも関係者でもなくテレビの視聴者。そして、その指摘は電話やEメールではなくツイッターで広められたという、いかにも現代的なオマケ付きだった。

そのオマケはさておき、肉眼、アナログテレビ、3Dテレビで、それぞれ見え方が異なるボールの動きをルール上、どう判断したらいいのか、どうやって見解を統一したらいいのかという問題が起こっている。すでに米PGAツアーとUSGA、R&Aがルール上の解釈や対処法を話し合い始めているというのは、これまた現代ならではのゴルフ界の騒動だ。だが、米ツアー選手たちは、どちらかというと、さほど3D問題を取り沙汰しておらず、むしろ基本に立ち戻ろうという姿勢のほうが顕著だ。

タイガー・ウッズは「とにかく選手がルールを熟知するのは選手としての責任だ。だが、テレビに映る頻度は選手によって異なるからね」。フィル・ミケルソンは「選手がいちいちルール委員を呼ぶことでプレーの進行が遅くなるのは嫌だね。でも、大事な場面ではルール違反を犯してしまう前にルール委員を呼んできっちり対処すべきだし……でも、まあ、このツアーの選手たちの多くは、ちゃんとルールを知っていると思うけどね」

彼らが言う通り、世界一のツアーと呼ばれる米ツアーで単純なルール違反による失格なんてことは起こってほしくないし、起こるべきではない。選手自身の自己申告や同組選手からの指摘ならともかく、彼らが目で見えないもの、感じられないものが、別の次元で「違反だ!」とされるのは、選手にとっては、さすがに酷ではなかろうか。(舩越園子/在米ゴルフジャーナリスト)