『Michael/マイケル』プロデューサーが語る製作裏話 ─ 「ステージ上とステージ外のマイケルを、最前列で観せよう」【インタビュー】
“キング・オブ・ポップ”マイケル・ジャクソンの生涯を映画化した『Michael/マイケル』でプロデューサーを務めたグレアム・キングが来日。THE RIVERの単独インタビューに応じた。
キングは、クイーンのフレディ・マーキュリーを描いた『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)を世界的大ヒットに導いた名プロデューサー。その後に選んだ題材が、さらに巨大な存在であるマイケル・ジャクソンだった。かつてマイケル本人と時間を共にし、ヴィクトリー・ツアーやバッド・ツアーも体験したキングにとって、本作は単なる伝記映画ではなく、自身の人生とも深く結びついたプロジェクトだったという。
インタビューでは、『ボヘミアン・ラプソディ』と同じく重要なパフォーマンスシーンから撮影を始めた理由、何度も脚本を書き直しながら“正しい物語”を探し続けた長い道のり、そして批評家と観客の反応のギャップについても率直に語られた。さらに、ジャファー・ジャクソンを“マイケル”として見出した瞬間、続編の可能性、そして日本での撮影への前向きな思いまで。映画『Michael/マイケル』を作り上げたプロデューサーの言葉から、本作の核心に迫る。
『Michael/マイケル』プロデューサー グレアム・キング 単独インタビュー4月にプロモーションを始めて以来、今回のインタビューが、最後の回になるよ。
──それは光栄です。初めまして。日本へようこそ。日本へは、どれくらい来られますか?
昔は結構来ていましたね。でもここ数年は来られていなかった。最後に来たのは、マーティン・スコセッシやレオナルド・ディカプリオと一緒でした。宣伝のためだったんですが、『ディパーテッド』か『アビエイター』だったか。確か『ディパーテッド』だったかな。だから20年前になりますね。もうずいぶん昔のことです。その時に、人生最高の経験をしたんですよ。パークハイアットの最上階で、ビル・クリントンとディナーをしたんです。
──すごい話ですね……。さて、マイケル・ジャクソンの曲を聴いて育った大ファンとして、この映画はとても特別です。彼の最高のパフォーマンスを最前列で観ることができた。今日は、すごく興奮しています。
ありがとうございます。いえ、こちらこそここに来られて光栄です。日本の皆さんにも、世界中の人々と同じようにこの映画を観ていただけることを、とても楽しみにしています。
世界中の人々がマイケルを称え、映画館に戻ってきて、数時間の逃避とエンターテインメントを楽しんでいる。その様子を見ることができたのは、本当に満足感があり、報われる思いでした。そして、マイケル・ジャクソンがどういう存在だったのかを、彼の時代を実際に体験していない若い世代に伝えることができるんです。
私は幸運にも、1981年にマイケルに会い、一緒に過ごすことができました。それから、ドジャー・スタジアムでのヴィクトリー・ツアーのコンサートにも行きましたし、ロンドンでのバッド・ツアーのコンサートにも行きました。だから、僕はマイケルや彼の兄弟たちとは本当に長い付き合いなんです。そう考えると、今こうして彼の物語を作っていることは、まるでひとつの円がつながったような感覚ですね。
(R), TM & (C) 2026 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.──あなたが以前プロデュースされた『ボヘミアン・ラプソディ』も大好きです。YouTubeでは、映画のシーンと実際のライブ映像を並べて比較するような動画も上がっていますよね。本作でも同じような動画が作られるかもしれません。そういうプレッシャーは感じていましたか?それとも、どれだけ細かく見比べられても大丈夫だという自信がありましたか?
そのことは、あまり考えないようにしています。考えるとすごく緊張してしまうので(笑)。ただ、世界中の人々がこの映画を待っているというプレッシャーは感じます。皆さんが期待してくれているわけですし、プロデューサーとしては、その期待にきちんと応えなければなりません。
ただ、私にとって大切なのは、人々にこうした象徴的なアーティストたちのことを知ってもらうことなんです。私は、アーティストを人間として描くことが好きなんです。
『ボヘミアン・ラプソディ』が成功したあと……、特に日本ではとても大きな成功を収めましたよね。そこで私は、自分自身に挑戦したいと思いました。私には、この業界で望みうる最高の師匠がいました。それがマーティン・スコセッシです。彼はいつも私にこう言って、教えてくれました。映画を作ってそれが成功したら、次はもっと難しいものを選び、常に自分をさらに高めようとしなければならない、と。
だから、フレディ・マーキュリーの次に、マイケル・ジャクソンの世界に飛び込むことは、私にとって自然な流れでもありました。ただ、こういう作品はいつも本当に長い旅になります。公開日も何度も発表されては延期になりましたね(笑)。その理由の一部は、映画を正しい形に仕上げるためでした。
映画を届けるチャンスは一度きりです。だからこそ、きちんと期待に応えられる作品にしなければならない。満たすべき条件が本当にたくさんあったんです。
(R), TM & (C) 2026 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.──撮影過程についてもぜひお聞かせください。『ボヘミアン・ラプソディ』の時は、映画の最後にあったライヴ・エイドのパフォーマンスを撮影初日に持ってきたんですよね。本作でも、Badツアーの「バッド」のパフォーマンスから撮影をスタートしたそうです。なぜ、こうした重要なパフォーマンスシーンから撮影を始めるのですか?
まず俳優にとっては、パフォーマンスの撮影から始めることには利点があると思います。なぜなら、それこそがたいてい最大の挑戦だからです。自分が演じる人物を、自分たちなりに作り上げなければならないわけですから。
『ボヘミアン・ラプソディ』では、最初にライヴ・エイドの場面を撮影し、その後にドラマ部分を撮りました。今回の作品では、「バッド」やほかの多くのパフォーマンス場面を撮影してから、ドラマ部分に入っていきました。そうすることで、俳優たちはより自信を持てるようになるんです。ダンスの動きやパフォーマンス、そして10万人の観客を前にステージに立つ有名人を作り上げるという、最も高い試練を乗り越えたことがわかるからです。
フレディとマイケルは、とても似ていました。2人ともスタジアムで歌い、スタジアムでのパフォーマンスを愛していました。そして音楽を通して、人々をひとつにしたんです。今の時代に、映画館でその感覚を作り出すことは、私たちにとって映画を作るうえで非常に特別な方程式なんです。
だから、そこから始める理由はいくつもあります。ネットで読んだことがありますが、「グレアム・キングの伝記映画は、『ボヘミアン・ラプソディ』ではフレディ・マーキュリーがライヴ・エイドの前に飛び跳ねているところから始まり、『Michael/マイケル』ではマイケル・ジャクソンが飛び跳ねているところから始まる」と言われていました。あれは狙ったわけじゃなくて、たまたまなんです(笑)。
(R), TM & (C) 2026 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.ただ、『ボヘミアン・ラプソディ』では、あの場面の緊張感から始め、そこから物語を語っていき、やがてその場面に追いついていく構成が良かったと思っています。『Michael/マイケル』でも、観客にとってより馴染みのあるマイケル・ジャクソン、つまり「バッド」のルックから始めたいと思いました。ただし、最初から彼を見せるのではなく、後ろ姿だけで見せる。観客は「来る」とわかっているけれど、それがいつなのかはわからない。そうすることで、より期待を高めたかったんです。
──現在ではミュージシャン伝記映画がたくさん作られていますよね。ユニバーサルではボン・ジョヴィの伝記映画も動いていると聞きます。あなたも、次はビー・ジーズの伝記映画に取り組んでいるんですよね。伝記映画を成功させる鍵は、何だと思いますか?
私にとって、その部分にはたくさんの要素があります。大切なのは、象徴的な人物を世界に示すことです。それがパフォーマーであれ、政治家であれ、発明家であれ、その人物を人間として描くこと。天才たちを、人間として描くことなんです。
たとえば『アビエイター』でレオナルド・ディカプリオが演じたハワード・ヒューズ、モハメド・アリ、フレディ・マーキュリー、マイケル・ジャクソン。あるいは、私が手がけた『アルゴ』のトニー・メンデスもそうです。彼らがどういう人物だったのか、その内側を世界に見せる。世界に、その人物を知るための視点を与えることなんです。
特にパフォーマーの場合は、そこが重要です。彼らには、世間が知っているペルソナがあります。ステージに上がり、ある種のキャラクターを演じるわけです。でも、人々が本当に見たいのは、ステージを降りた後の姿でもあります。だから、その両方を組み合わせることが大切なんです。
(R), TM & (C) 2026 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.私は以前、マイケル・ジャクソンについてこう話していたのを覚えています。「世界中の人々に、ステージ上とステージ外のマイケルを最前列で観るチケットを渡そう」と。
そして、マイケルの最も有名な言葉のひとつに、彼は「自分はステージの上で生まれた。ステージにいない時、世界は自分にとって異質な場所だった」と語った、というものがあります。私はその言葉を掘り下げ、彼がそれによって何を意味していたのかを観客に示したいと思いました。そして、この映画ではそれをきちんと描くことができたと思っています。
──マイケル・ジャクソンをこれほどに完全再現するにあたって、最終的に解決策を見つけるまで、何度試してもまったく上手くいかなかった、といったことはありましたか?
脚本は本当に何度も、何度も書き直しました。何稿も重ねました。だから、これだけ何年もかかるんです。公開日も何度も発表しましたが、実現できなかったものがたくさんありました。世界中の人々はかなり苛立っていましたよね。でも、チャンスは一度きりなんです。だから、正しい形にしなければならない。
誰かの人生、あるいは人生の半分、4分の1を扱うわけです。そして、その人生全体から、三幕構成の映画体験を作り上げなければならない。だから、その構造の中で、どの物語を語るのかを選び取らなければいけません。それはとても難しいことです。特にマイケル・ジャクソンやフレディ・マーキュリーのような人物の場合は、語るべき物語があまりにも多いですから。
ただ、世界の人々は、私たちがドキュメンタリーを作っているわけではないことを理解してくれていると思います。日付を動かしたり、現実の出来事を多少組み替えたりする自由はあります。ただし、その人物の人生における物語の筋には忠実でなければならない。
(R), TM & (C) 2026 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.『ボヘミアン・ラプソディ』では、実際にはフレディ・マーキュリーがAIDSと診断されたのはライヴ・エイドの後でした。でも映画としては、ライヴ・エイドの前に診断されたという形にした方が機能したんです。それについては、多くの批評家から批判も受けました。でも、それならフレディ・マーキュリーのドキュメンタリーがたくさんあるんだから、それを観ればいいのです。
私の仕事は、何よりもまず、観客を楽しませる物語を作ることです。だからこそ、何年も何年もかかるんです。『ボヘミアン・ラプソディ』も、本当にそうでした。完成させ、正しい形にするまでに、おそらく10年ほどかかったと思います。『Michael/マイケル』は2018年からなので、8年になります。ですから、本当に長いプロセスなんです。
プロデューサーであるなら、その作品とともに生き、食べ、呼吸するように、毎日向き合うべきだと思います。私は、正しい形にすること、そしてこうした物語を語ることにのめり込んでいきます。ある意味では、その作品が人生を占めるようになるんです。
そして、最もやってはいけないのは、急いで何かに飛び込むことです。自分たちが本当に正しい物語を語っているのか、それを確かめなければなりません。
──アメリカでは、批評家の受け止め方と観客の反応のギャップが話題になっています。ご覧になったかわかりませんが、Rotten Tomatoesでは批評家スコアはあまり高くないにも関わらず、観客スコアはとても高い。本作でこういう反応が起こったのはなぜだと思われますか?
まず、私は多くの批評家が批評していたのは、私たちの映画ではなく、マイケルの人生だったと思っています。そもそも批評家は、伝記映画にはいつも厳しいものです。
批評家は『ボヘミアン・ラプソディ』も気に入っていませんでした。Rotten Tomatoesでは61%でした(※本記事時点で60%)。だから『Michael/マイケル』よりは高かったけれど、決して良い数字ではありませんでしたよね。彼らは、自分たちをより芸術的な批評家だと考えたがるところがあります。たとえば、ロビー・ウィリアムスが猿になった伝記映画(『BETTER MAN/ベター・マン』)には98%をつける(※本記事時点で89%)。でも、アメリカでは誰もあの映画を観ていないですよ。
つまり、ファンや一般の観客は、もう一度、批評家たちに対して『自分たちはあなたたちの言うことを聞いていない』と示したのだと思います。
『ボヘミアン・ラプソディ』の時の方が、私はもっと腹が立ちました。なぜなら、あれはもっと評価されるべき映画だと思っていたからです。でも、アカデミー賞は4部門受賞したでしょう。興行収入は9億ドルに達したでしょう。
それに、今どれだけの若い人たちが批評を読むでしょうか。彼らには何かを読む時間すらないでしょう。
もちろん、そういう評価は腹立たしいものです。でも結局のところ、私はニューヨーク・タイムズのために映画を作っているわけではありません。世界中の観客が劇場に来て、称え、学び、楽しむために映画を作っているんです。私はこうした作品を「歴史映画」と呼んでいます。そこには歴史があり、同時に現実から離れて楽しむ時間もあるからです。
だから、批評家がそれを気に入らなかったとしても、私がやっていることを止める理由にはなりません。もし観客が劇場に来なかったら、その時は考え直すでしょうけれどね(笑)。
──続編も進行中と聞きました。今、何か話せることはございますか?年長のマイケル役に、また別の俳優を探すのでしょうか?
いえ、私たちはマイケルを見つけ出しました。今後どうなるかは、これから見ていくことになります。
もちろん、いろいろな話は出ています。映画の最後には「彼の物語は続く」とありますし、マイケルについては、まだ語るべき物語があると思っています。
ただ、今のところはこの映画に集中していました。日本ではまだ公開すらされていませんし、ジャファーも私も、関わった全員が少し時間を置く必要があると思います。そのうえで、今後どうなるかを見ていくことになるでしょう。
(R), TM & (C) 2026 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.──マイケル・ジャクソンのパフォーマンスには、テクニックだけでは説明がつかない“魔法”が宿っています。あなたにとってのその“魔法”とはなんですか?
ジャファー・ジャクソンです。彼に出会えたことです。彼は演技をしたがっていませんでした。映画に出たいとも思っていませんでした。でも、私は彼にある種の魔法のようなものを感じたんです。
私がマイケル・ジャクソンと出会った時、彼は21、22歳でした。ジャファーに会った時も、彼は21、22歳でした。だから私は、マイケルと一緒にいた時に感じたのと同じような感覚を、ジャファーから感じたんです。
そこで私は彼を説得しました。学び、トレーニングしてみてほしい、と。私が彼を助けるし、ラミ・マレックの時と同じような育成のプロセスに入れて、準備させる。私が彼を守る。彼はただ、本当に、本当に懸命に努力すればいい。そして、自分の叔父を演じるというプレッシャーを心配しすぎなくていい、と。
彼は本当にすごいですね。文字通り、彼がスクリーンに映った瞬間、それがマイケルかどうかなんて考えなくなるんです。少なくとも、私はそうでした。
®, TM & © 2026 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.幼い頃のマイケルを演じたジュリアーノも同じでした。同じような方法でした。だから、彼ら2人がいなければ、この映画は存在しません。私は200人近いそっくりさんのオーディションも行いましたが、私にとっては、ジャファーに会った時点ですべてでした。「私たちは映画を作る。いつになるかはわからないけれど、必ず作る」と思ったんです。だから私にとって、それは間違いなく大きなハイライトでした。
──ありがとうございました。お時間が来てしまいました。
本当にありがとうございます。そして、日本の皆さんにこの映画を楽しんでいただけることを願っています。日本はマイケルが最も愛した国でした。
世界中の人々がこの映画を楽しんでいる様子をSNSで目にしていると思います。だから、日本の観客の皆さんにも同じような体験をしていただけたら嬉しいです。
──もし続編が実現したら、ぜひ日本でもシーンを撮影してくださいね!
もちろんです。必ず実現しますよ。間違いありません。間違いなく。先ほども言ったように、語るべき物語はまだたくさんありますからね。
(R), TM & (C) 2026 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.映画『Michael/マイケル』は大ヒット公開中。では、本作でマイケル・ジャクソン役を演じたジャファー・ジャクソン、その幼少期役のジュリアーノ・クルー・ヴァルディ、プロデューサーを務めた重鎮グレアム・キングへの単独インタビュー動画を公開中。撮影の裏側や背景など、映画がより楽しめるようになる貴重なトークをたっぷり引き出している。
