完全養殖のウナギ(19日、東京都千代田区で)

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 卵から人工孵化(ふか)させる「完全養殖」のウナギが、29日から世界で初めて試験販売される。

 ウナギ養殖大手「山田水産」(大分県)が手がけたもので、商業化に向けて消費者のニーズを確認する狙いがある。ただ、養殖技術の確立や価格の抑制など課題も指摘されている。

 鈴木農相は19日、販売開始に先立ち完全養殖のウナギを試食し、「おいしいという言葉しか出ない。多くの消費者に届けられるように後押ししたい」と太鼓判を押した。山田水産の山田信太郎社長は「(生産の)数を増やすことで、次の展開を考えていきたい」と意気込みを語った。1匹あたり5000円程度で、店舗やECサイトでの試験販売を予定しているという。

 完全養殖は、人工的に採取した卵から育てた成魚に産卵させ、さらに次の世代につなげていく技術だ。国立研究開発法人「水産研究・教育機構」の前身機関が2010年に世界で初めて成功させ、研究を進めてきた。大型水槽や飼料の開発を進めるなどして、26年時点で年間数万匹の稚魚の生産が可能になっている。

 一方で、卵から稚魚に育てる過程は依然として難しく、効率的で安定した大量生産に向けた技術の確立には至っていない。ニホンウナギの養殖に使う稚魚「シラスウナギ」は現在、主に天然資源に頼っている。ウナギの国内供給量は24年に6万941トンとピークだった00年の4割程度にまで落ち込んでおり、中国などへの輸入依存度が高い。

 生産コストの抑制も課題となっている。稚魚1匹あたり4万円だった16年度から現在は1800円にまで下がったものの、天然と比べると3〜4倍の水準だ。同機構は当面、ウナギの安定供給に向け、生産コストを800円にまで抑えることを目標に、技術開発を続ける方針を示している。