「退職失敗」のリスク増?民間業者の事件で退職代行ビジネスに異変…ブームの裏で「労働法全く理解しないまま安易に参入した民間業者が多い」識者が問題点を指摘

2026年2月に民間の退職代行会社の社長らが弁護士法違反容疑で逮捕されて以降、非弁行為の危険性が指摘されている退職代行業界。民間業者の事件以降、業界には異変が起きているようだ。
朝日新聞によると、退職代行をうたう民間業者への注目が高まる中、東京弁護士会も注意を促すほどの事態になっているという。
ニュース番組『わたしとニュース』では、退職トラブルを避けるためにはどうすればいいのか、合同労働組合「私のユニオン」の藤井直樹書記長の見解を交え、弁護士の三輪記子氏とともに考えた。
◾️民間業者の事件後の変化と「退職失敗」のリスク

民間退職代行会社の事件以降の変化について、藤井氏は次のように明かす。
「委任状の提出が求められるケースが増えていたりして、退職代行に対して会社側の対応が厳格になっているのかなと感じている。あとは『弁護士以外の退職代行は断っていいんだ』的な発想をお持ちの会社がごく一部にあって、こちらから『労働組合もちゃんと法的な根拠を持っているんですよ』というお話をするケースも増えたような気がする」(藤井氏、以下同)
「一番大きいのは営利目的で労働法などを全く理解しないまま、安易に参入してきている民間業者が多いのかなと。ここ1、2年で参入してきて、そういった業者が退職トラブルを引き起こしているケースが増えているような気がする。民間企業の退職代行は一番多い種類だが、退職に失敗するリスクが非常に高くなってきているのかなと」
帝国データバンクによると、退職代行は2025年10月時点で全国に少なくとも52法人あり、約6割が民間経営によるもので、サービスの市場への参入は増加している実態があるという。トラブルを避けるためにはどんな点に気をつければよいのだろうか。
「知識や受け答えがしっかりできているような業者を選ぶのが必要になってきている。民間企業の退職代行だけではなく、私たちのような労働組合の退職代行もそうだし、弁護士の退職代行もそうだが、『交渉はいたしません』というところも出てきている。料金は安いけれども交渉はせず、退職連絡しかやらないところも出てきているので、一言『退職交渉は可能ですか』と必ず確認するようにしていただければと思う。その上で『退職交渉をうちでできます』というところがあれば、任せても問題はないのかなと思う」
この民間経営が増えている現状について、三輪氏も労働法の理解の重要性を指摘する。
「藤井氏の話にもあったが、一番の問題は労働法の理解がないまま退職代行業務をやってしまうこと。退職するからもうあとはどうなってもいいではなく、退職する最後の時まで労働者の権利を守ってもらえるような形がいい。交渉をきっちりやってくれるところじゃないといけない。ただ辞めればいいのではなくて、辞める時に自分が損しないよう徹底してくれる業者かどうか、弁護士かどうか、労働組合かどうかを確認するのがいいと思う」
◾️弁護士だけではカバーしきれない?退職代行市場の現状と課題

法的交渉ができない民間代行について藤井氏に改めて聞くと、「今日にも明日にも辞めたいという方が大勢いるので、弁護士や労働組合の退職代行だけでは全体のマーケットをカバーできない」という。
この見解について、三輪氏は次のように語る。
「確かに私の弁護士の友人にも、『自分は退職代行とか全然やるけど、そういうことが世の中に伝わっていないよね』ということで、HPのプロフィールに『退職代行やります』とあえて記載するようにした友人もいる。マーケット全体はカバーできていないのかもしれないし、本来的には退職代行に関しては労働組合であったり弁護士がやるべき業務だという、そもそもの前提が世の中には知れ渡っていないことは反省としてある」(三輪氏、以下同)
民間の退職代行の増加を受け、会社が『退職代行は受け付けない』と拒否をしたり、最終月の給料が支払われないなど権利が適切に扱われなかったり、有休消化や退職日を拒否されたり、離職票が届かないなど、退職代行を使って失敗したケースも増えているようだ。
「こういうことをカバーしようと思うと、交渉してくれる人に依頼しないとダメということだ。前提事実を知ることで、自分の身を守ることができる。もしかしたら民間業者に退職代行を依頼してうまくいったケースもあると思う。それは全く否定はしないが、それはたまたまで自分は失敗してしまうかもしれない。権利は目に見えないものだが、社会生活上の権利は自分の体そのもので大切なものだから、大切に扱ってほしい」
◾️「労働法の知識が会社にも労働者にも知れ渡っていない」
現実として民間の会社が多い中、一番権利が守られるアプローチについて、三輪氏は会社と労働者の双方の意識改革の必要性を指摘する。
「辞められないという思い込みや、会社側も簡単には辞めさせないぞという雰囲気があったりすると思うが、これは両方間違い。簡単に辞めてもいいし、辞める人を無理やり留め置くことはできない。これは労働法の知識が会社にも労働者にも知れ渡っていないことが背景にあると思う」
最後に三輪氏は会社側と労働者側の意識に触れて、次のように語った。
「今は流動性が高まってきていると言われているが、これだけ退職代行のニーズがあるということは、流動性があるのに辞めにくい社会だということ。そうではなく、『もう辞めてもいいや』『辞めてもらってもいい』とある意味ドライな感じで会社側も労働者側も捉えて、自分でスムーズに退職できるようになったらいいのかもしれない」
(『わたしとニュース』より)
