【最速・最安レビュー】DJミキサーの常識を横蹴り(価格も)。teenage engineering EP-136、新しき相棒
DJミキサーって、こんなに気軽に持ち歩けるものだったんだ。
teenage engineeringの新製品「EP-136 K.O. sidekick」は、EPシリーズの流れをくむポータブル2chミキサー/DJミキサーです。しかも、お値段はなんと3万円を切る29,700円(税込)。
単4電池2本、またはUSB-Cバスパワーで動作。
しかもモバイルデバイスからの電源供給だけでも使えるので、スマホ、タブレット、EPシリーズ、シンセ、カセットプレイヤー、レコードプレイヤーなどを組み合わせた小さなDJ/ライブ環境を、かなり身軽に作れます。要するに、DJミキサーというより、音楽好きのための“持ち歩ける司令塔”です。
EPシリーズらしく、操作はかなり直感的。ゲイン、3バンドEQ、チャンネルフェーダー、CUE、FX、MODスティック、感圧式パッド。
見ればだいたい何をする場所なのかがわかる配置で、マニュアルとにらめっこするより、まず触って覚えるタイプの機材です。
30分も触れば、音を入れて、混ぜて、モニターして、エフェクトをかけるところまではかなり見えてくるはず。
アナログ音源のテンポが“見える”
EP-136 K.O. sidekickでいちばん画期的なのは、デュアルチャンネルのビートマッチ機能です。
各チャンネルに入ってきた音声信号のテンポを自動検出し、チャンネル間のテンポ差を表示してくれます。CUEを押すとヘッドホンモニターしたいチャンネルを選べるだけでなく、同時に入力信号のBPM分析がスタート。説明書上では、1小節程度で分析が完了するとされています。
これ、デジタルDJだけの話ではありません。
アナログレコードやカセットプレイヤー、小型シンセ、グルーブボックスなど、アナログ(音声)で入ってくる音にもテンポの補助線を引ける。もちろん最後は耳で合わせるのがDJですが、BPMやズレが見えるだけで、ミックスの入口はかなり開かれます。
さらに、SELECTを押しながらCUEを押すと、BPMとBPMのズレを見るフェーズメーターを表示できます。遅れているチャンネル側にマーカーが寄っていくので、どちらを少し送るべきか、かなり視覚的に把握できる。タップテンポでBPM判定もできます。
これは、アナログDJにとってもかなり強い機能です。レコードやカセットの手触りはそのままに、現代的なテンポ把握だけをそっと足してくれる感じ。押しつけがましくないテクノロジー。そして家にある古いオーディオ機材も繋げる。これがあればたとえそこが実家でも(笑)、モバイルDJブースを構築することができるのが最高。
エフェクトがちゃんと楽器っぽい
EP-136 K.O. sidekickには、6種類のマルチエフェクトが搭載されています。
FILTER、DELAY、TAPE、LOOP、TREMO、SIREN。
操作はFXボタンとMODスティック、感圧式パッドを組み合わせる方式。たとえばFILTERではMODスティックでHPF/LPFを動かし、感圧式パッドでレゾナンス量を調整。DELAYではディレイタイムとディレイ量、TAPEでは早送り/逆再生とワウフラッター量、LOOPではループ間隔と発動、TREMOではトレモロ間隔と量、SIRENではLFO量やピッチを操作できます。
スペックだけ見るとDJミキサーの内蔵エフェクトですが、使ってみるとかなり“楽器”寄りであることがわかります。
レコードにディレイを飛ばす。カセットの音をTAPEでさらに揺らす。シンセのドローンにフィルターをかける。グルーブボックスのループを一瞬つかんで崩す。SIRENでダブ的な合図を入れる。そういう遊びが、手元の小さなパネルで完結します。
しかも、エフェクトのオートメーションを記録できる「タップエフェクトシーケンサー」も搭載。SELECTを押しながら感圧式パッドやMODスティックを動かすことで、最長2小節までの動きを記録できます。つまり、エフェクトを一発芸ではなく、テンポ同期したパフォーマンスの一部として扱えるわけです。
スマホにつなげば、そのままDJセットになる
スマホやタブレットとの連携もかなり実用的です。
EP-136 K.O. sidekickは、Djayなどのモバイル/PC両対応のDJソフトと連携できます。スマホとEP-136をUSB-C to Cケーブルで接続し、アプリ側でミキサーモードを「外部」に設定。デッキ1をチャンネル1-2、デッキ2をチャンネル3-4に割り当てれば、スマホDJ環境として使えます。
ここが、かなり今っぽい。
スマホと小さなミキサーだけでDJができる。しかも外部ミキサーとしても、MIDIコントローラーとしても動作する。モード切り替えが必要なので同時共存はできませんが、「今日はスマホDJ」「今日はハードウェアミキサー」「今日はリスニング用のヘッドフォンミキサー」といった使い分けができるのは大きいです。
MacやPCとつなげば、USB-Cオーディオインターフェイスとしても動作。対応OSはiOS、Android、macOS、Windows。8in/4out対応なので、小さな見た目に対して入出力の守備範囲はかなり広いです。
マシンライブのミキサーとしてもかなり使える
個人的にいちばん気になるのは、モジュラーシンセなどのハードウェア機材を使った「マシンライブ」用のメインミキサーとしての使い方です。
説明書でも、EPシリーズや小型シンセ、グルーブボックスなどを組み合わせたハードウェア中心の音楽制作、あるいはマシンライブ用メインミキサーとしての使用例が挙げられています。アナログ入力でステレオ3系統をミックスし、USB-C経由でスマホやPCに録音することも可能。OP-XYやOP-1 fieldなど対応機種であれば、USB-C経由でオーディオ入力もでき、合計4ステレオ入力のセットアップも想定されています。
これは、机の上の機材が増えがちな人にはかなり刺さるはず。
EP-133 K.O. II、EP-40 RIDDIM、小型シンセ、リズムマシン、カセットプレイヤー、モジュラーシンセ。そういう“ちょっとずつ音の出る箱たち”をまとめるには、ちゃんと手で触れるミキサーが必要です。でも大きなミキサーを持ち歩くのは面倒。オーディオインターフェイスとエフェクターとミキサーを別々に持つのもつらい。
EP-136 K.O. sidekickは、その面倒をかなり小さくしてくれそうです。
低価格で、軽くて、いつも持ち歩ける
DJミキサーは、普通は“据え置く”機材です。クラブにあるもの。スタジオに置くもの。持ち歩くとしても、それなりに覚悟がいるもの。
でもEP-136 K.O. sidekickは、低価格で、コンパクトで、電池でも動く。USB-CでスマホやPCにつながる。アナログ音源のテンポも見える。エフェクトもある。オーディオインターフェイスにもなる。
つまり、これはDJミキサーを“バッグに入れる道具”にしてしまう製品です。
レコードバッグではなく、普段のメッセンジャーバッグに入れておく。スタジオに行く。友だちの家で鳴らす。イベントの転換中に小さなDJをする。モジュラーシンセのライブセットに混ぜる。スマホとつないで即席DJブースを作る。
いつでもDJ。
いつでもマシンライブ。
いつでも録音。
いつでも実験。
そう考えると、「SIDEKICK」という愛称もかなり効いてきます。
英語の“sidekick”には「相棒」や「片腕」という意味があります。EPシリーズの横に置いて、スマホDJ、アナログ音源、シンセ、マシンライブを支える。まさに名前どおりのサイドキック。
でも、teenage engineeringのネーミングは、たぶんそれだけでは終わりません。
EPシリーズの象徴となるサンプラー「EP-133 K.O. II」の限定版パッケージにモハメド・アリをフューチャーしたボクシングのイメージがあったことを考えると、K.O.はノックアウト・パンチ。そしてsidekickは、格闘技でいう強力な横蹴りでもあります。
正面から一発で倒すパンチではなく、横から鋭く入って流れを変える蹴り。
EP-136 K.O. sidekickは、DJミキサーのど真ん中を狙った大きな機材ではありません。むしろ、EPシリーズやスマホ、レコード、カセット、シンセの横にすっと入り込んで、音楽の動き方を変えてしまう小さな一撃です。
K.O. IIがパンチなら、sidekickは横蹴り。
バッグの中に忍ばせておくには、ちょっと強すぎる相棒かもしれません。
Source : Media Integration, teenage engineering

