【決算深読み】エプソン 2026年3月期はプリンター回復で売上1.4兆円超も大幅減益、今期は増収増益見込む
セイコーエプソンが発表した2025年度(2025年4月〜2026年3月)の連結業績は、売上収益は前年比3.7%増の1兆4132億円、事業利益は同6.5%減の837億円、営業利益は同34.0%減の495億円、税引前利益は同36.2%減の500億円、当期利益は同67.0%減の182億円の増収減益の内容となった。

セイコーエプソン 2025年度(2025年4月〜2026年3月) 連結業績
セイコーエプソンの𠮷田潤吉社長は、「第4四半期は、厳しい経済環境下においても、プリンティングソリューションズや、マイクロデバイスでは、需要を着実に取り込み、とくに、プリンティングソリューションズでは厳しく見た想定を上回る実績となった。また、米国関税によるコスト増の影響があったものの、為替のプラス影響が寄与している」と総括した。

セイコーエプソン 代表取締役社長の𠮷田潤吉氏
営業利益や当期利益などは、連結子会社であるFieryののれんの一部について、第4四半期に259億円の減損損失を計上したことにより、大幅な減益になった。
𠮷田社長は、「Fieryは、米国関税政策に端を発する商業印刷市場の投資先送り傾向を踏まえ、将来計画を保守的に見直した」と説明した。
Fieryは、商業・産業分野におけるデジタル印刷ソフトウェアソリューションを開発、提供している米シリコンバレーに本社を置く企業で、事業の約8割を北米市場が占めている。2024年12月に、エプソンとしては過去最大となる約845億円を投じて買収した。
「商業印刷および産業印刷の両領域における市場環境が想定よりも悪化した。売上収益の大半を占め、商業印刷の主力となるカットシート領域では、市場全体の減速に応じて買収時の想定を下回っており、2025年度の売上収益は前年度より、10%程度減少している。また、産業印刷領域は、新規顧客拡大は進展しているものの、業績への寄与には当初想定よりも時間を要している。これらの環境変化と、先行きの不透明性を踏まえ、急速な売上げの回復がないと判断し、事業計画と将来収益の見通しを変更した。減損テストにおいては、回収可能価額が帳簿価額を下回ったため、のれんの減損損失を計上した。かなり保守的に見ており、再度の減損が無いようにしている」と説明した。その一方で、「市況の悪化により、当初の想定よりもスタートラインが下がったが、Fiery自らは利益を出している。市場の数量減少の要因を除くと、Fieryの既存事業のプレゼンスや収益構造などに変化はなく、産業印刷領域でのデジタル化の進展という成長トレンドも継続している。シナジーの創出についても進展しており、中期的な成長ドライバーとしての期待に変化はない」と位置づけた。
世界は荒波、エプソンの2025年度業績を振り返る

2025年度 通期業績のセグメント別内訳

2025年度 通期業績の増減要因
2025年度のセグメント別業績は、プリンティングソリューションズ事業の売上収益は前年比5.0%増の1兆295億円、セグメント利益は同3.4%減の1206億円。そのうち、オフィス・ホームプリンティングの売上収益は前年比2.2%増の6952億円、事業利益は同6.9%減の595億円。内訳は、SOHO・ホームIJP(インクジェットプリンター)の売上収益は前年比2.4%増の5432億円、オフィス共有IJPの売上収益は前年比6.8%増の888億円となっている。
「SOHO・ホームIJPの本体は、販売施策の強化によって、新興国や北米で、大容量インクタンクモデルの販売が好調に推移した。インクはインクカートリッジの減少を大容量インクボトルと、オフィス共有IJPインクの増加が補い、第4四半期は前年同期並になった」という。
2025年度のインクジェットプリンター本体の年間販売台数は約1710万台。前年度実績の1660万台を上回った。そのうち、SOHO・ホーム向け大容量インクタンクモデルは約1370万台(前年度実績は約1310万台)。構成比は80%となった。大容量インクタンクモデルの出荷台数も過去最高となっている。また、SOHO・ホーム向けインクカートリッジモデルは約305万台(同315万台)、オフィス共有IJPは約35万台(同35万台)となった。
𠮷田社長は、「大容量インクタンクモデルの販売台数や価格は、社内計画を上回った。新興国でのプレゼンスが強い。また、懸念していた北米市場では積極的なプロモーションを行い、エプソンのプリンターの優位性が強まったと考えている。エネルギー価格の上昇に伴い、省電力であるインクジェットプリンターの経済合理性が高まると考えている。その点では、レーザープリンターよりも優位性がある。オフィス共有IJPでの販売強化につながっている」とした。
商業・産業プリンティングの売上収益は前年比11.6%増の3344億円、事業利益は0.3%増の611億円となった。そのうち、商業・産業IJPの売上収益は前年比13.9%増の2508億円、小型プリンターほかの売上利益は同5.1%増の836億円となった。新製品の販売効果があり、売上収益、事業利益ともに社内計画を上回ったという。

2025年度 Q4実績 リンティングソリューションズ事業(1)

2025年度 Q4実績 リンティングソリューションズ事業(2)

A4プリンターの市場推移。台数では北米を中心に堅調に推移している
ビジュアルコミュニケーション事業は、売上収益は前年比11.0%減の1814億円、セグメント利益は同57.8%減の123億円。プロジェクターの販売台数は前年比17%減の130万台となった。
「米国関税の影響に加え、在庫削減を進めたことで減益になった。プロジェクターの市場環境は引き続き厳しい状況が継続している」と指摘した。
マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業では、売上収益は前年比13.5%増の2061億円、セグメント利益は前年同期の32億円の赤字から、108億円の黒字に転換した。同セグメントのうち、マニュファクチャリングソリューションズの売上収益は前年比6.5%増の235億円、ウエアラブル機器の売上収益は前年比4.4%増の411億円、マイクロデバイスほかの売上収益は前年比11.9%増の1160億円、PCの売上収益は前年比37.0%増の284億円となった。
マニュファクチャリングソリューションズは、地域ごとに需要の濃淡がったものの、全体としては増収。マイクロデバイスほかは、水晶デバイスで、民生機器向けや基地局・ネットワーク向けを中心に増収となった。PCは、Windows 10のサポート終了に伴う需要の増加が大きな成長を支えた。

2025年度 Q4実績 ビジュアルコミュニケーション事業、マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業
2026年度通期(2026年4月〜2027年3月)の業績見通し
一方、2026年度通期(2026年4月〜2027年3月)の業績見通しは、売上収益は前年比2.6%増の1兆4500億円、事業利益は同7.4%増の900億円、営業利益は同73.5%増の860億円、税引前利益は同67.9%増の840億円、当期利益は同224.1%増の590億円と、増収増益を計画している。

2026年度通期(2026年4月〜2027年3月)の業績見通し

2026年度 通期業績見通しの増減要因
𠮷田社長は、「中東情勢に伴う世界経済への影響や、原油価格やエネルギー価格上昇への対応を進めながら、四半期ごとに着実に実績を積み上げる。各事業においては、2025年度第4四半期実績のモメンタムを踏まえ、成長戦略の実現に向けた取り組みを着実に進めていく。中期経営計画Phase 1の一年目として、基礎的な収益基盤や収益構造を作り、資本効率を改善し、稼げる体質を作ることを最優先する。成長に向けた事業基盤の変革を進める」と語った。
セイコーエプソンでは、2026年3月に、長期ビジョン「ENGINEERED FUTURE 2035」を発表。「プリンターのエプソン」から、「テクノロジーイノベーション×エンジニアリングのエプソン」への進化を標ぼうしている。実行計画として、2028年度を最終年度とする「中期経営計画Phase1(2026〜2028年度)」を策定しており、2026年度はそれに向けての第一歩を踏み出す1年となる。

今期は中期経営計画Phase 1の一年目

事業セグメントを見直し、位置づけを明確にした

事業セグメント別の業績見通し
2026年度のセグメント別業績見通しは、プレシジョンイノベーション事業の売上収益が前年比8.6%増の1820億円、セグメント利益は同13.6%増の500億円。そのうち、インクジェットソリューションズの売上収益は同11.5%増の700億円、マイクロデバイスの売上収益は同7.7%増の990億円、エプソンアトミックスの売上収益が同9.0%増の170億円とした。
「付加価値の高い産業用途の急成長市場に向き合っている事業群であり、最も高い売上成長、利益成長を期待しているセグメントである。2026年度は、能力増強や投資を進め、各事業で需要増の機会を捉え増収を見込む」とした。
インクジェットヘッドの外販などを行うインクジェットソリューションズは、主要市場である中国での回復を見込むほか、他の地域においても販売増加を想定。大型機や高生産機向けの拡販を推進する。「中国市場の低迷が影響していたが、これが回復する。また、お客様が海外需要の創出に向けた取り組みを進めている。エプソン自らも中国以外での販売拡大を進めている」という。
マイクロデバイスは、生産量の拡大により、データセンターやAI、高速通信、車載市場などの需要拡大に対応する。高性能やノイズが少ないハイエンドのマイクロデバイスに対する需要が高いという。また、エプソンアトミックスは、金属粉末事業の旺盛な需要に対して生産能力を増強する。

2026年度 通期見通し プレシジョンイノベーション事業
インダストリアル&ロボティクス事業の売上収益は前年比4.1%増の3100億円、セグメント利益は同18.8%増240億円。そのうち、商業・産業プリンティングの売上収益は前年比3.5%増の2840億円、ロボティクスの売上収益は同10.5%増の260億円を目指す。
「自ら需要創出を行いながら、Phase 2に向けて、さらなる成長を期待するセグメントとなる。これまで以上に、ハードウェア、ソフトウェア、サービスを組み合わせたソリューションを拡充する」と述べた。
商業・産業プリンティングは、プラットフォーム化したラインアップをさらに広げ、販売拡大に取り組むほか、ロボティクスは、市場競争力を強化した新製品をラインアップすることで、需要増の機会を捉え、着実な案件獲得を目指す。

2026年度 通期見通し インダストリアル&ロボティクス事業
オフィス・ホームプリンティング事業の売上収益は前年比0.8%増の6980億円、セグメント利益は同8.5%減の560億円。内訳は、SOHO・ホームの売上収益が前年比1.5%減の5410億円、オフィス共有の売上収益は前年比19.4%増の1060億円、オフィス・ホームその他の売上収益は6.1%減の510億円とした。
2026年度の販売台数計画は、インクジェットプリンター本体が約1720万台。そのうち、SOHO・ホーム向け大容量インクタンクモデルは約1410万台。構成比は82%にまで高める。また、SOHO・ホーム向けインクカートリッジモデルは約270万台、オフィス共有IJPは約40万台とした。
大容量インクタンクモデルは、景気動向の変化への耐性があると指摘。値上げにも許容があると見ている。
「大容量インクタンクモデルは、大容量と低消費電力、TCOの高さから、新興国を中心とした需要があり、それに応えていく。オフィス共有は、新製品の投入や積極的な販売活動を展開し、インクジェットプリンターの優位性を訴求していく」と述べた。
また、「オフィス・ホームプリンティング事業は、規模の経済を生かした安定的な収益基盤の中心として位置づけている。原油高や部材費高騰の影響を受け、利益率が悪化する環境のなかでも、オペレーションの効率化を進め、利益を確保する」と語った。

2026年度 通期見通し オフィス・ホームプリンティング事業
ビジュアル&ライフスタイル事業は、売上収益は前年比0.4%増の2520億円、セグメント利益は同18.2%増の200億円。ビジュアルプロダクツの売上収益は同2.5%増の1860億円、ウエアラブルプロダクツの売上収益は同2.2%増の420億円、PCの売上収益は同15.5%減の240億円とした。プロジェクターの販売台数は、前年並の130万台を目指す。
「オペレーションの効率化を進め、収益に貢献するセグメントと位置づけている。収益基盤の変革を確実に進める」とした。
ビジュアルプロダクツは、厳しい環境が継続するものの、欧州などの一部地域では、教育市場をはじめとして需要回復の兆しが見られており、ラインアップの最適化を進めるとともに、地域ごとに需要の掘り起こしを行うという。高輝度、高光束のハイエンドモデルでの差別化も図るという。また、ウエアラブルプロダクツは、販売を拡大しなから効率化を推進。PCは、前年度のWidows 10のサポート終了に伴う需要増からの反動を見込んでいる。

2026年度 通期見通し ビジュアル&ライフスタイル事業
中東情勢や米国混乱、今期も難しい局面
なお、同社では、部材費の高騰などへの対応として、一部製品で販売価格に反映したことも明らかにした。今後も、状況にあわせて価格転嫁を検討する考えも示している。
2026年度の通期見通しでは、貴金属やメモリ、原油高、輸送費の上昇などを織り込み、事業利益においては、部材および輸送費の変動で、250億円のマイナス影響を想定。価格変動では80億円のプラス影響を想定している。メモリの価格上昇による利益への影響は、2025年度第4四半期は3〜4億円のインパクトに留まっているが、2026年度通期では100億円以上になると想定している。
セイコーエプソン 執行役員 経営管理・DX本部長の繁村治氏「2025年10月以降から、メモリ価格の上昇のインパクトを織り込んできたが、2026年度は、第1四半期から第3四半期にかけて、徐々にインパクトが大きくなると想定している。一方で、調達については、2026年度の部材確保はできている」とした。
米国関税影響については、税率変更によって60〜70億円のプラス影響を見込んでいる一方、相互関税の違憲判決に伴う還付に関しては、時期未定のため通期予想には反映していない。
また、中東情勢の影響に関しては、「地域の販売会社は影響を受けている。だが、現地社員や顧客の安全を最優先している。全体として売上収益への影響は限定的である」(セイコーエプソンの繁村本部長)とした。
一方、セイコーエプソンでは、長野県飯田市で、自社施設によるバイオマス発電所の建設計画を進めていたが、2026年4月に事業化の中止を発表した。
再生可能エネルギーの安定的な確保および脱炭素の推進を目的に、2024年2月に計画を発表していたが、経済環境の変化に伴う、建設費、燃料費、人件費などが、想定を上回る上昇幅になる見通しであり、投資回収性が大幅に低下することを中止の要因にあげている。
𠮷田社長は、「地元の方々への丁寧な説明を行いながら、協議を進めている。セイコーエプソン全体として、事業を通じた環境負荷低減への取り組みは継続する」と語った。


営業利益や当期利益などは、連結子会社であるFieryののれんの一部について、第4四半期に259億円の減損損失を計上したことにより、大幅な減益になった。
𠮷田社長は、「Fieryは、米国関税政策に端を発する商業印刷市場の投資先送り傾向を踏まえ、将来計画を保守的に見直した」と説明した。
Fieryは、商業・産業分野におけるデジタル印刷ソフトウェアソリューションを開発、提供している米シリコンバレーに本社を置く企業で、事業の約8割を北米市場が占めている。2024年12月に、エプソンとしては過去最大となる約845億円を投じて買収した。
「商業印刷および産業印刷の両領域における市場環境が想定よりも悪化した。売上収益の大半を占め、商業印刷の主力となるカットシート領域では、市場全体の減速に応じて買収時の想定を下回っており、2025年度の売上収益は前年度より、10%程度減少している。また、産業印刷領域は、新規顧客拡大は進展しているものの、業績への寄与には当初想定よりも時間を要している。これらの環境変化と、先行きの不透明性を踏まえ、急速な売上げの回復がないと判断し、事業計画と将来収益の見通しを変更した。減損テストにおいては、回収可能価額が帳簿価額を下回ったため、のれんの減損損失を計上した。かなり保守的に見ており、再度の減損が無いようにしている」と説明した。その一方で、「市況の悪化により、当初の想定よりもスタートラインが下がったが、Fiery自らは利益を出している。市場の数量減少の要因を除くと、Fieryの既存事業のプレゼンスや収益構造などに変化はなく、産業印刷領域でのデジタル化の進展という成長トレンドも継続している。シナジーの創出についても進展しており、中期的な成長ドライバーとしての期待に変化はない」と位置づけた。
世界は荒波、エプソンの2025年度業績を振り返る


2025年度のセグメント別業績は、プリンティングソリューションズ事業の売上収益は前年比5.0%増の1兆295億円、セグメント利益は同3.4%減の1206億円。そのうち、オフィス・ホームプリンティングの売上収益は前年比2.2%増の6952億円、事業利益は同6.9%減の595億円。内訳は、SOHO・ホームIJP(インクジェットプリンター)の売上収益は前年比2.4%増の5432億円、オフィス共有IJPの売上収益は前年比6.8%増の888億円となっている。
「SOHO・ホームIJPの本体は、販売施策の強化によって、新興国や北米で、大容量インクタンクモデルの販売が好調に推移した。インクはインクカートリッジの減少を大容量インクボトルと、オフィス共有IJPインクの増加が補い、第4四半期は前年同期並になった」という。
2025年度のインクジェットプリンター本体の年間販売台数は約1710万台。前年度実績の1660万台を上回った。そのうち、SOHO・ホーム向け大容量インクタンクモデルは約1370万台(前年度実績は約1310万台)。構成比は80%となった。大容量インクタンクモデルの出荷台数も過去最高となっている。また、SOHO・ホーム向けインクカートリッジモデルは約305万台(同315万台)、オフィス共有IJPは約35万台(同35万台)となった。
𠮷田社長は、「大容量インクタンクモデルの販売台数や価格は、社内計画を上回った。新興国でのプレゼンスが強い。また、懸念していた北米市場では積極的なプロモーションを行い、エプソンのプリンターの優位性が強まったと考えている。エネルギー価格の上昇に伴い、省電力であるインクジェットプリンターの経済合理性が高まると考えている。その点では、レーザープリンターよりも優位性がある。オフィス共有IJPでの販売強化につながっている」とした。
商業・産業プリンティングの売上収益は前年比11.6%増の3344億円、事業利益は0.3%増の611億円となった。そのうち、商業・産業IJPの売上収益は前年比13.9%増の2508億円、小型プリンターほかの売上利益は同5.1%増の836億円となった。新製品の販売効果があり、売上収益、事業利益ともに社内計画を上回ったという。



ビジュアルコミュニケーション事業は、売上収益は前年比11.0%減の1814億円、セグメント利益は同57.8%減の123億円。プロジェクターの販売台数は前年比17%減の130万台となった。
「米国関税の影響に加え、在庫削減を進めたことで減益になった。プロジェクターの市場環境は引き続き厳しい状況が継続している」と指摘した。
マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業では、売上収益は前年比13.5%増の2061億円、セグメント利益は前年同期の32億円の赤字から、108億円の黒字に転換した。同セグメントのうち、マニュファクチャリングソリューションズの売上収益は前年比6.5%増の235億円、ウエアラブル機器の売上収益は前年比4.4%増の411億円、マイクロデバイスほかの売上収益は前年比11.9%増の1160億円、PCの売上収益は前年比37.0%増の284億円となった。
マニュファクチャリングソリューションズは、地域ごとに需要の濃淡がったものの、全体としては増収。マイクロデバイスほかは、水晶デバイスで、民生機器向けや基地局・ネットワーク向けを中心に増収となった。PCは、Windows 10のサポート終了に伴う需要の増加が大きな成長を支えた。

2026年度通期(2026年4月〜2027年3月)の業績見通し
一方、2026年度通期(2026年4月〜2027年3月)の業績見通しは、売上収益は前年比2.6%増の1兆4500億円、事業利益は同7.4%増の900億円、営業利益は同73.5%増の860億円、税引前利益は同67.9%増の840億円、当期利益は同224.1%増の590億円と、増収増益を計画している。


𠮷田社長は、「中東情勢に伴う世界経済への影響や、原油価格やエネルギー価格上昇への対応を進めながら、四半期ごとに着実に実績を積み上げる。各事業においては、2025年度第4四半期実績のモメンタムを踏まえ、成長戦略の実現に向けた取り組みを着実に進めていく。中期経営計画Phase 1の一年目として、基礎的な収益基盤や収益構造を作り、資本効率を改善し、稼げる体質を作ることを最優先する。成長に向けた事業基盤の変革を進める」と語った。
セイコーエプソンでは、2026年3月に、長期ビジョン「ENGINEERED FUTURE 2035」を発表。「プリンターのエプソン」から、「テクノロジーイノベーション×エンジニアリングのエプソン」への進化を標ぼうしている。実行計画として、2028年度を最終年度とする「中期経営計画Phase1(2026〜2028年度)」を策定しており、2026年度はそれに向けての第一歩を踏み出す1年となる。



2026年度のセグメント別業績見通しは、プレシジョンイノベーション事業の売上収益が前年比8.6%増の1820億円、セグメント利益は同13.6%増の500億円。そのうち、インクジェットソリューションズの売上収益は同11.5%増の700億円、マイクロデバイスの売上収益は同7.7%増の990億円、エプソンアトミックスの売上収益が同9.0%増の170億円とした。
「付加価値の高い産業用途の急成長市場に向き合っている事業群であり、最も高い売上成長、利益成長を期待しているセグメントである。2026年度は、能力増強や投資を進め、各事業で需要増の機会を捉え増収を見込む」とした。
インクジェットヘッドの外販などを行うインクジェットソリューションズは、主要市場である中国での回復を見込むほか、他の地域においても販売増加を想定。大型機や高生産機向けの拡販を推進する。「中国市場の低迷が影響していたが、これが回復する。また、お客様が海外需要の創出に向けた取り組みを進めている。エプソン自らも中国以外での販売拡大を進めている」という。
マイクロデバイスは、生産量の拡大により、データセンターやAI、高速通信、車載市場などの需要拡大に対応する。高性能やノイズが少ないハイエンドのマイクロデバイスに対する需要が高いという。また、エプソンアトミックスは、金属粉末事業の旺盛な需要に対して生産能力を増強する。

インダストリアル&ロボティクス事業の売上収益は前年比4.1%増の3100億円、セグメント利益は同18.8%増240億円。そのうち、商業・産業プリンティングの売上収益は前年比3.5%増の2840億円、ロボティクスの売上収益は同10.5%増の260億円を目指す。
「自ら需要創出を行いながら、Phase 2に向けて、さらなる成長を期待するセグメントとなる。これまで以上に、ハードウェア、ソフトウェア、サービスを組み合わせたソリューションを拡充する」と述べた。
商業・産業プリンティングは、プラットフォーム化したラインアップをさらに広げ、販売拡大に取り組むほか、ロボティクスは、市場競争力を強化した新製品をラインアップすることで、需要増の機会を捉え、着実な案件獲得を目指す。

オフィス・ホームプリンティング事業の売上収益は前年比0.8%増の6980億円、セグメント利益は同8.5%減の560億円。内訳は、SOHO・ホームの売上収益が前年比1.5%減の5410億円、オフィス共有の売上収益は前年比19.4%増の1060億円、オフィス・ホームその他の売上収益は6.1%減の510億円とした。
2026年度の販売台数計画は、インクジェットプリンター本体が約1720万台。そのうち、SOHO・ホーム向け大容量インクタンクモデルは約1410万台。構成比は82%にまで高める。また、SOHO・ホーム向けインクカートリッジモデルは約270万台、オフィス共有IJPは約40万台とした。
大容量インクタンクモデルは、景気動向の変化への耐性があると指摘。値上げにも許容があると見ている。
「大容量インクタンクモデルは、大容量と低消費電力、TCOの高さから、新興国を中心とした需要があり、それに応えていく。オフィス共有は、新製品の投入や積極的な販売活動を展開し、インクジェットプリンターの優位性を訴求していく」と述べた。
また、「オフィス・ホームプリンティング事業は、規模の経済を生かした安定的な収益基盤の中心として位置づけている。原油高や部材費高騰の影響を受け、利益率が悪化する環境のなかでも、オペレーションの効率化を進め、利益を確保する」と語った。

ビジュアル&ライフスタイル事業は、売上収益は前年比0.4%増の2520億円、セグメント利益は同18.2%増の200億円。ビジュアルプロダクツの売上収益は同2.5%増の1860億円、ウエアラブルプロダクツの売上収益は同2.2%増の420億円、PCの売上収益は同15.5%減の240億円とした。プロジェクターの販売台数は、前年並の130万台を目指す。
「オペレーションの効率化を進め、収益に貢献するセグメントと位置づけている。収益基盤の変革を確実に進める」とした。
ビジュアルプロダクツは、厳しい環境が継続するものの、欧州などの一部地域では、教育市場をはじめとして需要回復の兆しが見られており、ラインアップの最適化を進めるとともに、地域ごとに需要の掘り起こしを行うという。高輝度、高光束のハイエンドモデルでの差別化も図るという。また、ウエアラブルプロダクツは、販売を拡大しなから効率化を推進。PCは、前年度のWidows 10のサポート終了に伴う需要増からの反動を見込んでいる。

中東情勢や米国混乱、今期も難しい局面
なお、同社では、部材費の高騰などへの対応として、一部製品で販売価格に反映したことも明らかにした。今後も、状況にあわせて価格転嫁を検討する考えも示している。
2026年度の通期見通しでは、貴金属やメモリ、原油高、輸送費の上昇などを織り込み、事業利益においては、部材および輸送費の変動で、250億円のマイナス影響を想定。価格変動では80億円のプラス影響を想定している。メモリの価格上昇による利益への影響は、2025年度第4四半期は3〜4億円のインパクトに留まっているが、2026年度通期では100億円以上になると想定している。
セイコーエプソン 執行役員 経営管理・DX本部長の繁村治氏「2025年10月以降から、メモリ価格の上昇のインパクトを織り込んできたが、2026年度は、第1四半期から第3四半期にかけて、徐々にインパクトが大きくなると想定している。一方で、調達については、2026年度の部材確保はできている」とした。
米国関税影響については、税率変更によって60〜70億円のプラス影響を見込んでいる一方、相互関税の違憲判決に伴う還付に関しては、時期未定のため通期予想には反映していない。
また、中東情勢の影響に関しては、「地域の販売会社は影響を受けている。だが、現地社員や顧客の安全を最優先している。全体として売上収益への影響は限定的である」(セイコーエプソンの繁村本部長)とした。
一方、セイコーエプソンでは、長野県飯田市で、自社施設によるバイオマス発電所の建設計画を進めていたが、2026年4月に事業化の中止を発表した。
再生可能エネルギーの安定的な確保および脱炭素の推進を目的に、2024年2月に計画を発表していたが、経済環境の変化に伴う、建設費、燃料費、人件費などが、想定を上回る上昇幅になる見通しであり、投資回収性が大幅に低下することを中止の要因にあげている。
𠮷田社長は、「地元の方々への丁寧な説明を行いながら、協議を進めている。セイコーエプソン全体として、事業を通じた環境負荷低減への取り組みは継続する」と語った。
