立石さん(左)の指導で卓球を楽しむ利用者ら

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 障害者卓球(パラ卓球)の選手で、福岡市在住の立石アルファ裕一(ひろかず)さん(42)が知識や経験を生かし、市内のリハビリテーション施設で卓球教室を開いている。

 小さな球を追う卓球は、軽い運動のほか動体視力などのトレーニングにもなり、高齢者らが楽しみながら頭や体を動かす機会となっている。(手嶋由梨)

 「ラケットにチョンとあてるだけで大丈夫です」

 4月中旬、「整形外科スポーツ・栄養クリニック」(福岡市中央区薬院1)の通所リハビリ施設で、利用者が卓球を楽しんでいた。立石さんの助言通りにラケットで球を打ち返すと、拍手や歓声が上がった。

 卓球台は昨年5月、立石さんが自宅にあった台を寄贈した。同クリニックの武田淳也理事長(63)が卓球を活用したリハビリの可能性を検討していたところ、スタッフと立石さんが友人だった縁で知り合い、立石さんが寄贈を申し出た。

 立石さんは生まれつき脊椎の神経の一部がない二分脊椎症で、立位のクラスで世界選手権にも出場。つま先に力が入らず素早く動くことができないため、球や相手の動きを見て予測しつつ、腕を大きく伸ばすなど複数の動作を同時にこなすトレーニングを積んできた。その経験から「障害をどう補うかという発想は、リハビリにも役立つのではないか」と考えたという。

 これまでに3回の教室を開催。この日は、2人1組でタイミングを合わせて球を投げ合ったり、様々な方向に転がる球をキャッチしたりと、立石さんが考案したトレーニングも取り入れた。運動療法の専門家で、体幹を鍛えて姿勢や柔軟性を高めるピラティスを先駆的に導入した武田理事長は「卓球は動体視力や空間認知力を高められる。イメージ通りに体を動かす『モーターコントロール』の改善につながる」と評価する。

 利用者も小さな球を目で追いながら、集中した様子で取り組んでいた。61歳男性は「最初は思った通りにいかなかったが、楽しいのでまたやりたい」と話した。

 ボランティアとして参加した61歳女性は中学生のときから卓球を続けており、「卓球は長く取り組めるスポーツ。車いすの両親とも一緒にできたらうれしい」と話す。

 立石さんは「これまで色んな国際大会にも出場させてもらい、社会に恩返しがしたかった。卓球を楽しんでもらいながら、健康寿命の延伸につなげていきたい」としている。