失礼な「お客様サービス」よりAIが便利…!「問い合わせゼロ」の先にある悲惨な現実と「コンタクトデフレ」時代の生存戦略
企業への相談が無くなる時代
生成AIの進化によって、消費者が企業に問い合わせることなく問題を自己解決する「コンタクトデフレ」の時代が到来しつつあることをご存じでしょうか。
前編『「電話サポートのイライラ」はAIで解消…!大満足の経営者が落ちる「コンタクトデフレ」という地獄』で見て来たように、電話サポートに象徴される“イライラする顧客体験”はAIによって解消され、企業にとってもコスト削減という大きなメリットが生まれています。
しかしその一方で、企業と顧客の接点そのものが急速に失われていくという、より深刻な変化が進行しているのです。
この「顧客が企業にコンタクトしなくなる時代」に何が起きるのでしょうか。コンタクトデフレに企業はどう対処すべきかを考えていきましょう。
AIに学んだ顧客は、もうブランドに従わない
このコンタクトデフレが企業にもたらす危機は、もうひとつあります。
顧客自身がAIによって学習して商品知識が高まってくるのです。ですからこれまで漫然とブランドに依存して商品を使っていた消費者が、知識を持つことでブランドや商品をスイッチするようになります。
「残業を乗り切るエネルギーを摂取するにはタウリンよりもカフェインらしい」
とか、
「はみがきは成分がいろいろ入っているよりも、重曹で歯を白くしてくれる商品のほうがシンプルでいいかも」
とか、それが正しいかどうかはともかく、勝手に知識を増やして、生成AIのアドバイスをもとにこれまでと違う消費行動をとるようになります。
要するに3年後、企業から見れば、顧客が勝手に離脱するようになり、なぜ離脱したのか情報すらとれないという時代がやってきます。企業経営の視点でみればこれはコンタクトデフレが引き起こす恐怖です。
ではコンタクトデフレの時代に消費財メーカーや小売業者は何をすればいいのでしょうか?
顧客はもう戻らない…始まった“接点”の作り直し
アメリカ企業の事例を拾うと、彼らが始めていることは「顧客が自社に来る理由を管理する、ないしは創造する」のが対策となる基本戦略です。
これは厳密にいえばふたつの異なる打ち手です。
前者の「顧客が自社に来る理由を管理する」とは、購入後に顧客が自己解決できずにメーカーや小売業に頼らなければならない部分にフォーカスして、そこで顧客満足を向上させる仕事です。
たとえば紛失したカードの再発行手続きをするとか、購入した服をMサイズからLサイズに交換するとか、問い合わせた後に顧客が結局戻ってこなければならない手続きがあります。ここに投資をすることでコンタクトデフレのマイナスをなんとか帳消しにしようと考えるのがひとつの戦略です。
もうひとつ、後者の「顧客が自社に来る理由を創造する」というのは、コンタクトデフレでいなくなってしまった顧客に別の関心事を提示して戻ってきてもらうような打ち手です。
これは期間限定でキャンペーンをするというのが、ひとつのわかりやすいやり方です。
たとえばオンラインストアで購入した衣服のサイズを変更する際に、通常は返送の送料は顧客負担がルールだったとします。それを3か月だけキャンペーンで「店舗に持ち込んでもらったら商品交換できますよ」という新しいオファーをするのです。すると従来はコンタクトをあきらめていた層との接点が一時的に生まれます。
ないしはポイント交換で「今月だけはキャンペーンでポイントをアマゾンギフトカードに交換できます」といった提案をするのも有効です。こういったキャンペーンは生成AIが学習しているわけではないので、関心をもった消費者は再びあなたの会社にコンタクトしてくれます。期間限定であなたの会社が設定した仕組みに不満を持つ、声なき声が拾えるようになります。
コスト削減の罠…止まる企業は敗者となる
さて、話をまとめましょう。
これまでカスタマーサポートの部門は多くのB2C企業にとって「いかに低コストでお客様の不満解消と火消し対応をするか」が経営のゴールでした。
これからの年間で、その重荷に感じていたコストが8割がた激減します。物事の変化について深く考えていない経営者は、そのコスト減にほっとするでしょう。
しかし思慮深いライバル企業は違うかもしれません。コンタクトデフレで激減した顧客接点を違う方策でなんとか回復させることで、顧客からの信頼をプラスにもっていき、かつ商品やサービス開発への新しいインサイトを獲得しなければなりません。
それを経営課題だと考え、そこに投資をすることになるでしょう。
AIはこれからの3年で企業の経営環境を劇的に変えます。それはこのコンタクトデフレ現象のように、これまでの発想を180度変えなければならないような新たな経営課題を生むのです。
さらに連載記事『コストコ「安い神話」の崩壊は本当か…?徹底調査で見えた!日本の「インフレ構造問題」驚きの真実』でも、経営戦略の真相について語っているのでぜひ参考になさってください。
