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金融庁の調査によると、NISAの年間買付額は成長投資枠が約12.5兆円にのぼり、「最速で枠を埋める」意欲が過熱しています。一方で内閣府の調査では、39歳以下の約半数が「孤独」や「仲間の不在」を感じており、頼れる友人がいない人の7割が強いストレスを抱えている実態が浮き彫りになりました。本記事では、手取り23万円から年間150万円を新NISAに全振りし、親友の結婚式すら断ってしまった27歳女性の事例をもとに、行き過ぎた節約と投資が招く「後悔」を解説します。

新NISA「1800万円最速埋め」の思わぬリスク…20代で急増する過度な節約と孤立

2024年に開始された「新NISA制度」に伴い、非課税限度額である1,800万円の枠をいかに早く埋めるかという「最短攻略」が、世間で関心事となっています。

金融庁の「NISA口座の利用状況調査(令和7年12月末時点(速報値))」では、年間買付額のうち成長投資枠が約12.5兆円と、つみたて投資枠の約6.2兆円を大きく上回っており、一刻も早く多くの資金を市場に投じようとする投資家の意欲が数字として表れています。

しかし、この「効率性」の追求は、特に収入が限られる20代において、過度な消費抑制という形で生活に影響しています。

内閣府が公表した「満足度・生活の質に関する調査報告書(令和7年)」を見ると、若年層における「つながりの希薄さ」が客観的な数値として表れています。同調査において「自分は孤独である」「一緒に楽しめる仲間がいない」と日常的(ときどき以上)に感じている39歳以下の若年層は、男女ともに約半数(約50〜51%)にのぼります。

さらに同調査では、「社会とのつながり満足度」には「困ったときに頼りになる友人・知人の存在」が最も大きく影響しており、頼りになる人が「0人」の場合、強いストレス状態(K6スコア5点以上)にある人の割合が実に70%に達することが示されています。

将来の経済的な自立を目指すことは重要ですが、投資額を確保するために友人との食事や親友の冠婚葬祭といったリアルな交友関係まで切り詰めてしまうと、いざという時に頼れる仲間を失い、精神的な幸福度を大きく下げてしまう現実は、データからも懸念される深刻な問題といえるでしょう。

積立投資に憑りつかれるあまり、自ら「人とのつながり」を断ち切って後悔した20代女性の事例を見ていきましょう。

ランチはおにぎり2個…新NISAに全振りし、親友の「結婚式」を断った27歳

「大丈夫、30代のうちに1,800万円の枠を埋めきれば、あとは複利で勝手に増えて楽になれるから」

自分にいい聞かせるように呟くのは、都内で事務職として働くハルカさん(仮名・27歳)です。手取り約23万円から、家賃と最低限の光熱費を除いた「月10万円」とボーナスの全額を新NISAに回し、年間150万円近く投資をしています。

昼食は毎日、家から持参したおにぎり2個だけ。具材やふりかけを買うお金さえ惜しんで、味つけは塩のみという徹底ぶりです。友人からのお洒落なランチの誘いや、連休の旅行計画も、すべて「仕事が忙しいから」と嘘をついて断り続けてきました。

ハルカさんの手元にあるスマートフォンの画面は、半年前に落とした際の衝撃で蜘蛛の巣状に激しく割れています。文字を読むのも一苦労ですが、修理費用の3万円を払うくらいなら、それをS&P500のインデックスファンドに投じたい。その執念が、彼女にバキバキの画面を使い続けさせていました。

「将来、お金に困るくらいなら、今の我慢なんて楽勝」

そう信じて疑わなかったハルカさんですが、高校時代からの親友であるミサキさんから「結婚式の招待」の連絡がきます。

「親友の晴れ舞台を見たいけど、3万円のご祝儀は痛い……それに美容院代やドレス代もかかる。今は1万円だって惜しいのに」

ミサキさんの誘いに、ハルカさんは「本当にごめん、どうしても外せない出張が入っちゃって」と嘘をつき、出席を断りました。将来のために新NISAの枠を最速で埋めることを優先したのです。

「そっか残念。落ち着いたらまた遊ぼうね!」

ミサキさんの返信に罪悪感を覚えながらも、「これで投資額を減らさずに済んだ」と安堵し、節約生活を続けました。

親友の〈まさかのひと言〉で崩壊した投資の正論

ミサキさんの結婚式から数週間後。「引き出物のお裾分けを渡したい。お茶代は私が出すから」という誘いに負け、ハルカさんは久しぶりにカフェへ足を運びました。

ミサキさんは、目の前に座るハルカさんの姿を見て絶句します。着古した服、そしてテーブルに置かれたバキバキのスマートフォン。

「ハルカ、何かあったの? そのスマホ……どうして直さないの?」

「ああ、これ? 修理代もったいないから。私、今新NISAの枠を埋めるのに必死でさ。将来の資産形成のほうが大事でしょ?」

どこか誇らしげに語るハルカさんを見て、ミサキさんは悲しそうに言葉を紡ぎました。

「立派だね。でも……その枠が埋まったとき、一緒に喜んでくれる人は隣にいる? ご祝儀をケチって友達との縁を切って、ボロボロのスマホの画面を一人で見つめるのが、ハルカの望んだ生活なの?」

ミサキさんのその言葉は、ハルカさんが築き上げてきた「投資の正論」を打ち砕きました。

自分は、未来の自分を幸せにするために、今の自分を犠牲にしていたのではないか。ご祝儀の3万円をケチって失ったのは、親友の晴れ姿を祝うという「一生に一度の経験」と、かけがえのない「人とのつながり」でした。

「私、何やってたんだろう……」と呟き、ハルカさんの目からは涙が溢れ出しました。

「結婚式来てくれなかったのは悲しかったけど、私はこんなことでハルカと縁は切らないよ。たまには息抜きで遊んでね」

将来の安心を得るために、今という貴重な時間を削りすぎていた。そのことに、ハルカさんはようやく気づいたのでした。

[参考資料]

金融庁「NISAの利用状況の推移(令和7年12月末時点・速報値)」

内閣府「満足度・生活の質に関する調査報告書(令和7年)」