NASAとESAがハッブル宇宙望遠鏡打ち上げ36周年記念画像を公開 三裂星雲のクローズアップ
NASA(アメリカ航空宇宙局)とESA(ヨーロッパ宇宙機関)は2026年4月20日付で、ハッブル宇宙望遠鏡の打ち上げ36周年を記念して、いて座の方向・地球から約5000光年先の散光星雲「三裂星雲」(Trifid Nebula、Messier 20)の画像を公開しました。
ハッブル宇宙望遠鏡は1990年4月24日に、NASAのスペースシャトル「Discovery(ディスカバリー)」に搭載して打ち上げられました。毎年この時期には打ち上げを記念して、特別な天体画像が公開されています。
新たな星を生み出す宇宙の“ウミウシ”
今回公開されたのは、ハッブル宇宙望遠鏡の観測装置「WFC3(広視野カメラ3)」で捉えた三裂星雲の中心付近です。輝く星々を背景に、赤色やオレンジ色、青色で彩られたガスや塵(ダスト)が広がっています。

画像の左上に広がる青色は、塵が少なく、画像の視野外にある大質量星が放った紫外線によってガスが電離している部分。反対に、画像の中央に見える赤茶色をした部分はガスと塵が濃く集まっている場所で、NASAやESAはその形を海洋生物のウミウシにたとえています。
“ウミウシの頭”の左上から伸びている紐のような部分は、若い星から流出したガスが作り出す「ハービッグ・ハロー(Herbig-Haro)天体」という星雲状の天体のひとつで、「HH 399」と呼ばれています。つまり、ハービッグ・ハロー天体がある三裂星雲は、新たな星が誕生する星形成領域でもあるのです。
若い星は周囲のガスや塵を取り込んで成長するかたわら、その一部をジェット(細く絞られたガスの高速流)や星風として流出させてもいます。流れ出たガスは周囲の物質に衝突して衝撃波を形成しますが、この時に衝突した物質は励起されて光を放出します。この光を、私たちはハービッグ・ハロー天体として観測していると考えられています。
わずか29年間でも追跡できる星雲の変化
幅およそ4光年に相当するこの範囲を、ハッブル宇宙望遠鏡は1997年にも観測しています。当時搭載されていた「WFPC2(広視野惑星カメラ2)」の画像と今回の画像を比較すると、1人の人間が認識できる29年間という期間でも、この領域が変化する様子を目の当たりにすることができます。
こちらは、今回公開された2026年の画像と、1997年の画像を比較した動画。“ウミウシの頭”から伸びるHH 399や、その反対側に噴出したジェットの痕跡とみられるものが、たしかに変化していることがわかります。
【▲ ハッブル宇宙望遠鏡が1997年と2026年に観測した三裂星雲のクローズアップを比較した動画(Credit: NASA, ESA, STScI, J. DePasquale (STScI))】
30年以上にわたって観測を行うHSTのデータを比較することで、天文学者はジェットが膨張する速度を測定し、形成中の原始星が周囲の領域にどれほどのエネルギーを与えているかを詳細に分析することが可能になりました。
NASAやESAによれば、ハッブル宇宙望遠鏡は36年間で170万回以上の観測を実施しており、そのデータを利用して数多くの科学論文が発表されてきました。
2022年からは赤外線観測に特化したジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が科学観測を始めていますが、ウェッブ宇宙望遠鏡のデータと組み合わせられる可視光線や紫外線を捉えるハッブル宇宙望遠鏡は、宇宙の理解をさらに深めるための重要な役割を担い続けています。

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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