男性患者(左)を診察する大塚教授(岡山市で)

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 新型コロナウイルス感染症の後遺症として、記憶障害や集中力低下が起こる「ブレーンフォグ」の症状を訴える人の割合が増えているとの調査結果を岡山大病院がまとめた。

 新型コロナの法律上の位置づけが引き下げられてから5月で3年となるが、後遺症に長く苦しむ人もおり、きめ細かなケアが必要だ。(神戸総局 行成靖司)

オミクロン株の患者に「ブレーンフォグ」多く

 同病院は2021年2月、専門外来の「コロナ・アフターケア外来」を開設。大学病院として全国的にも早い取り組みで、26年3月までに20都府県の1233人を診察した。〈1〉日本で最初の感染者が見つかった20年に流行した「従来株」(120人)〈2〉21年夏から流行した「デルタ株」(140人)〈3〉22年以降に変異を重ねながら流行している「オミクロン株」(973人)――に分け、症状などを分析した。

 その結果、ブレーンフォグを抱える患者は従来株では15%、デルタ株では24%だったが、オミクロン株では37%となった。従来株の約2・5倍の割合だ。一方、後遺症の特徴といわれた味覚障害や嗅覚障害は、オミクロン株では各12%で、従来株の半分ほどだった。

 専門外来を担当する大塚文男教授によると、炎症が続いたり、ホルモンのバランスが乱れたりすることがブレーンフォグの原因とみられる。オミクロン株の患者にこの症状の割合が高い理由はわかっていない。

 感染から時間がたつと、後遺症の症状がなくなる人も多いが、同病院の専門外来には今も368人が通院。感染から5年以上たっている人もおり、長期化が懸念される。働いていた人の半数は休職や退職などを余儀なくされていた。抑うつ症状の悪化もみられた。

 新型コロナは23年5月、感染症法上の位置づけが引き下げられたが、感染の波は繰り返し、後遺症の患者も出続けているとされる。

 専門外来では、時間をかけて患者から経過を聞き取る問診を重視。検査結果も踏まえて診断するといい、大塚教授は「後遺症は身体、精神などの要因が複雑に絡み合って起こると考えられる。これからも患者さんの苦悩に伴走する姿勢が求められる」と話す。

 新型コロナの後遺症に対する「診療の手引き」の編集に携わった岡部信彦・川崎市健康安全研究所参与の話「後遺症には依然としてわからないことも多く、診療、研究の継続が重要で、岡山大病院の長期の取り組みは非常に貴重といえる。今後も患者一人ひとりに寄り添う診療を続けていただきたい」

 ◆ブレーンフォグ=医学的な用語ではなく、脳に霧がかかったように、頭がぼーっとする状態を指す。記憶障害や集中力低下のほか、頭痛などが起こることもあり、仕事や生活に支障を来す。詳細なメカニズムはわかっていない。

仕事に支障「公的支援を」…症状3年超の男性

 2022年の年末に新型コロナウイルスに感染した中国地方の男性(60歳代)は3年以上たった今も、ブレーンフォグに悩んでいる。漢字が頭に浮かばなかったり、簡単な暗算ができなかったりするという。

 感染から2、3週間で、せきなどの症状は改善したが、体調は戻らなかった。最初の違和感は、物忘れだった。たびたび、ロッカーに携帯電話を置きっ放しにした。認知症を疑って脳の検査を受けたものの、異常は見つからなかった。

 仕事をスムーズにできなくなり、定年の延長を断念して退職した。様々なことを調べ、昨年4月、岡山大の専門外来を受診。新型コロナ後遺症と診断された。自身に起こっていることの理由がわかり、ホッとしたが、治る見通しは立たない。薬を飲みながら、毎月2回、話したり、書いたりするリハビリを受けている。

 男性は再就職先を探しており、「仕事がないのは厳しい。私と同じように苦しんでいる人が他にもいると思う。公的支援があれば助かる」と話した。