ポストに届く「ニセ逮捕状」、高齢者ターゲットの新手の詐欺か…警察庁「逮捕状の郵送はあり得ない」
氏名・生年月日・罪名まで詳細に
警察官を装った「ニセ警察詐欺」を巡り、住宅の郵便受けにニセの「逮捕状」が送られる事案が各地で相次いでいる。
SNSをあまり利用しない高齢者らを狙った詐欺グループの新手の手口とみられる。受け取った人たちの一部は現金をだまし取られており、警察庁は「逮捕状の郵送はあり得ない」と注意を呼びかけている。(木村雄二、中部支社 藤江広祐)
78歳女性「見て背筋が凍った」
「犯罪収益の送金を受けたことで、あなたに逮捕状が出ている」。2月初旬、名古屋市緑区の女性(78)宅に、架空の「東京中央署」の警察官らを名乗る人物から電話があり、数日後、1通のレターパックが届いた。
愛知県警によると、発送元の住所は官公庁が集まる「東京都千代田区霞が関」。女性が開封すると、「逮捕状」と書かれたA4用紙が入っており、女性の氏名や生年月日、住所に加え、罪名の欄には「組織犯罪処罰法違反」と記載されていた。
捜査機関を装った詐欺グループとは、「定時連絡」と称した電話のやり取りが続いた。「資金調査」との言葉を信じた女性は、預金口座から現金計約2600万円を引き出すと、指示通り袋に入れ、2回にわたって自宅マンションの集合ポスト前に置いてだまし取られた。その後不審な出金に金融機関が気づき、県警に連絡して詐欺と発覚した。
「逮捕状を見て背筋が凍った」。女性は県警にそう説明し、悔やんだという。
県内では今年に入り、同様の相談や被害届が少なくとも34件寄せられた。逮捕状の多くは日本では使わない漢字が使われ、関東地方の消印が目立つという。同様の事例は今年に入り、新潟、兵庫、岐阜、三重など他の地域でも確認された。
昨年のニセ警察詐欺の被害額は約985億円(暫定値)に上り、SNS型投資・ロマンス詐欺を含む特殊詐欺全体(約3241億円)の約3割を占めている。若者をLINEに誘導し、ニセの逮捕状などの画像を送信して信じこませるのが典型的だ。
郵便受けに逮捕状を届ける今回の手口について、警察幹部は「SNSを利用しない高齢者らをだますため、犯罪組織が新たな手口を考案している」とみる。岐阜県内では今月上旬、住宅に届いた茶封筒に入ったスマホからLINEに誘導された高齢男性が、ニセ警察詐欺に遭って現金約600万円をだまし取られる被害も起きている。
警察庁の担当者は「警察官が対面せずに逮捕状を示すことはない。SNSや郵便で送りつけられても、慌てずに警察に通報してほしい」としている。
「検察官」名乗るケースも
郵便受けに「逮捕状」を入れる手口では、検察官を名乗るケースも確認されていることが警視庁への取材でわかった。
「あなた名義の携帯電話がマネーロンダリング(資金洗浄)に使われ、容疑者になっている」。3月、都内の70歳代女性の携帯電話に「総合通信局職員」を名乗る男から電話があった。
女性が戸惑っていると、電話を代わった男は「検察庁サイバー局の検察官」を名乗り、「捜査のため」と言って、女性の氏名や住所、生年月日のほか、銀行口座の番号や暗証番号を聞き取った。
男はその後、「あなたに逮捕状が出ている。写しを郵便受けに入れる」と伝え、通話を維持したまま女性に郵便受けを確認させたという。
中にあった茶封筒には1枚の「逮捕状(緊急逮捕)」が入っていた。女性の罪名は「犯罪収益移転防止法違反」で、記された逮捕日時は数時間後に迫っていた。
男は、「犯罪組織から報酬を得ていないか確認する」と言って、キャッシュカード1枚を郵便受けに入れて部屋に戻るよう指示。6時間以上にわたった通話はそこで終わった。
通話終了後、郵便受けを確認するとカードはなく、不審に思った女性が銀行と警察にすぐ連絡したため、口座からの不正出金は免れたという。(小松大樹)
