ルーキー評価は本当に正しいのか…スカウトの本音が示す“予想と現実のズレ”
開幕から約半月が経過した今年のプロ野球。昨年は多くのルーキーが活躍を見せたが、今年も戦力として機能している新人が目立つ。彼らの活躍は予想通りだったのか、それとも見立てを上回るものだったのか。スカウトの声をもとに、その実像を探ってみたい(成績は4月12日終了時点)。【西尾典文/野球ライター】
既にローテーションの一角
まず投手で際立った働きを見せているのが竹丸和幸(鷺宮製作所→巨人1位)だ。オープン戦から結果を残し、球団としては64年ぶりの開幕投手に抜擢された。阪神相手に6回1失点の好投で初勝利をマークする。続く4月3日のDeNA戦では5回3失点で敗戦投手となった。4月10日のヤクルト戦では5回2/3を1失点と試合を作り、早くも今季2勝目を挙げた。ここまで16回2/3を投げて自責点はわずか3、防御率1.62と安定感は際立っている。

竹丸の評価は、他球団スカウトの間でも一致している。
「体つきは社会人にしては細身で頼りない印象ですが、腕の振りは抜群で手元でボールが“ピュッと”来るので打者が差し込まれやすい。コントロールは緻密というほどではないですが、ストライクをとるのに苦労することはなく変化球も上手く操ります。開幕投手はさすがに驚きましたが、ある程度一軍でもできると思っていました。ただ社会人でも1年を通じてフルに活躍した実績はないので、疲れが出てストレートの勢いが落ちた時にどう対応できるかが重要ですね」(パ・リーグ球団スカウト)
昨年のドラフトで巨人は事前に1位指名を公言し、単独指名に成功している。左の先発投手を求めていたチーム事情を踏まえれば、この起用は狙い通りだったと言える。
投手でもう一人、順調なスタートを切ったのが毛利海大(明治大→ロッテ2位)だ。竹丸と同じく開幕投手に抜擢された。3月27日の西武戦では5回無失点の好投で初勝利をマークした。続く4月3日のソフトバンク戦では勝ち星こそつかなかったものの、7回2失点と先発としての役割を果たしている。
毛利に対する評価も、シーズン終盤を見据えたものだ。
「正直3年生まではあまり評価していませんでしたが、4年生になって明らかにボールの勢いが増しました。最終学年で一気に成績が良くなった(4年時は春秋合計で10勝0敗)のも納得できます。ロッテにとって2位まで残っていたのは幸運でしたね。一つ一つのボールは突出していませんが、緩急の使い方や投球術が巧みです。援護があれば勝ち星は積み上がっていくでしょう」(セ・リーグ球団スカウト)
ロッテは実績のある先発左腕が小島和哉しかおらず、その小島も連敗スタートとなっている。毛利はすでにローテーションの一角として計算に入っている。
守備面の底上げが不可欠
一方の野手で戦力として機能しているのが小島大河(明治大→西武1位)だ。キャンプで右太ももを痛めてファーム調整となったが、順調に回復して開幕一軍入りを果たす。プロ初打席で初安打をマークすると、その後は大半の試合でスタメンマスクを任されている。12安打、2本塁打、3打点、打率.267と打撃面で存在感を示している。
小島については、評価と課題がはっきり分かれている。
「バッティングは大学生の中でもトップクラスでした。ボールをとらえる感覚はある意味天才的です。ただキャッチャーとして見ると、すべてのプレーが一軍レベルでギリギリという印象です。西武は我慢して起用しており、小島もバットで応えています。環境としては恵まれていますね」(パ・リーグ球団スカウト)
4月1日のオリックス戦ではプロ野球ワーストタイとなる1試合3捕逸を記録した。正捕手として定着するには、守備面の底上げが不可欠だ。
ここまで挙げた3人は、事前の評価に見合う働きを見せている。一方で、見立てを上回るインパクトを残した選手もいる。平川蓮(仙台大→広島1位)だ。
オープン戦では12球団で2位となる打率.323をマーク。開幕から1番・センターに定着し、同点の2点タイムリーを放った。翌日には岡林勇希のタッチアップを本塁で刺す好返球を見せ、攻守で存在感を示した。
この急成長には、他球団スカウトも目を見張る。
「運動能力やポテンシャルの高さは評価していましたが、攻守ともに粗削りで時間がかかると見ていました。それだけに、いきなりあれだけのパフォーマンスを見せたのは想定外です。打撃は左右どちらでも対応できている。守備の安定感も増しました。スイッチヒッターで長打力がある点も魅力ですね。レギュラーとして定着すれば、広島にとって大きな戦力になるでしょう」(パ・リーグ球団スカウト)
3月31日のヤクルト戦の守備でフェンスに激突し、右肩を痛めて登録抹消となったが、順調に回復しており一軍復帰は近い。離脱後にチーム成績は下降気味で、復帰への期待は高まっている。
今回は4人の名前を挙げたが、昨年のドラフトで3球団が競合した立石正広(創価大→阪神1位)ら、出遅れている選手にも巻き返しの余地はある。今季もルーキーの出来が、ペナントレースの行方を左右しそうだ。
西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。
デイリー新潮編集部
