2度の離婚をした漫画家が、3度目の結婚相手と名乗る姓を「1度目の夫の名字」にした理由
2025年に公開されたドキュメンタリー映画『女性の休日』をきっかけに、「女性の休日PROJECT」が誕生。3月5日には、NewsPicks for WEとFRaUが共同で「女性の休日WEEK」の幕開けを飾るイベント「浜田敬子さん、鳥飼茜さん、能條桃子さんと『女性の休日』しませんか?日本をアイスランドに近づけるための大ブレスト会議」を開催した。
本記事では、トークセッション2に登壇した漫画家・鳥飼茜さんのセッションの様子を前後編にわたってレポートしている。
前編では鳥飼さんが2度の結婚と離婚で葛藤や違和感について語られたトークセッション前半の内容を紹介した。続く後編では、3度目となる結婚について。彼女が心地よいと感じるパートナーとの関係性について会場で語られた内容をお届けする。
3度目の結婚をした理由
セッションの終盤、司会者がこんな質問をした。かつての結婚で、苦い思いをした鳥飼さんが、それでも3回目の結婚を決めたのはなぜだったのか──。
「上野千鶴子先生には、『懲りない人ね』と言われました(笑)。
今回のエッセイを執筆するにあたってフェミニズムに関する本をいくつも読みましたし、いろいろな経験したからこそわかるのですが、フェミニズムの文脈で見た時、結婚という行為は敵なんです。でも本のタイトルにはどうしても結婚という言葉を入れたかったんですよね。結婚に希望を持っているんです。2度目の離婚が決まった時、私、あと何回結婚できるんだろうって考えたんですよ(笑)」
会場がどっと沸く。
「私は、結婚を“実験のようなもの”として捉えています。結婚は人類がずっとやってきたこと。きっと“いいもの”だと思うんですよ。この人となら死ぬまで一緒にいたいという祈りのような思いが制度化され、それが『結婚するなら名字も変えてね』など、ヘンな感じになってしまっている。私は、ひとつの概念として、純粋に結婚というものを、見てみたい。だから3回目の結婚を決めました。もちろん、誰も彼もが結婚をすべきだとは思っていません」
3度目の結婚相手と決めた名字
そして、3度目の結婚後、鳥飼さんの名字はどうなったのだろうか。
「現在のパートナーと一緒に、最初の夫の名字にしました。法律が変わって打ちひしがれていた時、小説家の金原ひとみさんに、『ムカつくんだけど』とLINEで経緯を伝えたんです。すると、『彼氏さんと鳥飼さんが一緒に一番目の夫の名字にするのはダメなの?』と返ってきたんですよ。さすがですよね(笑)。私も一度は頭をよぎりましたが、いや違うでしょと、すぐに打ち消しました。昔の男の名字になるなんて、思っても言えるもんじゃないじゃないですか(笑)。どうやっても言いづらいです。でも金原さんが言うのだから、それが一番の解のようにも思えてきてしまって(笑)。それに考えれば考えるほど、それがフェアな方法に思えてきたんですよね。これは信頼があるから言えることなのですが、一番目の夫は私にとってすでに霞のような存在なんです」
また会場が笑いに包まれる。最初の夫との間にもうけた子どもは、離婚後、10歳までは鳥飼さんが育てていたが、現在は父親である元夫と2人で暮らしている。
「結婚している時は腹立たしかったし、正直、殺してやりたいと思ったこともあります。でも結婚という概念をとりはらったすごくいい相手だったんですね。私がその人の名字に戻り、3番目の夫と一緒にその名字になるのは、誰もいない家に2人で入るようなもの。その戸籍には最初の夫もその家族も存在しません。そこで、現在のパートナーに、『空っぽの屋号に2人で入るってどうかな?』と聞いてみたところ、『それ面白いからやろう』って。すぐに快諾するとは思っていなかったので驚きました(笑)」
パートナーとの関係
現在のパートナーは、鳥飼さんが、「怖がらずに普通に本音で話せる存在」だ。
「今回のイベントのテーマである女性の権利に関する問題には、昔から関心を持っています。同調してくれなくてもいいので、パートナーとも話したいと思っています。これまでの結婚相手には、この話をしたら嫌がるかもしれないと、先まわりして考えてしまっていました。2度目の結婚相手には、最終的に話せる話題が、今日食べたごはんと明日の天気だけになっていて、それが普通だと思っていました。相手の機嫌を損ねたくなくて、相手にビビッて、自分をがんじがらめにしていたんです」
パートナーにしろ、友人関係にしろ、仕事にしろ、思ったことを怖がらずに言えるか、思ってもいないことを言わずにすむかということはとても大切です。それができている限り、人間はある程度平和でいられると思うんです」
そして、それが「自分を大切にすること」につながっていくと鳥飼さんは強調する。
最後に参加者から、「男性側の意識はどうしたら変えることができるのか」という質問があった。
「残念ですが、ある程度、年齢を重ねてしまうと変わることは難しいです。女性もそうですが、男性はよりその傾向が強いと思います。彼らが主体の文化を変える必要性がないですから。
ただ少しでも見どころがあると思った男性についてはあきらめて欲しくないです。その人を肯定してあげたいです。もちろんそれは、女性がケアワークをすべきだ、といったレベルの話ではなく。そして、見どころのある人には本音を言っていいと思うんですよ。女性は、こうしてほしいと思っている、ということをわかっていない男性は多いはず。それを知った上でどういった行動に出るかはその人次第。期待は捨てなくていいと思っています」
撮影/杉山和行
構成/笹本絵里(FRaUweb)
