イスラエル首相の側近で、次期モサド長官に就任予定のロマン・ゴフマン氏/Jonathan Ernst/Reuters/File

(CNN)イスラエルの諜報(ちょうほう)機関モサドの次期長官は、イランとの戦争を通じ同国の政権が急速に崩壊するとの確信を抱いていた。内部協議に詳しいイスラエルの関係者3人が明らかにした。しかし40日以上にわたる戦闘の後も、その見通しは実現しなかった。

現在はネタニヤフ首相の軍事秘書官を務めているロマン・ゴフマン氏は、計画協議の中でネタニヤフ氏に対し、イラン政権は転覆可能だと述べていた。これはゴフマン氏が今後率いるモサドも共有する見解だったが、結果的に楽観的すぎたことが判明した。

ゴフマン氏は6月、5年の任期でモサド長官に就任する予定。前任のダビデ・バルネア氏も、同じく戦争によってイランの体制を打倒できると考えていた。

​​2021年からモサド長官を務めてきたバルネア氏は、イラン戦争の発端となった今年2月28日の米国とイスラエルによるイラン空爆に至るまでの過程で、重要な助言役を担っていた。イスラエルの治安関係者2人が明らかにした。米紙ニューヨーク・タイムズの報道によれば、バルネア氏はネタニヤフ氏とトランプ米大統領に対し、イラン指導者の暗殺とその後の諜報機関主導の一連の作戦によって、イランの反体制派を動員できると進言。抗議活動や暴動を通じて政権崩壊を引き起こす構想を提案したという。

「政権交代は起こりうる結果であり、自分たちがそれを実現できるというのがモサドの立場だった」と、イスラエルの治安関係者の一人はCNNに語った。

情報筋によるとイスラエル国防軍(IDF)はこうした見解に懐疑的で、目標設定もより慎重だった。むしろ政権を弱体化させ、民衆蜂起の土壌を整えることをIDFは提唱していたという。「モサドが一連の約束を果たすことはなかった」と情報筋は述べた。

最初の攻撃で最高指導者のアヤトラ・アリ・ハメネイ師が殺害され、その後米・イスラエルがイランの軍事・政府インフラを破壊したにもかかわらず、イラン指導部の強硬路線に目立った変化は今のところ見られない。殺害されたハメネイ師の息子に当たる新たな最高指導者モジタバ師は父親よりも強硬派で、イラン革命防衛隊(IRGC)に近いとみられている。

ハマスの攻撃で重傷負う

49歳のゴフマン氏はベラルーシ生まれで、14歳でイスラエルに移住した。イスラエル国防軍機甲部隊に30年以上所属し、数々の前線および指揮官職を歴任した。

23年10月7日、イスラム組織ハマス主導の武装勢力がイスラエルを攻撃した際に重傷を負ったが、回復後はネタニヤフ氏の首席軍事顧問を務め、過去2年間、イラン、レバノン、ガザ、シリアを含む地域における主要な戦略および作戦上の決定すべてに関与してきた。ロシア語を話せるゴフマン氏は、ネタニヤフ氏とクレムリン(ロシア大統領府)との主要な連絡窓口でもある。

ネタニヤフ氏は昨年12月、ゴフマン氏をモサド長官に任命する意向を発表。モサド内部の他の候補者を抑えてゴフマン氏を選んだ。前例はあるものの、諜報機関内部ではなく軍から長官を選出するのはイスラエルでは異例となる。

任命に当たり、ネタニヤフ氏はゴフマン氏を「傑出した、大胆かつ創造的な将校。戦争を通して型破りな発想と驚くべき機略を発揮した」と評していた。

一方、ベテラン国防アナリストのアミール・オレン氏はCNNに対し、ゴフマン氏にはモサドで必要とされる情報収集、特殊作戦、他諜報機関との連携といった専門スキルに関する経験がほとんど、あるいは全くないと明らかにした。オレン氏はこれらのスキルについて、「他者を指揮する立場になるには何年も、おそらく何十年もかけて熟達していなければならない」と述べた。

ゴフマン氏は英語は話さないとみられる。オレン氏によれば、ゴフマン氏が選ばれた理由はネタニヤフ氏への忠誠心だという。

しかしゴフマン氏の任命手続きは、22年に起きたある事件をめぐる論争のため、数カ月間遅延した。当時IDF地方師団の司令官だったゴフマン氏には、オンラインでの影響力工作の一環として、10代の少年を使って機密情報を公開した疑いが持たれている。この少年はその後治安当局に長期間拘束され、機密情報を公開したとして告発された。その後本人の行動が承認されていたことが明らかになったため、起訴は取り下げられた。

タイムズ・オブ・イスラエル紙は、ゴフマン氏が当時、その少年の年齢を知らなかったこと、そして機密情報ではない情報を提供するよう指示しただけだったと述べていると報じている。

現在21歳になったこの少年はゴフマン氏の最も声高な批判者の一人となり、同氏のモサド長官任命に対して最高裁判所に不服を申し立てた。

CNNは、イスラエル首相府とIDFを通じてゴフマン氏にコメントを求めた。

バルネア氏の退任とゴフマン氏の任命が見込まれることで、ネタニヤフ氏は上記の攻撃を受けた23年10月7日から引き続き在任している最後のイスラエル高位当局者となる。ハマス主導のこの攻撃では、イスラエル史上最大規模の犠牲者が発生している。