パナソニックグループで家電事業やテレビ事業などを担当するパナソニックの代表取締役社長執行役員 CEOに、2026年4月1日付で就任した豊嶋明氏が、東京・五反田の同社本社において、合同取材に応じた。

豊嶋社長 CEOは、「2026年度からの3年間で、構造改革から成長へと転換し、成長への基盤づくりを進める。お客様に価値を届け、パナソニックのファンを増やし、中長期的に会社全体を成長させる。現状に甘んじることなく、さらに高見を目指し、未来起点で物事を考える組織にしていく」との方針を示した。

パナソニック 代表取締役社長執行役員 CEOの豊嶋明氏

また、「家電には、それぞれのカテゴリーを示す名称がついているが、まだ名前がない商品、名前をつけられないような商品を生み出していく。そこに挑戦していきたい」とし、新たな領域の商品創出に力を注ぐ考えを強調した。

パナソニックグループは、2026年4月1日付で、新たなグループ体制へと移行。それに伴い、家電を主体としたくらし事業および関連する商品、法人向けソリューションを展開する新たな事業会社として、パナソニック株式会社を発足した。

具体的には、旧パナソニック株式会社を発展的に解消し、同社のくらしアプライアンス社および中国・北東アジア社の主な事業を、承継会社とするパナソニック エンターテインメント&コミュニケーション株式会社に吸収分割を行い、同社の商号をパナソニック株式会社へと変更。冷蔵庫や洗濯機などのメジャーアプライアンス事業、美容・健康家電や家事・調理の小物家電などのスモールアプライアンス事業、デジタルカメラやテレビ、ヘッドホン、テレビドアホン、業務用映像音響システムなどのAVC事業、関連するデバイスや法人向けソリューション、自転車などの開発、製造、販売を行う。これらの商品を担当する事業部門のほか、国内外のマーケティング機能を集約し、アクションを加速するマーケティング部門、各CxOがリードする戦略機能部門を設置している。

売上高は1兆3700億円(2025年度見通し)、グローバル従業員数は4万1000人(国内約1万3000人、海外約2万8000人)。連結子会社は62社(国内11社、海外51社)となっている。

2026年4月1日付で、新たなグループ体制へと移行。そこで新たな事業会社として、パナソニック株式会社を発足

新会社の売上高と従業員数、拠点

「組織の階層を減らし、権限委譲を進め、組織の仕組みも変更した。フラット化、アセットライト化により、意思決定を迅速化し、アクションのスピードを高めることができる」という。

パナソニックでは、2025年までを「構造改革」フェーズとする一方で、2026年〜2028年を「成長への基盤づくり」フェーズと位置づけ、強靱な経営体質の構築、成長に向けた仕込み、価値づくりの改革、組織カルチャー改革に取り組む。

豊嶋社長 CEOは、「2025年度までの構造改革により、スリムでリーンな形となり、新たなスタートに適した形ができた。2026年度からは、成長への新たな基盤づくりを進める。新たな価値を作るためには、仕込みや投資が必要であり、経営体質の強化も必要である。これを3年間で強化する」と位置づけた。また、2029年〜2031年は、「再成長」フェーズとしている。

2026年度からは、成長への新たな基盤づくり。2029年〜2031年は、「再成長」フェーズとしている

社長 CEOに就任した豊嶋氏は、1970年9月生まれの55歳。1993年4月に松下電器産業(現パナソニック)に入社し、テレビ事業部に配属。品質保証からキャリアをスタートした。2013年4月にパナソニックAVCネットワークス社 パナソニックAVCネットワークスインド社長に就任。2017年4月にはパナソニックアプライアンス社ランドリー・クリーナー事業部トワレ・電気暖房事業 総括担当、2019年12月にパナソニックアプライアンス社 常務 スマートライフネットワーク事業部 事業部長を経て、2020年4月にパナソニックアプライアンス社 副社長 スマートライフネットワーク事業部 事業部長に就任。2021年10月には、エンターテインメント&コミュニケーション事業部 事業部長、2022年4月にはパナソニック エンターテインメント&コミュニケーション株式会社 社長として、テレビ事業の再編にも携わった。

パナソニックは、新体制でのスタートにあわせて、新たなミッションとして、「何気ない日常を、かけがえのない一日へ変えていく」を掲げ、ビジョンには、「進化し続ける創造力で、まだこの世界にないものを生み出す」を打ち出した。

「なにを成し遂げたいのか、どのようにお客様や世の中にお役立ちをしたいのか、従業員とともになにをやっていきたいのかを考えた。時代に流されるような言葉や横文字は使わずに、なるべく平易な言葉を使い、意味が伝わりやすいようにした。簡単な言葉ではあるが、そこに思いをしっかりと込めた」と、ミッションおよびビジョンへのこだわりを明かす。

ミッションでは、「冒頭に『何気ない日常を』という言葉を持ってきたのは、パナソニックが長年に渡り、提供してきたお客様の暮らしへのお役立ちをさらに強化するという姿勢を示すためである。日常に対して、新たな価値を作り、それを提供することで『かけがえのない一日へ変えていく』ことができる。365日がお客様にとって特別な日になるようにするためにお役立ちをする。そして、お役立ちの幅と深さを追求する。だが、現状の延長線上のままでは、新たな暮らしや価値を届けることができない。イノベーションを起こすことを念頭においてやっていく」と、ミッションの狙いを示した。

また、ビジョンについては、「すべてのことを学び、変化を恐れず、進化を続け、変化を前向きに捉え、変化を常態化していくことを、『進化し続ける創造力で』という言葉に込めた。モノづくりだけでなく、様々な観点で価値は創出できる。これを『創造力』という文字に集約した」としたほか、「これまで提供してきた価値だけに留まらず、パナソニックだからこそ生める価値を新たに作りたい。その姿勢を『まだこの世界にないものを生み出す』という言葉で表現した。家電には、名前が付いているが、まだ名前がない商品、名前をつけられないような商品を生み出していく。そこに挑戦していきたい。様々な検討を行っているところである」と述べた。

新会社のミッションとビジョン

豊嶋社長 CEOは、新たなカテゴリー商品の構成比などの数値目標は明らかにしなかったものの、「新しいものは積極的に増やしていく」と発言。さらに、「家電市場全体は横ばいを想定しているが、新たな価値を提供できる商品によって需要を喚起できる。とくに国内市場の需要喚起は、パナソニックがリードすべきだと考えている。世界にない商品により市場創造をしていくことで、売上げを伸ばしていくことになる」と語った。

また、「家電という定義で、ひとくくりにしてしまうと価値が伝わりにくくなる。家電には生活で利用する白物家電のほか、AVC、理美容家電があり、それぞれに価値を持ち、届ける価値も違う。体験価値を広げたり、行動が変わったりするようなサービスやソリューションを組み合わせることでも価値の提供の仕方が異なる」と前置きし、「家電はハードウェア単体だけではない。いま見えている家電だけでなく、そこに様々なものをプラスαすることで価値を広げていくことができる会社になりたい」と語った。

さらに、ワクワク感による「感動」と、ゆとりによる「安らぎ」が、パナソニックがお役立ちできる重要な2つの軸とも位置づけた。「日々の暮らしに新たな価値を生み出し、一人ひとりの日常や人生を、より豊かなものに変えていく、そのサポートができる商品やサービスを届ける」と意気込みをみせた。

今後の目指す商品、サービスの姿としては、「これまでは、優れた商品を作り、それを買ってもらうという顧客体験を提供してきたが、パナソニックが目指す価値は、つながり続けることで提供できる価値である。商品だけでなく、サービスや商品同士の連携、顧客接点そのものの価値のほか、パナソニックが実現する世界観やパナソニック自身の振る舞いも含めて、パナソニックのファンになってもらい、お客様に愛されるブランドに育てていきたい」と語った。

今後の目指す商品、サービスの姿。優れた商品だけの顧客体験ではなく、複数の強みを組み合わせた顧客体験の提供を目指す

ソリューション事業への取り組みについては、「暮らし領域においてもソリューションを伸ばしていきたい。そのためにソリューションに特化した組織を、戦略機能部門のなかに設置した。また、パナソニックは、家電だけでなく、BtoBにも事業を展開しており、プロ用カメラやプロ用オーディオ機器の納入だけでなく、ワンストップビジネスやリカーリングビジネスの観点からも提案を進めている。『ハードウェア+ソリューション』を提案していく」と述べた。

新たなパナソニックでは、これまで別々の事業体制としていた冷蔵庫や洗濯機などの生活家電と、テレビをはじめとするAVCを統合した体制にしたことが大きな変更点となる。

「数年に渡り、それぞれの強みを磨き上げてきた上で、生活家電とAVCを統合することになる。生活家電では、それぞれの地域において、生活に根づいた商品を投入する能力が高まった。AVCは、文化に対応し、世の中のトレンドに対応した商品をいち早く投入できるスピード感と軽さを持つことができた。生活家電が持つ深く入り込むノウハウをAVCに生かし、AVCのスピード感を生活家電のモノづくりに生かしたい。お互いに良いところどりをしたモノづくりを進める」と語った。

テレビ事業については、北米および欧州での販売を、2026年4月から、中国スカイワースに移管しているが、「これをしっかりとやり切ることが、テレビ事業を強くすることにつながる。変化が激しい市場に対応するためには、自社単独ではなく、様々なパートナーと組むことがポイントになる。この体制により、今後もテレビ事業を継続していくことができる」とした。

課題事業であったものの、立て直しの目途がついたとするキッチンアプライアンス(調理家電)事業については、「商品力を鍛えるために、中国チームの協力を得ながら、コスト力、調達力、市場投入のスピード力、差別化する技術力を高めている。これらを活用することで力強い商品を出せるようになっている。中国主導での開発力、生産力が備わっている」と語った。

また、中長期的な成長に向けては、「国内で足場を固め、海外で事業成長を加速する」との基本方針を打ち出した。

国内で足場を固め、海外で事業成長を加速する

日本においては、家電業界のリーディングポジションを確立することを目指す。「国内市場において確立しているイニシアティブをさらに強いものにし、お客様の価値づくりに向けて、できることを増やしたい」と発言。中国においては、中国発のイノベーションを生かすとともに、グローバル標準コストの採用による競争力強化を推進。外資系ブランドナンバーワンの実現を目指すという。東南アジアでは、それぞれの地域の暮らしにあわせた商品の強化、それを届けることができる販売基盤の整備を進めるという。

加えて、調達原価力の向上にも取り組む。調達では、中国や東南アジアなどを中心にした調達エリアの拡大により、グローバル調達機能を全事業に展開。これまでの電気部品やキーデバイスだけでなく、原材料、機構部品、電子デバイスや半導体にまで、グローバル調達の範囲を拡大するほか、品質では、顧客体験に貢献しない基準を撤廃するなど、品質規格や品質基準を見直す考えも示した。「新たなものを生み出していくためには、積み上げてきたノウハウ、知見を利用する一方で、将来届ける価値へとしっかりとつながるものに作り替える必要がある。現状のルールに留まるのではなく、見直しが必要な部分もある。また、ITシステムでは、非効率な旧システムの刷新により、オペレーションを効率化し、グローバル標準コストの推進と、レガシーの刷新で収益性と生産性を高める」と語った。

豊嶋社長 CEOは、パナソニックの強みとして、「信頼・品質・ブランド」、「くらしの知見・技術」、「多くの顧客接点」、「多様な人材」の4点をあげた。

「信頼・品質・ブランド」、「くらしの知見・技術」、「多くの顧客接点」、「多様な人材」がパナソニックの強み

「信頼・品質・ブランド」では、「商品を購入していただいたときの満足度だけでなく、商品に万が一、不具合があり、修理をしたといった場合にも、高い満足度を得ることができている。単に商品を作って売るだけでなく、購入していただいたあともつながり続け、一度、パナソニックブランドのファンになってもらったら、ずっとファンであり続けてもらえるための仕掛けづくりが重要である」と述べた。

「くらしの知見・技術」については、100年間に渡り蓄積してきた知見、技術を磨きつづけ、これを商品やサービスに落とし込むことができていることを強みにあげた。

また、「多くの顧客接点」としては、全国約1万5000店舗の地域専門店「パナソニックショップ」により、全国津々浦々をカバーし、リアルな接点を通じて価値を提供している強みに加えて、公式サイトやアプリ会員の獲得、全国約100カ所の自社サービス拠点を持っていることを示しながら、「これだけの規模で、お客様の生活に密着した形で、顧客基盤を持っているのは、家電業界ではパナソニックだけである。地域に根ざしたリアルの接点は重要であり、差別化できるポイントである。購入し、使い続けてもらうだけでなく、買い換えてもらうときにも、パナソニックならではの価値を提供できる。販売の接点だけでなく、買い替えの接点として、設置や修理といったサービスの接点でも、お役立ちができる。顧客接点は、今後、強化する方向で考えている。1万5000店舗を通じて、お客様の声を直接聞くことができる強みを生かして、困りごとを解決するための新たなサービスの提供、地域専門店に適した商品づくりも進めたい」と語った。

そして、「多様な人材」に関しては、「様々な部門から経験を持った社員が集まり、その知見を組み合わせることで、化学変化が起こることを目指す」とも述べた。

なお、中東情勢については、「様々な観点で影響が出ており、注視している。入手しにくい部品が発生したり、物流面での課題も起きたりしている。中東では、販売してきた商品を届けられる状況にない。長期化することも視野に入れて対策を考えている」と語った。また、中国市場においては、「チャイナリスクはあるが、これはチャンスにもなるだろう。両面を捉えて、中国での事業を進めていく」と語った。