『夫婦別姓刑事』©フジテレビ

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 すごいタイトルだ。『夫婦別姓刑事』(フジテレビ系)がスタートする。

参考:佐藤二朗&橋本愛が互いの魅力を語る 「俳優としての垢がついていない」「唯一無二の芝居」

 タイトルを見れば、多くの人が長らく議論になっている「選択的夫婦別姓制度」を連想するだろう。実際タイトルが発表された段階で、夫婦別姓に強硬に反対する集団から強烈なバッシングがあった。小原一隆プロデューサーは「いわゆる選択的夫婦別姓制度自体と本作はリンクしているわけではありません。また制度自体に賛成反対の立場を示す内容でもありません」と明言している(※)。

 この言葉をそのまま受け止めるなら、企画・原案の秋元康が得意とする「最近よく見る言葉をパッといただいたタイトル」なのだろう。ポケベルが流行れば『ポケベルが鳴らなくて』(日本テレビ系)を作り、近年ではコロナ禍の折に発表された『リモートで殺される』(日本テレビ系)というドラマもあった。まずはドラマを通じて夫婦別姓という言葉が多くの人に知れ渡ればいいと思う。

 いきなり真面目に語ってしまったが、本作は「コメディーと考察要素が交錯するミステリードラマ」(公式サイトより)である。秋元が企画・原案を務め、ブームを巻き起こした『あなたの番です』(日本テレビ系)以降、「考察ドラマ」の人気はまだまだ根強い。

 主演は、映画『爆弾』で日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞したばかりの佐藤二朗。原作・脚本・主演を務めた映画『名無し』の公開も控えており、ベテランだが今が旬の俳優とも言える。佐藤は2年半ぶりの連続ドラマ出演で、意外にも民放ゴールデン・プライム帯ドラマには初主演となる。共演の橋本愛はNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』で演じた蔦屋重三郎(横浜流星)の妻・てい役が高い評価を得たばかり。こちらも旬の配役と言っていいだろう。

 佐藤と橋本が演じるのは、東京・中野区の沼袋署の刑事、四方田誠と鈴木明日香。抜群のコンビネーションで事件を解決する二人は、実は夫婦だった。しかし、警察には「夫婦は同じ部署に所属してはならない」という暗黙のルールがある。発覚すれば、どちらかが異動になってしまうため、二人は「夫婦であることを隠す」ことを選ぶ――というのが大まかなあらすじだ。

 注目は、本作が初共演となる佐藤と橋本のコンビネーション。キャリア豊富な二人だけにどこかで接点があったのではと思ったが、今作が正真正銘の初対面なのだという。夫婦二人の掛け合いが肝であり、橋本によると夫婦二人がふざけ合っているだけで脚本4ページ分もある場面があったという。コメディー演技が得意で芸達者な佐藤に対し、「“THEコメディー”という作品を今までやったことがなかったので新たな挑戦」と語る橋本だが(※)、いつも的確な演技を見せてくれる橋本だけに心配は不要。二人がどんなバディぶりを見せてくれるか楽しみにしたい。

 夫婦であることを隠して一つの組織に所属するコメディーといえば、昭和からのドラマファンならある作品を思いだすだろう。岡崎友紀、石立鉄男主演の『おくさまは18歳』(TBS系)だ。密かに結婚した教師と生徒が夫婦であることを隠しながら学園生活を送るコメディードラマで、爆発的な人気を獲得した。

 やけに年が離れた夫婦(佐藤が56歳、橋本が30歳)なのも、『おくさまは18歳』へのオマージュと考えれば納得がいく(放送当時、岡崎は17歳、石立は28歳)。佐藤二朗は令和の石立鉄男なのだ。

 ちなみに岡崎の役名は「飛鳥」で、『夫婦別姓刑事』の橋本の役名は同じ読みの「明日香」である。現場の責任者(校長と署長)だけが秘密を知っているのも両作品に共通している。石立と大場久美子主演で、刑事と婦警が秘密の結婚をする『秘密のデカちゃん』(TBS系)というドラマも存在した。『おくさまは18歳』を現代にリブートして、考察要素をぶちこんだのが『夫婦別姓刑事』なのかもしれない。

 脚本は『毒島ゆり子のせきらら日記』(TBS系)で向田邦子賞を受賞した矢島弘一が担当。近年は吉高由里子が婦人解放家の伊藤野枝を演じた『風よ あらしよ』(NHK BS)、外国人差別と理不尽な入管制度を描いた『やさしい猫』(NHK総合)、中日ドラゴンズの元選手が企業で奮闘する『バントマン』(東海テレビ・フジテレビ系)などを手がけてきたが、もともとは劇団「東京マハロ」の主宰であり、コミカルなやりとりはお手のもの。

 考察ミステリを書くのは意外な気もするが、シビアな現実を描きつつも、どこかユーモラスで、「いつも弱い人の味方でありたい」と語り、観た後に希望を抱かせてくれる矢島の脚本は、刑事ドラマにぴったりだと言える。矢島とは旧知の佐藤二朗が「(この脚本を生み出すのは)大変だったんだろうな」と思いを馳せているほどの出来栄えということもあり、どのような作品になっているか期待して放送を待ちたい。

参照※ https://realsound.jp/movie/2026/02/post-2310137.html

(文=大山くまお)