バラエティを見限り、報道番組へシフト…業界トップ「日テレ」の方針転換で見えたテレビ業界の「深刻な現状」
例年4月2週目に入ると各局の新番組がスタートしていくが、今春は報道・情報番組の改編が際立っている。
フジテレビは『めざましテレビ』と『ノンストップ!』の放送時間を拡大し、61年間続いた情報・報道番組の放送枠が消滅した。一方、日本テレビは土曜22時台に24年ぶりとなる新報道番組を立ち上げたものの、発表から1か月以上が経過しても番組名や出演者が明かされないという異例の事態が続いていた。
業界関係者からは「もはやテレビは取り返しがつかないところに足を踏み入れている」との声も上がり始めた。早朝から夜まで報道・情報番組が占める"テレビのニュースメディア化"は休日のゴールデン・プライムタイムにも及び、改編期を経るごとに加速している。後編では、この流れが止まらない本質的な理由を掘り下げていく。
前編記事『いよいよ「テレビは終わり」なのか…業界関係者が明かす「今春のテレビ改編」で起きている異常事態』より続く。
冷めた目で見ていたテレ朝に追従
これまで日本テレビは「ドラマ軽視」と言われてしまうほどバラエティに注力して業界トップの座を守り続けてきた。
同局関係者と話していても、つい最近まで「ゴールデン・プライムタイムで報道・情報番組を放送するなどありえない」というスタンスで、狙いはスポンサー受けのいいコア層(主に13〜49歳)のみ。高齢層向けの編成を進めるテレビ朝日を冷めた目で見つめ、放送収入で大差を付けていた。
しかし、音楽番組『with MUSIC』をわずか2年で見切り、TBSとバッティングを承知の上で新たな報道番組を編成する。得意のバラエティにかげりが見えたことで、『CDTVライブ!ライブ!』(TBS系、月曜19時)の成功で復活の兆しを見せていた音楽番組をはじめたがうまくいかず、最後の手段として報道番組を選ぶようなニュアンスがわかるのではないか。テレビ朝日の関係者は「日テレはウチをさんざん揶揄していたくせにけっきょく同じことをやるのか」と話していた。
また、ある広告代理店の営業マンは「日テレが報道番組を選ぶと思わなかった」「もはや諦観の境地に近いのかもしれない」などと語っていた。「休日は楽しく見られるバラエティやドラマでCMを流したい」と考えるスポンサー企業は多いだけに、これ以上、土日夜の報道・情報番組が増えて喜ぶ人はほとんどいないのではないか。
テレビ業界は配信コンテンツが増え、スマートテレビの普及が進むなど、視聴率獲得が難しくなったことで、IP(知的財産)で稼がなければならなくなっている。さまざまなビジネス展開が可能なドラマやアニメはIPとしての価値が高く、各局は重視するようになったが、まだ放送収入に変わるほどの大きな成果はあげられていない。
だからこそ今なお視聴率に基づく放送収入を得ていかなければいけないのだが、その中心となるバラエティにあきらめのようなムードがただよっている。
実際、今春スタートのバラエティで知っているものはあるだろうか。
「土曜4つ」「日曜2つ」で飽和状態
ゴールデン・プライムタイムの主な新番組をあげていくと、日本テレビは『金曜ミステリークラブ!!!』(金曜19時)。TBSは『テレビ×ミセス』(月曜21時)、『プロフェッショナルランキング』(月曜22時)。フジテレビは『真剣遊戯!THEバトルSHOW』(月曜20時)、『超調査チューズデイ〜気になる答え今夜出します〜』(火曜19時)、『STAR』(木曜19時)、『かまいたちの瞬間回答!〜60秒でお悩み解決』(金曜21時)、『タイムレスマン』(金曜21時58分)をスタートする。
ここまで話題になっているのはMrs. GREEN APPLEの冠番組『テレビ×ミセス』くらいだろう。『オールスター感謝祭』(TBS系)などの改編期特番もドラマ出演者たちが盛り上げるのみで、バラエティの存在感は薄れてしまった。ニュースメディア化が進むことで、今後バラエティの存在感はますます薄れ、その結果クリエイターたちの流出が危ぶまれている。
そもそも「テレビの報道・情報番組で積極的な支持を得ているものはどれだけあるのか」と言えばあやしい。番組を問わず「テレビは信用できない」「偏向報道」「ネットの流用ばかり」「ミスが多すぎる」「コメンテーターの人選がおかしい」「毎日、天気か大谷翔平」などと批判されがちだ。
さらに「信じてもらえない」だけでなく、速報メディアとしても「ネットよりも遅い」とみなされ、自局スタッフとアナウンサーの負担増を不安視されるなど、報道・情報番組に向けられる視線は厳しさを増している。
バラエティで成功を収め、テレビ業界をけん引してきた日本テレビの方針転換はテレビ業界だけでなく広告代理店、スポンサー企業などにとっても影響が大きい。加えて番組名や出演者が一向に明かされないという異様な状況に他局のテレビマンたちも首をかしげている。
少なくとも今春以降、土曜は4つ、日曜は2つ、ゴールデン・プライムタイムで報道・情報番組が放送されることは確定。「テレビは夜の番組が面白くなくなった」ではなく、「テレビは土日の夜ですらニュースばかり」という印象がこれ以上進んだら、加速度的に求心力を失っていくのではないか。
もし「見たことがない報道・情報番組」「若者も引きつける報道・情報番組」というものがあって、それを放送できたら起死回生の一手になるかもしれない。業界の誰に聞いても、そんな希望の声は聞こえてこないが、毎日現場でもがき続けるスタッフは報われてほしいとも思ってしまう。
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