実際の症例写真。上・ビフォー、下・アフター…美容医療で“取ったあるもの”とは…

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 かつて「美容整形」といえば女性のもの、あるいは特別に美意識が高い層が受けるものというイメージが強かった。しかし、2026年現在、美容クリニックの景色は一変している。待合室では、多くの女性たちに混じって、男子大学生風の若者やスーツ姿のビジネスマンをみかけることも当たり前となった。今、日本の男性たちは何を求め、なぜ美容医療に踏み切るのか。人気クリニックの院長らへの取材をもとに、その最前線に迫る。

【写真】冒頭の男性の“アフター”写真 ほか 美容医療をした男性たちの症例集

20代では女性を上回る利用率に

 最新の統計データは、男性美容市場の爆発的な成長を如実に示している。日本美容外科学会(JSAPS)の調査によれば、2018年にわずか13%だった「美容外科を受診した男性患者」の比率は、2024年には30%に達している。

実際の症例写真。上・ビフォー、下・アフター…美容医療で“取ったあるもの”とは…

 さらに衝撃的なのは世代別の利用率。ホットペッパービューティーアカデミーによる2025年下期の調査では、20代の美容医療利用率において、男性が22.8%と、女性の21.7%をわずかながら上回るという逆転現象が起きているのだ。

 二重整形やクマ取りで豊富な実績を誇る「Hana Beauty Clinic」の古賀愛子院長は、「来院患者の約70%を20〜30代が占めている」と明かす。若い世代にとって美容医療は、すでに身だしなみの延長として定着しているようだ。

 同様に、「当院では、以前は4人に1人が男性でしたが、最近は3人に1人の割合まで増加しています」と語るのは、“自然な若返り”治療に定評がある「SOグレイスクリニック」の近藤惣一郎院長だ。

「増加の要因の一つには、『女性ばかりの待合室で居心地が悪い』といった心理的なハードルが、意識の変化から男性客が増加したことにより解消されてきたことも大きい」と近藤院長。同院の場合は、プライバシーに配慮した隠れ家的なクリニックのため、周囲の目を気にする男性にも多く選ばれているそうだ。

 近藤院長によれば、一般的には、男性患者の9割以上がレーザーや脱毛といった「非外科的治療」をまず初めは選択しているという。

「SNSで情報収集を行う彼らにとって、美容医療は『高度なスキンケア』という位置付けなのでしょう。まず脱毛や肌質改善から入り、加齢やコンプレックスの解消に応じて二重やクマ取りなどの外科手術を検討する、と段階を踏むのが一般化してきています」

疲れ顔はリスク。ビジネスマンが「クマ取り」に走る理由

 一方で、30代以降の中高年層、特に経営者や営業職の間では、美容医療は仕事を有利に進めるための武器という側面が強い。近藤院長は、来院理由の背景には、外見を整えることを「仕事のパフォーマンスを高める投資」と捉える意識があると分析する。

 古賀院長も、「オンライン会議で画面に映る自分の顔を見て、『老けた』と感じたという声や、妻に勧められて夫婦で来院されるケースも多く見受けられます」と現状を語る。

 この世代に人気なのは、シワやシミ、たるみの治療だ。なかでも、30代以降で需要が急増しているのが「目の下のクマ取り(脱脂)」である。30代から50代のビジネスマンが、15万〜50万円という費用をかけてでもこの施術を受けるのは、「クマによる疲れ顔や不機嫌そうな印象を解消して、快活で仕事ができる印象を手に入れたいというニーズが高まっているから」と近藤院長。

「ヒゲ脱毛」は入り口。男が選ぶ人気メニューと相場

 男性がまず門を叩くのは、約9割が選択する「美容皮膚科」の領域。入り口として定着している「ヒゲの医療脱毛」は1回1万〜数万円が相場。基本的に10回以上の継続が必要だが、清潔感の向上と髭剃り時間の短縮や肌ダメージの軽減というメリットがある。

 レーザーによるシミ取りも代表的だ。1回あたり数万円で、状態によっては継続的な治療が必要になる。

「最近では、身だしなみや清潔感を目的とした美肌治療(「ポテンツァ」や「ダーマペン」など)を受ける男性も急増しており、美容外科でなく美容皮膚科の領域であれば、男性の比率が3割を超えるクリニックも珍しくありません」(近藤院長)

 一方で、手術が伴う美容外科領域では、男性の比率は全体の10〜15%とまだ低め。

「その中で男性にいちばん人気なのは、メスを使わず医療用糸でまぶたを留めて二重を作るためダウンタイムが短い「二重埋没法」(7万〜20万円)。“眠そうな目をはっきりさせたい”“逆さまつげを直したい”“一重まぶたから二重になって、明るい印象にしたい”などといった動機が多いです」と話す。

 たるみが気になる層には、ヒアルロン酸や糸リフト(5万〜50万円程度)も選ばれている。近藤院長が推奨する注入治療の「レディエッセ」(8万〜12万円)は、5分程度の短時間で深いシワを改善し、輪郭をシャープに整えるため、注射で手術並みの変化を出せると忙しいビジネス層にも支持されている。

 さらに手軽な身だしなみとして同氏がオススメするのが「ほくろの除去」。

「ほくろやイボの除去は1個5000〜1万円程度ですが、数個取るだけで『肌がきれいになった』という印象を強く与えます」

 位置によっては印象に残ってしまいがちなほくろやイボ。そんなに少額で取れてしまうならば、美容医療の入門編としてスタートしてみてもいいかも?

知っておきたい「基礎知識と注意点」

 急拡大する市場の裏で、事前に押さえておきたい注意点もある。古賀院長は、男性患者は女性に比べて知識が乏しいケースが多く、「たった1回の治療で劇的に変わる」といった過度な期待を抱いている人も少なくないと指摘する。

「効果を出すために継続的な通院や、複数の施術の組み合わせが必要だとお伝えすると、『営業トークではないか』と警戒されてしまうこともあります。まずは先入観を捨てて、カウンセリングで、自分にどんな施術が必要かを、じっくり聞いていただきたいですね」(古賀院長)

 また近藤院長はコスト面でのアドバイスを付け加える。

美容目的の診療は公的医療保険が適用されない自由診療です。表記されている施術代のほかに、3万〜5万円程度の麻酔代がかかる場合もあります。一方で、症例写真の提供に協力することで、相場より20〜50%ほど安くなるクリニックも多い。賢く活用するのも手でしょう」

 令和の男性にとって、美容医療はもはやコンプレックスの解消だけに留まらない。「デキる男」として外見を整え、自信を保つ手段として、すっかり市民権を得たといえる。近い将来、美容医療を利用したことがないという人の方が、むしろ少数派な世の中がくるのかもしれない。

お話を伺ったのは……

SOグレイスクリニック
近藤 惣一郎院長
京都大学医学部卒業。医学博士。脳外科専門医として第一線で活躍の最中44歳で美容外科へ転身。美容外科専門医(JSAS)「切らない目の下のクマ・たるみ取り」の先駆者として知られ、脳外科医時代に培った緻密な技術を活かした“自然な若返り”に定評がある。東京・品川の閑静な住宅街に佇む一軒家にあり、経営者や著名人らの支持も厚い。大阪にも分院あり。「ロンリー侍ドクター」としてメディアでも活躍中

Hana Beauty Clinic
古賀 愛子院長
熊本大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院にて心身医学を学んだ後、大手美容クリニックにて年間数千件に及ぶ症例を担当。2024年9月より「Hana Beauty Clinic」院長に就任。心療内科医としての経験を活かし、外見の改善だけでなく、患者の心に寄り添う丁寧なカウンセリングをモットーとしている。

取材・文/荒木睦美

デイリー新潮編集部