友人は「年収1200万円・貯金300万円」なのに、住宅ローンを“全額借りる”そうです。少しでも「元金を減らす」ほうが得だと思うのですが“総返済額”はどれだけ差が出ますか?

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住宅を購入するとき、「頭金を多く入れたほうが得」と考える人は多いでしょう。実際、借入額が少なければ、その分だけ利息の支払いも減るため、総返済額は少なくなります。 しかし、貯蓄があってもあえて頭金を入れず「フルローン」を選ぶ人も少なくありません。例えば、年収1200万円・貯金3000万円という比較的余裕のある家庭でも、住宅ローンを全額借りるケースがあります。 本記事では、住宅ローンを全額借りる理由と、実際のシミュレーションをもとにその考え方を解説します。

基本的には頭金を多く入れたほうが総返済額は減る

住宅ローンは、借入額が少ないほど利息の負担が減るため、総返済額も少なくなるのが一般的な考えです。例えば、4000万円の住宅を購入する場合、1000万円の頭金を入れれば借入額は3000万円になります。借入額が少なければ、その分だけ支払う利息も少なくなるため、家計の負担は軽くなります。
そのため、一般的には「頭金を多く入れたほうが安全」と考えられることが多く、昔から住宅購入の基本とされてきました。しかし近年は、あえて頭金を入れずフルローンを選ぶ人も少なくありません。
 

フルローンを選ぶ主な理由

貯蓄があっても、あえてフルローンを選ぶ主な理由を見ていきましょう。
1つ目は、「手元資金を高い利回りで運用できる可能性」です。住宅ローンの金利が比較的低い場合、その資金を投資に回したほうが、資産が増える可能性があると考える人もいます。
2つ目は、「住宅ローン控除の最大化」です。住宅ローン控除は、年末のローン残高に応じて所得税などが軽減される制度のため、借入額が多いほど控除額も多くなる可能性があります。
3つ目は、「インフレへの対応」です。物価が上がる局面では、お金の価値が相対的に下がるため、固定金利で借りたローンの実質的な負担は軽くなるかもしれません。さらに、住宅ローンには団体信用生命保険(団信)が付いている場合が多く、死亡・高度障害などの場合にローン残高がゼロになる可能性があります。
 

頭金1000万円とフルローンのシミュレーション

それでは、「手元資金を高い利回りで運用できる可能性」について、実際に数字で比較してみましょう。今回は、4000万円の住宅を購入し、いずれの場合も住宅ローンの金利は2%、返済期間は35年、元利均等返済でボーナス返済はなしとします。
【1000万円の頭金を入れる場合】
借入額は3000万円となり、毎月の返済額は9万9378円、総返済額は4173万8760円です。
【4000万円をフルローンで借りた場合】
借入額は4000万円となり、毎月返済額は13万2505円、総返済額は5565万2100円です。
単純に比較すると、フルローンのほうが1400万円ほど総返済額は増える計算です。しかし、ここで頭金に使う予定だった1000万円を運用するとどうなるでしょうか。仮に年利3%で35年間運用できた場合、1000万円は約2814万円になります。
そのため、投資資産を考慮すると実質的な総返済額は約2750万円となり、1000万円の頭金を入れた場合よりもかなり少なくなるのです。
 

ただし運用次第ではフルローンが不利になることも

ただし、この考え方には注意点もあります。先ほどの例では年利3%で長期間運用できると仮定しましたが、投資には価格変動のリスクがあります。必ずしも想定通りのリターンが得られるとは限りません。
運用利回りが低かった場合、結果的には頭金を入れたほうが有利だったという可能性もあります。また、フルローンにすると毎月の返済額が増えるため、家計の余裕が小さくなる可能性もあります。将来の収入変動や金利上昇などのリスクも考慮する必要があるでしょう。
 

まとめ

住宅ローンは、基本的に頭金を多く入れるほど借入額が減り、総返済額も少なくなります。一方、住宅ローン控除の活用や資産運用、インフレなどを考慮し、あえてフルローンを選ぶ人もいます。例えば、頭金を投資に回して住宅ローン金利より高い利回りで運用できれば、結果的に資産が増えるかもしれません。
ただし、投資にはリスクがあり、必ずしもフルローンが有利になるとは限りません。住宅ローンの返済負担や将来の収入、資産運用のリスクなどを踏まえ、自分に合った資金計画を考えることが重要といえるでしょう。
執筆者 : 三浦大幸
2級ファイナンシャルプランニング技能士/日商簿記3級/第一種衛生管理者/証券外務員/英検2級など