EAA・BCAAは「減量中以外」は不要? 10万論文が暴いたサプリ摂取の驚きの真実【鍛え方の最適解がわかる 10万論文筋トレ】
EAA・BCAA は減量中以外は不必要
知っておきたい有効性と注意点
EAAとは、ヒトが体内で産生することのできない9種類の必須アミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン、リジン、トレオニン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)の総称です。血中のEAAレベルは筋タンパク質の合成率と強く関連し、経口EAAは、同じ量のタンパク質の摂取よりも筋タンパク質合成率を大きく促進することが明らかになっています。
2020年にアメリカ陸軍環境医学研究所が発表した論文では、EAAは比較的吸収の早いホエイプロテインと比較しても吸収速度が速く、約30分で筋タンパク質の合成率を上げることがわかっています。つまり、カロリー制限で体内の必須アミノ酸が減少しているきに、運動前にEAAを摂って筋肉に必須アミノ酸を補給すると、筋分解を最小限に抑えることができるため、減量期間中のEAAの摂取は筋分解の抑制にもつながります。
さらに、運動とEAAの組み合わせによって四肢の血流が増加し、それによって筋肉に送られるEAAが増え、効果量が底上げされるというデータもあります。EAAの筋肥大効果は、トレーニングによって大幅に向上することがわかっていますし、このような運動刺激がない場合でも、加齢や病気による筋分解を抑制できることが明らかになっているなど、トレーニーにとってEAAの摂取は不可欠のように思えます。しかし、このEAAは、摂取するタイミングや摂取方法でその効果が大きく変わり、摂取量によってはせっかくの効果がゼロになってしまうこともあるので、正しい飲み方を知っておくことが大切です。
食事+プロテインでEAAはすでに上限値
筋タンパク質の合成率を上げるためには必須のEAAですが、EAAによる筋タンパク質の合成促進は1.5g ~3gの少量で誘発され、15g ~18g の摂取で頭打ちになり、18g以上の摂取はほとんど意味がなくなることがわかっています。EAA18g がどれくらいの量かというと、ホエイプロテイン1食分にはだいたい5gのEAAが入っているため、通常の食事に加えてプロテインパウダーを摂取している場合は、それだけでほぼ必要量が摂れており、わざわざEAAを摂らなくても不足する心配はありません。
筋トレにBCAAは必要ない!?
BCAAは、バリン、ロイシン、イソロイシンという3種類のアミノ酸の総称で、バリンは疲労回復や集中力向上、ロイシンは筋タンパク質の合成を促進、イソロイシンはエネルギー効率を高めて持久力向上や疲労軽減に効果があります。
BCAAの効果については、10gのBCAAの服用で筋肉痛が大幅に減少したというデータ(2012年イギリス・ノーザンブリア大学の研究)や、BCAAによって筋 肉 の分解量が減少したというデータ(2010年アメリカ・チャールストン大学の研究)があり、実際に2015年頃までの研究では、BCAAは筋トレには必須のサプリメントとされていました。
しかし、2017年にアメリカのアーカンソー大学から発表されたレビュー論文で、「BCAAのみの摂取によって筋タンパク質の合成率は上がるどころか、逆に筋分解の比率が30%向上した」という衝撃の結果が発表されました。これは、BCAAの摂取によってその他のアミノ酸が不足し、新たな筋タンパク質合成のための他のアミノ酸が、筋肉を分解することによって補ってしまうことが原因だといわれています。
さらに、2015年までに行われたBCAAが有効とされたすべての研究において、プロテインパウダーを服用していなかったこともあり、BCAAの効果が見られるのは、タンパク質量が足りないときに限ることが明らかになりました。一般的なホエイプロテインにもBCAAが入っていることから、「日常的にプロテインを摂取している場合は改めてBCAAサプリを摂る必要はない」と結論づけています。
ただし、このBCAAの3種のアミノ酸は他の6つのアミノ酸とは異なり、肝臓ではなく筋肉で代謝されるという特徴があります。そのため絶食時に体内の栄養をブドウ糖に変換してエネルギー源とする「糖新生」が起こるようなときには、BCAAを摂ることで筋分解を最小限に抑えられるという効果があり、現在減量期で糖質を一切摂れないという場合には、BCAAの摂取は有効といえます。とはいえ、通常肝臓には十分な糖質が蓄えられており、1日程度断食しても筋分解は起こらず、プチ断食の際にBCAAを摂取したとしても意味はないことが明らかになっています。
【出典】『鍛え方の最適解がわかる 10万論文筋トレ』著:理学療法士・パーソナルトレーナー 論文男
【著者紹介】論文男(ろんぶんおとこ)
理学療法士。パーソナルトレーナー。現役理学療法士として、小児・スポーツ選手・高齢者のリハビリに従事する傍ら、13年以上の指導経験を生かし、科学的データに基づいたエビデンスレベルの高いトレーニング方法を発信。年間500本以上の論文を読み漁り、最新研究を現場で実践に落とし込む。YouTube 『論文で解決 ~筋肉と栄養を科学する』は登録者23万人以上。3児の父として、忙しいワーカー向けに最短で理想のボディを作るメソッドも開発。筋トレ・栄養・リカバリーを科学的に体系化した指導に定評がある。
