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感情は離れても、どうしても離れられないーーそんな男女の関係をまさに文字通り描いた型破りなホラー映画『トゥギャザー』が、ついに日本上陸! 2025年1月、最新インディペンデント映画の良作が集うサンダンス映画祭を大いにざわつかせた今作は、ボディホラーの“身体異変”と恋愛の“共依存”を融合させた前代未聞の異色作。超自然的な身体の変異現象に襲われた倦怠期カップルの運命が、サプライズとブラックユーモア満載でスリリングに描かれている。

主人公は、長年一緒に過ごしてきたミュージシャン志望のティム(デイヴ・フランコ)と小学校教師のミリー(アリソン・ブリー)。気持ちがすれ違いがちだった2人は、都会から田舎に移住して新生活をスタートすることに。しかし、森で道に迷い、不気味な地下洞窟で一夜を過ごした直後から、穏やかな日常が暗転。感情とは裏腹に、見えない磁力に引かれるように互いを求め合う奇妙な現象が、2人が育んできた愛と人生を侵蝕していく。

ギズモードでは、今作で長編監督デビューを飾ったオーストラリアのマイケル・シャンクス監督にリモートインタビューを実施。なんと監督自身の体験がインスピレーションとなったという奇想天外な映画の誕生秘話を聞いた。

ボディホラーの新境地を描いた話題作

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――『トゥギャザー』はホラー映画でありながら、ラブコメディのような要素もあって、とてもユニークな作品ですね。監督自身とパートナーとの関係から着想を得たと聞いて驚きました。

マイケル・シャンクス監督(以下、MS):僕とパートナーは約17年前から一緒にいます。つまり、大人になってからの人生に、彼女がいなかったことがないわけです。さらに一緒に住み始めると、同じ友だちと付き合い、同じことに興味を持ち、同じ物を食べて、同じ空気を吸っていることに気づきました。どこまでが自分自身でどこからが彼女なのか、境界線が曖昧になっていったんです。自分が一人の人間なのか、それとも、“新たなる全体の半分”になってしまったのか、ちょっとパニクってしまいました。

そこで、“もしもカップルがあまりにも親密になり、深く絡み合ったあげく、血肉まで共有するようになってしまったら?”というアイデアが浮かびました。そして、このテーマなら、自分の大好きなボディホラーというジャンルとして成立すると確信したんです。

――カップルが長く一緒にいると似てくる、という感覚は多くの人が共感できると思います。そのテーマをボディホラーとして描くという発想はとてもユニークですが、何かインスピレーションになった作品はあったのでしょうか?

MS:もちろん、ボディホラーというジャンルを語る上で、デヴィッド・クローネンバーグの名前を挙げないわけにはいきません。でも、この作品で最も影響を受けたのは、僕が一番好きな映画『遊星からの物体X』(1982)かもしれません。また、SF映画ですが『エイリアン』(1979)のボディホラー的な要素にも影響されました。

ボディホラー以外では、M・ナイト・シャマランの作品のカメラワークからもインスピレーションを得ました。それに、僕は黒沢清監督の『CURE』(1997)が大好きで、今作では編集のリズムにその影響が出ている部分があります。あとは漫画家の伊藤潤二さんの絵など、さまざまなものに影響を受けました。また、『スタートレック ファーストコンタクト』(1996)はメインストリームの映画ですが、子どもの頃に初めて出会ったボディホラーと言えると思います。

――ボディホラーのどんなところが好きなのですか?

MS:ボディホラーの素晴らしいところは、恐怖の対象が自分の内側に存在していたり、変貌していく自分自身だったりすること。それは誰もが経験することだと思います。僕らはみんな歳を取り、いつかは死ぬ。そして、自分や愛する人の体が衰えていくのを目にするのです。それは逃げ切ることができない、より現実的なホラーなんです。

まさに幸運! 実生活でも夫婦の名俳優が主演

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――主人公のティムとミリーは、実生活でも夫婦であるデイヴ・フランコとアリソン・ブリーが演じています。最初にオファーした時は、どのような反応でしたか?

MS:僕にとって『トゥギャザー』は長編デビュー作なので、まさかあんなに著名な俳優にオファーできるとは想像もしていませんでした。でも、僕が書いた「Hotel Hotel Hotel Hotel」という脚本が「ブラックリスト」に選出されたのをきっかけに、急にいろんな方から連絡をいただけるようになったんです。その中の一人がデイヴ・フランコで、初対面はZoomだったのですが、お互いホラーが大好きだとわかって意気投合しました。

デイヴは監督として『サイコハウス 血を誘う家』(2020)というホラー映画を手がけたことがあり、アリソンも出演していました。僕はその作品が大好きだったので、「脚本を送るので読んでいただけませんか?」と聞いてみたんです。あわよくば、「ぜひ出演したい。うちの妻のアリソンもどうかな?」なんて言ってくれたらいいな、と。でも、まさか実現するとは思っていませんでした。

ところが、24時間後には「ぜひ出演したい」と電話をくれたんです。さらに「アリソンも出演したいと言っている」とまで言われて、本当に驚きました。彼らはもちろん相性抜群ですし、今作に全力で挑んでくれて、ワイルドでありながら弱さもさらけ出してくれました。彼らが、初めて長編を手がけた僕とこの映画に寄せてくれた信頼の大きさは、今でも信じられないほどです。本当に素晴らしい経験でした。

――実際に一緒に仕事をしてみて、いかがでしたか?

MS:観客として観ていた映画に出演していた俳優と仕事をするなんて、気が遠くなるような話でした。でも、デイヴとアリソンは最も地に足のついた人たちなんです。エージェントからは、「デイヴとアリソンのおかげで、他の俳優と仕事をするのが大変になっちゃったね。ハリウッドであの2人ほど良い人は見つからないよ」と言われました。

今作は21日間で撮影しなければならず、彼らには毎日スタントをしてもらったり、プロテーゼで文字どおり合体してもらったりする必要がありました。撮影が終わる頃には、2人ともアザや傷だらけだったのですが、文句ひとつ言われなかったんです。彼らは共演を本当に楽しんでくれて、見ていてほっこりしました。

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――ティムとミリーというキャラクターには、監督とパートナー、あるいはデイヴとアリソンが、どのくらい反映されていると思いますか?

MS:ティムには僕の要素がたくさん詰まっています。そしてミリーには、僕のパートナーの要素が多いんじゃないかな。彼女はパートナーがちょっとポンコツでも、とても忍耐強い人だから(笑)。ティムとデイヴの共通点は少ないです。ティムは悲観的で、ちょっと暗くて、そこが僕っぽい。一方のデイヴは(犬の)ジャック・ラッセル・テリアみたいな人で、とても活発で情熱的。それはアリソンも同じなんです。

――実際の夫婦を演出してみて、メリットやデメリットはありましたか?

MS:彼らにはプロテーゼで結合してもらう必要があったので、まずは実用的な理由で非常に助かりました。予算の関係でプロテーゼを何度も取り外すことができない日もあり、トイレにもお互いを連れて行くしかなかったので、夫婦でなければ無理だったんです。それに演技の面でも、デイヴとアリソンは共演するのが大好きだと言っていました。お互いをよく知っているからこそ、不自然に感じた時は指摘し合えるからだそうです。彼らの直感は僕の意図や作品の方向性と完全に一致していたので、演出する必要はほとんどありませんでした。

――彼らが参加したことで、脚本に変更を加えた部分はありますか?

MS:当初はオーストラリアを舞台にした物語だったのですが、2人の出演が決まって舞台をアメリカに変更し、台詞もアメリカ英語にしました。また、デイモン・ヘリマンが演じたジェイミーという人物は、当初は年配の女性だったのですが、アリソンの提案で性別を変更したんです。そのアイデアが功を奏して、彼が恋愛上の脅威にもなり得るという設定が生まれました。ジェイミーが登場する序盤のシーンでは、そうした緊張感が感じ取れると思います。

作品の見どころ。そしてパートナーとの関係

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監督を務めたマイケル・シャンクス氏

――ホラー映画にラブストーリーやコメディの要素を取り入れるにあたって、バランスを取るためにこだわったことはありますか?

MS:僕にはコメディのバックグラウンドがあるのですが、今作は史上最高にシリアスなホラーにしようと考えていました。でも書き進めていくうちに、「ちょっと待てよ、この状況ってめちゃくちゃ面白いのに、なんだか不自然かも?」と思ったんです。バカバカしさを抑え込んでしまったら、正直ではないな、と。

この手の映画はいつだって深刻な状況から始まり、トーンが大きく変化することはないのですが、状況があまりにもとんでもないので、それ自体がコメディになります。『ザ・シンプソンズ』の昔のエピソードを観て育った人間として、まさにあのようなコメディ的な展開を目指していました。

――ミリーの「私たちは愛し合っているのか、利用し合っているだけか」という台詞には、ドキッとする人も多そうですね。

MS:僕にとっては、あれが今作の最も恐ろしいシーンです(笑)。きっと誰もが一度は考えたことがあるだろうし、自問自答して、どうするか決めなければならないわけです。ただ別れるのが怖いから長く付き合っているカップルっていますよね。広場恐怖症というか、外に出て行くのが怖いから、うまくいってなくても一緒にいる。それは恐ろしいことです。今作から超自然的な要素も身体的恐怖もすべて取り除いて、ただそのテーマを探求するだけで、本当にゾッとするような作品ができると思います。

――特に注目してほしいシーンはありますか?

MS:僕が特に誇りに思っているのは、中盤のトイレのシーンです。あのシーンは恐ろしくもあり、同時に恥ずかしくて笑えます。イギリスのテレビ番組『ピープ・ショー ボクたち妄想族』のようなイメージで、観客をどれだけ居心地悪くさせられるか、限界まで追い込もうと思いました。あのシーンは本当に誇りに思っています。

――撮影に苦労したシーンは?

MS:撮影が大変だったのは、夜の廊下のシーンです。実は最初にあのシーンを書いて、脚本を書こうと決めました。撮影期間は21日間だったので、毎日4〜5シーンを詰め込む必要があったのですが、あのシーンはとても複雑なCGIが必要だったこともあり、丸2日間かかったんです。他にも今作では視覚効果を駆使しています。これまで短編の動画などをたくさん手がけてきましたが、今回は初の長編映画だったので、「ドリーが使える!ケーブルが使える!」と天国にいるような気分で最高でした。

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――『トゥギャザー』というタイトルは、映画を観る前と観た後でイメージが変わりますね。最初からこのタイトルに決めていたのですか?

MS:僕はレディオヘッドのファンなので、当初は「Where I End and You Begin」(訳:僕が終わって君が始まる場所、2003年のアルバム『Hail to the Thief』収録曲)というタイトルを考えていたんです。でも、プロデューサーで友人のマイク・コワップに脚本を読んでもらったら、「タイトルは“トゥギャザー”がいいと思う」とメールをくれました。それで第2稿で『トゥギャザー』に変えたら、しっくりきたんです。今では会話の中で「トゥギャザー」という言葉が出るたびに、反応してしまうようになりました(笑)。

――今作を制作することで、パートナーとの関係に影響はありましたか?

MS:最初に彼女に今作のアイデアを伝えたとき、「そんな脚本を書くなんてムカつくけど、良いアイデアだから書くべきだね」と言われたんです。いつも彼女には最初に脚本を読んでもらうのですが、『トゥギャザー』にもたくさんの意見をくれました。この映画は僕のものであるのと同じくらい、彼女の作品でもあるんです。あのトイレのシーンも、彼女のアイデアだったんですよ。

この映画を作ったおかげで一緒にサンダンス映画祭に行くこともできたし、僕らは今作が自分たちの人生に与えた影響を誇りに思っているんです。本当に素敵な日々を過ごすことができて、今や赤ちゃんまで授かりました! 誰かと本当の意味で融合するということは、新たな天才を創造するということなのだと思います(笑)

Image: Ben King

――先ほど黒沢清監督の名前を挙げられていましたが、日本の文化に親しみはありますか?

MS:100パーセントあります。僕が12、3歳の頃、『リング』のアメリカのリメイク版が大ヒットしました。それをきっかけにオリジナル版の『リング』を観て、そこから『呪怨』や『仄暗い水の底から』、『WiLD ZERO』も観ました。

オーストラリアにはSBSワールド・ムービーズというテレビチャンネルがあるのですが、僕は夜な夜な、いろんな国の映画を観ていました。日本からはとんでもない作品が次々と出てくるので、本当に大好きで、何年も前からずっと繋がりを感じていたんです。それに子どもの頃は、ポケモンが現実だったらいいな、と思っているような子だったんですよ(笑)

――『トゥギャザー』も日本で公開を迎えましたね。

MS:とてもワクワクしています。来日できなくて残念ですが、サウス・バイ・サウスウエストで僕のヒーローである小島秀夫さんに会うことができて、とてもうれしかったです。日本には何度か行ったことがあって、ミュージックビデオを撮影したこともあるんです。

――誰のミュージックビデオを撮影したんですか?

MS:俳優/ミュージシャンのガイ・ピアースです。何年か前に彼と一緒にミュージックビデオを何本か製作したのですが、その中の1本を日本で撮影しました。僕らは東京へ行き、当時は新しかった4DViewを使って撮影しました。複数のカメラで撮影し、3Dデータを生成する技術です。

ちょうどガイがクリステン・スチュワートやニコラス・ホルトと共演した『ロスト・エモーション』という映画の撮影で日本に滞在していたので、それを言い訳に僕も便乗して日本で撮影したんです。まるで村上春樹の小説の中に迷い込んだようで、とても楽しかったです。

――最後に『トゥギャザー』を楽しみにしている日本の映画ファンに伝えておきたいことはありますか?

MS:『トゥギャザー』は僕と同じようにホラーが大好きな人はもちろん、ホラーが苦手な人にも楽しんでもらえると思います。確かに怖いのですが、すごく楽しいし、ちょっとロマンチックで、どこかバカバカしくもあって、最高のデート映画です。パートナーと一緒に観たら、絆が強くなるかもしれないし…ならないかもしれません(笑)。劇場で大勢の観客と一緒に観ると、ものすごく楽しいですよ!

『トゥギャザー』はTOHOシネマズ 日比谷ほか、全国で公開中。

Source: トゥギャザー