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2025年のテレビ各局は、いわゆる「フジテレビ問題」をきっかけに大きく翻弄され、「変わらざるをえなかった一年」だったといえる。

各局がコンプライアンス対応を一斉に強化する中、元TOKIOの国分太一さんら、長年第一線で活躍してきた芸能人が、表舞台からの「退場」を余儀なくされた。

たとえ番組への貢献度が高かったとしても、各局の内部調査でコンプラ上の問題が発覚すれば、所属事務所との十分な協議を経ることなく降板させる──。そうした判断が、もはや業界の「標準」になりつつある。

この流れは2026年も勢いを増すとみられる。さらに各局では「コンプライアンス違反の発生を未然に防ぐ」ための取り組みを水面下で本格化させ始めているようだ。

そこで、業界関係者の間でささやかれているのが「50歳リスク」というキーワードである。

●コンプラ崩壊時代を生きてきた50代

かつてのテレビ業界や芸能界のコンプライアンス基準は、現在の感覚から見れば、まるでデタラメだったと言っても過言ではないだろう。

「芸の肥やし」という言葉で、芸能人のモラル違反が半ば美談として語られることも珍しくなかった。

テレビ制作者の間でも「女を夢中にさせられないような人間に視聴者を夢中にさせる番組は作れない」といった乱暴な言葉が平然と飛び交い、むしろ「生活やモラルは破綻しているが、制作する番組は面白い」というタイプの制作者が重宝される風潮があった。

少なくとも20世紀のテレビ業界は、間違いなくそうした価値観のもとで回っていた、と筆者は記憶している。

こうした「いまの時代にまったく合わない倫理観」を前提にキャリアを積んできた世代が、だいたい「50歳以上」に該当する。

●「50歳リスク」とは何か

この世代の出演者は、いつ炎上につながる問題発言をするかわからない。過去の私生活を含め、思わぬスキャンダルが掘り起こされる可能性がある。

そして何より、古い価値観をアップデートしようとしない姿勢そのものが、リスクとみなされる。

その結果、「50歳以上の出演者は、なるべく起用しないほうが安全だ」という考えが、キャスティングの現場で定石になりつつある。これが業界で言われる「50歳リスク」と呼ばれるものだ。

振り返れば、国分さんも、中居正広さんも、いずれも50代前半だった。

●番組終了にささやかれる本当の理由

2025年は、長寿番組や人気番組の終了が相次いだ年でもあった。

各局は表立って理由を語らない。しかし業界内では「50歳リスク」を回避するために、終了を選択した番組が多かったのではないか、という声がささやかれている。

田原総一朗さんの問題発言を受けて、BS朝日『激論!クロスファイア』が10月19日に終了したことも、この流れと無縁ではないだろう。

どれほど優れた論客であっても、年齢を重ねる中で時代との意識のズレが生じ、結果としてコンプラリスクが高まってしまう。残念ながら、それは避けがたい現実でもある。

●バラエティ制作者たちは知っている

この潮流は、報道・情報番組に限った話ではない。バラエティ番組の現場でも、同様の空気が広がっている。

コンプラリスクが低いとみなされる一部のタレント(たとえばタモリさん、ヒロミさんなど)には、むしろオファーが集中する一方で、それ以外の50歳を超えたタレントに対して、局側が尻込みするケースが増えている。

バラエティの制作現場にいれば、タレントが日常的にどんな遊び方をしているのか、収録現場でどんな態度を取るのか、ある程度は見えてくる。パワハラを起こしそうかどうかも、経験を積んだ制作者には察しがつく。

そうしたタレントが出演する番組は、視聴率低迷など別の理由を表向きのものとして、静かに終了していくのだ。

●出演者だけでなく、スタッフにも「50歳リスク」

フジテレビ問題以降、テレビ業界が「面白さよりも安全を優先」する方向に傾くのは、ある意味で自然な流れだろう。

特筆すべきは、出演者だけではなく、50歳以上のスタッフの起用にまで慎重さが及び始めている点である。

かつては「私生活がデタラメだけど面白い」テレビ制作者が重宝されてきた。しかし、現在では「面白いけど私生活がデタラメ」な人物が中心となって作られた人気番組は、出演者に問題がなくても、リスク回避の観点から終了させたほうが無難とされる。

フジテレビでは、清水賢治社長の新体制のもと「コンプラリスクがありそうな人物は役員であっても排除する」という方針が打ち出され、実際に女性取締役が経費使用をめぐって辞任した。

漏れ伝わってくる話では、フジテレビだけでなく、「芸人を起用したお笑い系のバラエティ」は、今後さらに数を減らしていくのではないかとみられている。

●もう逆戻りすべきではない

テレビ業界が本質的な転換点を迎え、コンプライアンス対応を含めて「企業」として社会の標準に追いつこうとする動き自体は、歓迎すべきものだ。

たしかに遅すぎた感はある。しかし、その第一歩が踏み出された2025年は、業界にとって意義のある一年だったと言える。

それを引き継ぐ2026年は、安全策を優先するあまり、番組の面白さが犠牲になる場面も増えるかもしれない。

それでも、安易に逆戻りすることなく、改革を進めていくことこそが、正しい方向だと私は思う。

(テレビプロデューサー・鎮目博道)