約4万5000年前のネアンデルタール人が「よそ者の女性や子ども」を共食いしていた可能性

by Michael Brace
ネアンデルタール人は約40万年前に地上へ現れたヒト属の一種で、現生人類(ホモ・サピエンス)と長らく共存していたことや、複雑な文化を持っていたことなどが知られています。そんなネアンデルタール人が、「よそ者の女性や子ども」を共食いしていた可能性があるとの論文が、学術誌のScientific Reportsに掲載されました。
Highly selective cannibalism in the Late Pleistocene of Northern Europe reveals Neandertals were targeted prey | Scientific Reports

Neanderthals cannibalized 'outsider' women and children 45,000 years ago at cave in Belgium | Live Science
https://www.livescience.com/archaeology/human-evolution/neanderthals-cannibalized-outsider-women-and-children-45-000-years-ago-at-cave-in-belgium
19世紀後半、ベルギーのゴイエ洞窟群を調査した考古学者らが、101個ものネアンデルタール人の骨片を発見しました。これらの骨は約4万5000年前のもので、その多くには食肉処理された動物の骨に見られるような痕跡があったため、何者かがこれらのネアンデルタール人を食べたことが示唆されています。
今回、フランスのボルドー大学で考古学の博士研究員を務めるクエンティン・コスヌフロワ氏らの研究チームは、ゴイエ洞窟群で見つかった骨片の生物学的プロファイルを調査しました。
研究チームが解体された骨を可能な限り再構築したところ、断片化された骨が少なくとも6人のネアンデルタール人に由来することが判明。さらに骨の遺伝子解析により、6人のうち4人は青年期の女性で、2人は男児であることがわかりました。これらの女性4人に血縁関係はなく、平均的なネアンデルタール人の女性よりも背が低かったことも報告されています。
以下の画像は、ゴイエ洞窟群から出土したネアンデルタール人の骨を個体ごとに色分けしたもの。GN1・GN2・GN3・GN6と識別されている骨は青年期の女性で、GN4・GN5と識別されている骨は男児のものと判定されています。

ゴイエ洞窟群から出土した骨の同位体を調べた以前の研究では、これらのネアンデルタール人が死亡した場所とはまったく異なる地域で生まれたものの、お互いに同様の食生活を送っていたことが示されています。
研究チームは今回の研究結果と以前の研究結果を組み合わせて、ゴイエ洞窟群で見つかったネアンデルタール人の骨は、ある集団が別の外部集団をターゲットとして共食いを行ったことを示唆するものだと主張。論文では、「これは少なくとも、単一の隣接地域に属するひとつまたは複数の集団の弱者たちが、意図的に標的にされたことを示唆しています」と述べています。
コスヌフロワ氏は科学系メディアのLive Scienceへのメールで、「これらの個体が狙われた正確な理由は不明ですが、成体の女性4人と子ども2人という集団構成は、偶然とは思えないほど特殊です」とコメントしました。
これらのネアンデルタール人を食べたのが、同時代にこの地域に進出していた初期のホモ・サピエンスだったという可能性もあります。しかし、一般に初期のホモ・サピエンスにおける食人行為は葬送儀礼と関連してみられるのに対し、生存のための食人行為はフランスとクロアチアにあるネアンデルタール人の遺跡でも確認されていることから、ゴイエ洞窟群のネアンデルタール人を食べたのはネアンデルタール人である可能性が高いとのこと。

by Young Sok Yun 윤영석
ゴイエ洞窟群で見つかったネアンデルタール人らは、ホモ・サピエンスがヨーロッパへ進出し始めた時期にヨーロッパで生存していた、最後のネアンデルタール人の一部でした。研究チームは、以前は孤立していたネアンデルタール人の集団が別の集団に遭遇したことで、集団間に致命的な緊張が生じた可能性があると指摘しています。
共食いされたネアンデルタール人らがどのようにゴイエ洞窟群へたどり着いたのかはわかっていませんが、ゴイエ洞窟群で見つかった骨のほとんどが脚の骨でした。この点からコスヌフロワ氏は、「生きた人間を運ぶのは、死体や体の一部を運ぶよりもはるかに簡単です。彼らは生きたまま運ばれ、ゴイエ洞窟群の近くで殺されて、共食い集団が選別した部位のみを洞窟に置いた可能性が考えられます」と述べました。
