世界初の330km/h超モデル? ポンティアック・トージャン(1) ハイオク注げば900馬力
ファイヤーバードがベースのスーパーカー
「ラッセル・クヌーセンさんとお会いした時、時速206マイル(約331km/h)なんて嘘じゃないか、って伝えたんですよ」。テレビ番組の司会者で、1985年式ポンティアック・トージャンのオーナー、ポール・カウランド氏は笑う。
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「225km/hを超えると、驚くほど揚力が生まれるんです。でも彼は、243km/hを超えると元通りになるんだと、答えていました」。ちなみに、F40の最高速度が時速200マイル(約321km/h)を超えたと、フェラーリが公式に発表したのは1987年だ。

ポンティアック・トージャン・ツインターボ(プロトタイプ/1985年/北米仕様) マックス・エドレストン(Max Edleston)
1970年代後半に創業したクヌーセン・オートモーティブ社は、ゼネラル・モーターズ(GM)のGボディ・プラットフォームをベースに、クラシックカーのボディを架装。バロック・モーターカーズというブランドを立ち上げ、ある程度の成功を収めていた。
1980年代に入ると、少量生産のスーパーカーに需要があると判断。3代目ポンティアック・ファイヤーバードをベースにしたトージャンを開発し、受注生産で提供を始めた。
トージャンを公式に支援したGM ボディ後半は別物
面白いことに、GM側はトージャンを公式に支援した。一部のディーラーでは、ファイヤーバードと並んで販売されたほど。トランザムやフィエロを擁したポンティアックは、スポーティな位置付けにあり、イメージリーダーになる可能性を期待したのだ。
ファイヤーバードへボディキットを組んだ姿に見えるが、実際はフロントピラーから後方が大きく作り変えられている。スタイリングは、GMでデザイナーだった経験を持ち、初期のホットホイールを手掛けた、ハリー・ベントレー・ブラッドリー氏が担当した。

ポンティアック・ファイヤーバード(3代目/1982〜1993年/北米仕様) マックス・エドレストン(Max Edleston)
アメリカ中部のネブラスカ州に住むクヌーセンは、東部のカリフォルニア州を拠点とするブラッドリーと、数か月をかけてデザインを練った。現代的で斬新な姿を目指し、クヌーセンもスケッチへ加筆したという。
フロントグリルは、トージャンの2年後に発売されたA70型トヨタ・スープラに似ており、流れを先取りした処理といえる。リア周りはデ・トマソ・パンテーラの影響を隠さない。パネルは肉厚なFRP製で、ドアの隙間は均一に揃い、製造品質は高い。
希望へ応じ多様なアップグレードへ対応
サスペンションは、フロント側を大幅に改良。アライメントも変更され、トレッドが広げられた。ホイールのインセットも見直され、シャープな回頭性が目指されている。
ダンパーとスプリングは、トランザム用のWS6パッケージが標準になった。これには、クイックなレシオのステアリングにハードなアンチロールバー、リミテッドスリップ・デフ、前後のディスクブレーキが含まれていた。

ポンティアック・トージャン・ツインターボ(プロトタイプ/1985年/北米仕様) マックス・エドレストン(Max Edleston)
顧客の希望に応じ、多様なアップグレードにも対応。オプションは幅広く、ランボルギーニ・カウンタックのようなリアウイングを装備した例も存在する。合計136台が作られたが、これが素の状態というトージャンは存在しない。
エンジンは、5.0L V8気筒「クロスファイア」か、5.7L V8の「L98ユニット」が一般的なチョイスだった。しかし今回のトージャンには、遥かに特別な逸品が載っている。
331km/hの最高速度に達した?プロトタイプ
「もの凄いクルマなんですよ。(テレビ番組の)サルベージ・ハンターズを撮影している時に、発見したんです」。カウランドが微笑む。ドラマのナイトライダー以来、トランザムの大ファンになり、主役だった「キット」のレプリカも所有するそうだ。
BMW 635 CSiを探すタイトルの取材中、普通とは違うポンティアックの後ろ姿がチラ見えしたと回想する。近寄って確認してみると、直感した通り、トージャンだったという。2019年の出来事だ。

ポンティアック・トージャン・ツインターボ(プロトタイプ/1985年/北米仕様) マックス・エドレストン(Max Edleston)
しかも、タダモノではなかった。最初に作られたプロトタイプで、時速206マイル(約331km/h)の最高速度が主張された個体、そのものだった。
ツインターボで最高900psを発揮した5.7L V8
クヌーセンは、カスタムカー界で名を馳せ、ターボ化を得意としたゲイル・バンクス氏と面識があった。シボレー・コルベットで、1981年に最高速記録を樹立した人物だ。
そのコルベット C3のエンジンは、ボート用に開発された430cu.in(約7.0L)のV8ビッグブロックで、最高出力は1000馬力を超えていた。通常と大きく違わない見た目ながら、386km/hに到達していた。

ポンティアック・トージャン・ツインターボ(プロトタイプ/1985年/北米仕様) マックス・エドレストン(Max Edleston)
トージャンのプロトタイプ用に、クヌーセンはV8エンジンを依頼。彼はボート用の5.7L V8エンジンに2基のターボチャージャーとインタークーラーを装備した、特別なユニットを仕上げた。ハイオクガソリンを注げば、900馬力を超える出力が主張された。
バンクスは、それと同じエンジンを積んだトランザムで、時速206マイル(約331km/h)の最高速を達成していた。クヌーセンは、実際には試していないそうだが、トージャンでも同じ速度に到達すると考えたらしい。
この続きは、ポンティアック・トージャン(2)にて。
