「ダウンタウンの後継者は誰か」 2組の特異なところは「一緒の仕事でも相性が抜群」

浜田雅功が復活
5月10・11日に大阪・万博記念公園もみじ川芝生広場で行われた野外音楽イベント「ごぶごぶフェスティバル」にて、ダウンタウンの浜田雅功が久々に観客の前に姿を現した。体調不良のため3月から活動を休止していたのだが、5月2日に自身のラジオ番組で復活を果たしていた。そんな彼が前述の音楽イベントではステージに立ち、持ち歌を熱唱して会場を大いに盛り上げた。
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体調が心配されていた浜田が元気な姿で帰ってきたのは喜ばしいことだが、ダウンタウンを取り巻く状況はどんどん変化している。彼らの冠番組である「ダウンタウンDX」は6月で終了することが発表された。松本人志は週刊誌で性加害疑惑を報じられ、裁判に専念するために長期の活動休止に入って、テレビの世界から姿を消した。その後、浜田も体調不良で抜けてしまい、ダウンタウンのレギュラー番組でも2人が不在の状況が続いていた。

「ダウンタウンDX」に関しては、2人が揃わない状態では続けられないという判断が下されたのだろう。「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!」など、ほかのダウンタウンの番組に関しても終了するのではないかという噂が流れている。
松本のスキャンダルが深刻に受け止められている今、地上波への復帰は困難と見られており、「ダウンタウン」というブランドをテレビ局が使い続けること自体がリスキーであると判断されているのだろう。
ダウンタウンが抜けたことでテレビ界は彼らの代役探しに追われた。ダウンタウンや松本・浜田がレギュラーで出ていた番組には、代役としてほかの芸人が出ている。その中でも突出した存在感を持っていて「ポスト・ダウンタウン」の筆頭と言われるのが、千鳥とかまいたちの2組である。
たとえば、浜田が抜けた後の「ダウンタウンDX」では、さまざまな芸人が日替わりでMCを務める状態が続いているのだが、千鳥もかまいたちもその役目をこなしていた。
松本の代わりに大吾
松本がMCを務めていた「人志松本の酒のツマミになる話」は「酒のツマミになる話」とタイトルが変わり、松本の代わりに千鳥の大悟がテーブルの中心に座るようになった。また、TBSの大型特番「お笑いの日2024」では、ダウンタウンの代わりにかまいたちが総合司会を務めた。いずれも重要なポジションを担い、信頼を勝ち取っている。
それだけではない。千鳥とかまいたちはそれぞれ数多くのレギュラー番組を持ち、いまやバラエティに欠かせない存在となっている。しかも、彼らの特異なところは、それぞれが活躍しているだけではなく、2組で一緒に出る仕事も多く、そこでも抜群の相性の良さを見せているということだ。バラエティの歴史を振り返ってもこういうケースは珍しい。
「千鳥の鬼レンチャン」では、千鳥とかまいたちがスタジオでさまざまなチャレンジ系の企画のVTRを見て、芸人を中心とした出場者を容赦なくイジったり、ツッコミをいれたりする。4人が一体となって、ときにはお互いの足を引っ張り合いながら笑いを生んでいくスタジオの雰囲気は最高だ。
「火曜は全力!華大さんと千鳥くん」は博多華丸・大吉と千鳥の冠番組だが、かまいたちも実質的にレギュラー入りしている。ここでは彼らがゲストを交えてゲーム的な企画に挑戦する。少し先輩の華大が一歩引いた立場で場を締めて、千鳥とかまいたちがグイグイ前に出てきてお互いを激しく削り合う。何もないところからやり取りだけで即興で笑いを生み出している。
さらに、日本テレビではもともと「千鳥かまいたちアワー」というこの2組のレギュラー番組があったのだが、4月にはこれがゴールデンタイムに昇格して「千鳥かまいたちゴールデンアワー」となった。日本テレビのゴールデンタイムと言えば、最も大衆的で王道的な笑いが求められる枠だ。そこにこの2組が抜擢されたのは、明確な「次世代のエース」としてのテレビ局の期待の表れだ。さまざまな企画が行われ、この2組ならではの一体感のある笑いを生み出している。
芸人がテレビに出て人気者になると、教養番組、情報番組などお笑い以外の分野にも仕事が広がっていくことが多い。そういう仕事が増えていくと、お笑いの純度が薄くなってしまったりする。でも、千鳥とかまいたちは、それぞれがお笑いの要素の強い番組をたくさん抱えていて、そこで戦っている。それぞれが多数のレギュラー番組を持ちつつ、2組での共演では互いの魅力を増幅させている。
「ダウンタウンの後継者は誰か」と言われたら、そう簡単に決められるものではない。しかし、今のテレビ界で「千鳥とかまいたちの連合体」が果たしている役割の大きさを考えれば、彼らがポスト・ダウンタウンの最有力候補であると言っても過言ではないだろう。
ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。
デイリー新潮編集部