2027年に「GDPの2%」に達する防衛費予算を目指す岸田首相。2022年末には、与党に増税の検討を要請した(写真・共同通信)

 6月15日、岸田文雄首相(65)は、今国会での解散総選挙を明確に否定した。

 しかし、大手紙政治部記者はこう話す。

「今回、見送ったことで、岸田首相は再選をにらむ自民党総裁選が1年後に控える2023年9月にも、解散を決断する必要が出てきました。そのタイミングを逃せば、解散できないまま総裁選を迎え、岸田首相としてはほかの総裁候補を有利にさせることになるからです」

 数カ月後にはふたたび日本で“解散風”が吹き荒れるであろう。それは日本経済にも影響を及ぼす重大案件だ。経済評論家の杉村富生氏はこう話す。

「これまでの統計から見れば、勝率は100%です。ですから『選挙は買い』というジンクスがあるんです」

 解散総選挙のたびに、日経平均株価は確実に上昇してきた。21世紀に入ってからの衆議院総選挙では、7回すべてで解散前日から投票前々日までの間に上昇を記録している。2021年総選挙では約2.7%、2017年総選挙では約5.9%もの上昇だった。現在の3万3000円前後の日経平均で5%となれば、1650円ほど上昇することになる。

「選挙は買い」のジンクスは、その当時の政局や政策とも密接に関係している。

 そこで今回、杉村氏を含む4名の投資のプロに、岸田政権が増税してでも推し進める重要政策と照らし合わせて、“キシダノミクス” で上昇が期待される銘柄を選定してもらった。

 詳しくは、関連ページの表を参考にしていただきたい。経済評論家の木村佳子氏はこう話す。

「日本政府は2023年度からの5年間で、防衛費をこれまでの約1.6倍の総額43兆円に増額します。さらに『防衛装備移転三原則』の運用指針を見直して、兵器輸出の道筋をつけてきています。これらのことから、私は防衛関連銘柄に注目すべきだと思います」

 ほかの専門家も口を揃えたのが、防衛関連銘柄だった。三菱重工、NEC、日立製作所といった有名銘柄も多いが、木村氏は小型株で注目銘柄があるという。

「古野電気に注目しています。船舶用電子機器総合メーカーですが、防衛分野では『P-1(固定翼哨戒機)』の周辺機材を扱っています」

 防衛費増額は、その財源が議論されている。与党が提出した法案に対して、野党は「増税が前提になっている」と批判し、紛糾。現在も、参議院で攻防が繰り広げられている。

 岸田政権は「財源確保」の問題を抱えながらも、この1年ほどで多くの新政策を示してきた。この動向から注目銘柄を探るのは、カブ知恵代表取締役の藤井英敏氏だ。

「6月7日に、首相官邸のホームページに『骨太の方針』の原案が掲載されました。そこで大きく取り上げられている『少子高齢化対策』『グリーン環境エネルギー』『DXならびにマイナンバー』といったテーマは、関連銘柄も注目すべきだと思います」

「異次元の少子化対策」を掲げ、積極的に子育て支援施設などを訪問。年間3兆円台半ばの予算確保を指示した(写真・共同通信)

 藤井氏をはじめ、少子化対策でよく名前があがったのはJPホールディングスだ。

「子育て支援業界ではいちばんポピュラーな存在で、2023年3月期は増収増益なうえに、過去最高益を達成しています。学研ホールディングスが筆頭株主になっているのも注目ポイントです」(藤井氏)

 続けて、藤井氏が注目銘柄であげたのは川崎重工業だ。「ブルーインパルス」で使用される「T-4」を製造する同社が、防衛銘柄で注目されるのは容易に想像できるが、グリーン環境エネルギー事業でも期待がかかっているという。

「同社はエネルギー利用のために水素を長期間、安定して保冷した状態で海上輸送するための、運搬専用貨物タンクの技術開発が完了したことを発表したばかりなんです」

 このように“キシダノミクス”で、複数の恩恵を受ける企業はほかにもある。「兜町カタリスト」編集長の櫻井英明氏は、こう教える。

「6G通信や量子計算機に加えて、サイバーテロなどの防衛面でも注目されるNTT(日本電信電話)です。6月30日からは、これまでの1株が25株に分割されることで、個人投資家でも手を出しやすくなるでしょう」

 いま、全世界で注目を集める対話型AI「ChatGPT」だが、岸田首相はいち早く同AIを公開したOpenAI社のCEOと首相官邸で面会するなど、強い関心を寄せてきた。こうした、技術革新を前向きにとらえる政府の姿勢も注視すべきだろう。

「経済安全保障による“脱中国”の流れで日本の立ち位置を強化し、欧米などにも『日本をアジアの拠点に』とアピールしたい、政府の意図が見えます。半導体受託製造の最大手・台湾積体電路製造(TSMC)も現在、工場を建設中の熊本県に、第2工場建設を計画していることを明らかにしました。

 こういった流れを受けて、キシダノミクス銘柄ではあげませんでしたが、技術者派遣企業の老舗・アルトナー、熊本に拠点を造った製造業向け派遣大手・日総工産にも注目しています」(前出・木村氏)

 ここまで紹介してきた「恩恵銘柄」は有名銘柄も多く、1単元(購入する上で最小限の株数)あたり数十万円から100万円超のものがしばしば。では、資金力が豊富ではない個人投資家ができる「買い」とは。前出の櫻井氏が話す。

「ETF(上場投資信託)も考えてみましょう。日経平均レバレッジ上場投信(1570)の購入か、7月から始まる新指数『JPXプライム150』を原資産とするETFを今後、探してもいいと思います」

“検討使”と揶揄され続けた岸田首相の判断に、今後も注目が集まる。最後に杉村氏はこう忠告する。

「解散の場合、投票日までは“買い”。そこでうまく利益を望むなら、仕かけを早くするしかありません。投資の世界では『遅れたものは悪魔の餌食』と言いますからね」

 就任当初、金融所得課税強化などを表明し、市場では株価急落の“岸田ショック”が起きていた。またも首相の決断で、右往左往することになるのかも。いずれにせよ、投資は自己責任で!