(写真:アフロ)

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花粉症」のつらい症状との闘いがまもなく始まる。環境省は昨年末、この春の花粉の飛散量は「関東などでは過去10年で最も多くなる」との予測を発表し、早めの予防を促している。

花粉症は花粉が原因で引き起こされるアレルギー性の病気で、くしゃみ、鼻水、鼻詰まりのほかに「目のかゆみ」を訴える人が多い。

「目がかゆいからといって、目をこすったり洗ったりする行為はかえって目を傷めてしまうのでNGです」

そう注意を促すのは、『世界一の眼科外科医がやさしく教える視力を失わないために今すぐできること』(主婦の友社)の著者で、深作眼科院長の深作秀春さん。

深作院長は総計20万件以上の手術実績があるスーパードクター。これからの季節、花粉症がきっかけで重大な目の病気を発症する患者が増えてくるという。

「花粉による目のかゆみ、充血、目やにが出るといった症状は、アレルギー性結膜炎なので、眼科で医師の診察をしっかりと受けて、症状に応じた点眼薬などで症状を改善させていくのが基本です。ところが、間違った対処法や目のケアで、症状をかえって悪化させてしまう人が多いのが現状。病院にかからず、かゆみを我慢して目をしょっちゅうこすると、網膜剝離や白内障になることがありますので、違和感を覚えたらすぐに眼科にかかることをお勧めします」(深作院長・以下同)

網膜剝離とは眼球の内側にある網膜という膜がはがれて、視力が低下する病気。また、白内障は目の中のレンズの役割をしている水晶体が白く濁り、視力が低下する。いずれも手術が必要になる。 深作院長が花粉症で「目のかゆみ」がある人の陥りがちなNG習慣を教えてくれた。

【1】花粉を流そうと水道水や洗眼液で目を洗っている

目にホコリなどの異物が入ったときは洗い流すしかないが、外出先から帰ってきて、洗面所でうがいのついでに“目の洗浄”を行うのは、危険だそう。

花粉症対策で、カップに入れた洗眼液で目を洗う製品が出てきたときは冗談かと思いました(笑)。目は、開いているときは常に外界と接触している繊細な臓器で、目を防御しているのは“涙”なのです。涙は、油層と水層、ムチン層の3層からなり、これが角膜を保護し、透明性と平滑性を保っています。目を洗う行為は、この油層や角膜を保護する大事な成分を洗い流してしまうので、頭から頭蓋骨などを外して脳をむきだしの状態にするのと同じくらい危険な行為。目を洗うのはホコリなどの異物が入ったときだけにするべきです。このような危険な行為を花粉症対策として毎日行っている人は逆効果で、かえって目の病気にかかりやすくしています」

花粉が飛びやすい日に外出する際には、防じんメガネをかける。万が一、花粉が目に入ったら、防腐剤などが入っていない点眼剤(目薬)を使うといいという。

■目にNGな行動の数々! 対処法を見直して

【2】かゆみで目をゴシゴシこする

強い力で目をこすりすぎると、網膜剝離や白内障になることも。

【3】充血を解消するため市販の目薬を常用している

「目が充血してしまい、充血を取るための目薬を使う人も多いと思いますが、市販の目薬の常用も避けたいことのひとつです。市販の目薬には血管収縮剤が入っていて、これで一時的に白目を白くしますが、常用すると反対に血管が拡張し増殖してしまい、逆に目が血走ったようになってしまいます。目がかゆいときも、医師の診察を受けましょう。市販の目薬には保存剤が多く含まれていて、これも常用すると角膜障害を引き起こす恐れがあります。眼科で処方される目薬は保存剤が少なく安心です。また、花粉症の治療では、かゆみなどの症状に応じて薬を変えるので、医師の指示にしたがって薬を選択することが大事です」

【4】コンタクトで眼球を守れていると思っている

コンタクトレンズには花粉などのアレルゲンが付着しやすく、花粉症のリスクが高まるので、花粉の飛散量が多い時期はメガネを使用したほうが無難という。どうしても使用したいときは、装着は短く、最長でも8時間以内に。長くつけると涙の酸素不足で角膜障害を起こすので気をつけたい。

【5】ドライアイを放置してしまう

「上下のまぶたの縁の内側にあるマイボーム腺に皮脂が詰まり、角膜油分が足りなくなると、ドライアイ状態になります。原因は老化だけでなく、特に女性はメークなども原因のひとつ。メークの汚れなどでマイボーム腺がかたくなったり詰まったりすると脂質の分泌が妨げられ、目の表面をなめらかに保てなくなります。マイボーム腺の詰まりの原因になるアイメークは控えるようにしましょう」

目を見開くスマホの見すぎもドライアイや疲れ目を招きやすく、目が疲れたら、遠方を見たり、ホットタオルなどで目を温めてリラックスしたい。目の血行がよくなり、緊張した筋肉がほぐれてくる。

花粉の本格的な飛散は、2月中旬から2カ月半ぐらい続く。正しい目のケアで、花粉症から大事な目を守ろう。