メキシコ国内で公務員の汚職を報じていたジャーナリストや人権活動家のスマートフォンに、本人の気付かないうちにスパイウェアの「Pegasus」がインストールされていたことがわかりました。感染経路は明らかになっていませんが、政府組織が関わっていたとする見方もあります。

Ejercito Espía - Ejército Espía

https://ejercitoespia.r3d.mx/

New Pegasus Spyware Abuses Identified in Mexico - The Citizen Lab

https://citizenlab.ca/2022/10/new-pegasus-spyware-abuses-identified-in-mexico/

メキシコのデジタル著作権団体であるRed en los Defensa de los Derechos Digitales(R3D)の調査により、2019年から2021年にかけて、ジャーナリストや人権活動家のスマートフォンにPegasusが感染していたことが明らかになりました。

Pegasusはイスラエルのセキュリティ企業であるNSO Groupが開発したスパイウェアで、iPhoneやAndroid端末に侵入し、内部のメールや位置情報などを収集することで知られています。Pegasusはアメリカやイギリス、インドなどでばらまかれ、弁護士や活動家、政治家などが監視の被害を受けていました。

その脅威はメキシコにも及んでおり、2017年にはジャーナリストや弁護士、カルテルにより殺害された被害者などがPegasusの標的となっていたことが分かっています。2018年に大統領の座に就いたアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール氏は「私たちが野党だったとき、私たちもスパイの被害を受けましたが、今では禁止されています。もはやPegasusの乱用はありません」と発言し、国民に安心感を与えようとアピールしていました。



しかし2021年にはオブラドール大統領自身やエンリケ・ペニャニエト前大統領、メキシコシティのクラウディア・シェインバウム市長など、大勢の政治家がPegasusによる監視対象の候補として選ばれていたという新たな証拠が見つかりました。実際に被害を受けた人数は不明ですが、Pegasusを運用した機関の裏に国防事務局や国家安全保障情報局(CISEN)がいたことが、調査により明るみになっていました。なお、CISENはオブラドール大統領の就任後に解体されています。

今回R3Dが感染の実態を再び明らかにしたことで、メキシコでの違法なスパイ活動を終わらせるという政府の試みは果たせていなかったことが裏付けられたと、R3Dは主張しています。

R3Dは「現時点では、ハッキングが特定の組織によるものであると断定することはできません。しかし、被害者はいずれも、メキシコ政府内の組織や、場合によってはカルテルに強い関心のあるジャーナリストだったとみられます。この調査が、説明責任を果たさず、人権侵害を引き起こし、社会が真実と正義にアクセスすることを拒む情報機関を、きっぱりと解体することにつながると期待し、結果を公開します」と述べました。