日本最大級のエレクトロニクス商社が生きる道とは? 答える人 塚本勲・加賀電子会長
―― 加賀電子は前期(2021年3月期)業績が、営業利益、経常利益とも2期連続で最高益となりました。コロナ禍で経済環境は厳しかったと思うのですが、増益になった要因は何だと考えますか。
塚本 前半は世界的にロックダウン(都市封鎖)が広がったり、製造業も工場を一時停止したりして、厳しい状況が続きました。しかし、今は徐々に製造業の需要が回復していますし、国内でも企業のテレワーク(在宅勤務)や学校のオンライン授業向けにパソコンやタブレット端末の需要が伸びました。
また、当社の業績面で大きかったのは間接費の減少です。当社では今、社員の7~8割がテレワークを実施しています。営業に行くにもお客様もテレワークをしているから、社内の会議もお客様との商談も今はほとんどがWEB会議です。
そういった意味では、この1年で、かなり働き方というのは変わってきましたね。
―― コロナは本当に企業や個人の生き方、働き方を大きく変えましたね。
塚本 ええ。当社では社員の交通費も定期券を止めまして、会社に来た分や実際に使った分だけ実費で支払うと。夜の会合もなくなりましたし、交際費は減る、交通費は減る、出張費も減るということで、ものすごい経費削減につながりました。
もともと21億円を予定していた間接費は7億円で終わりましたので、14億円の経費削減になりました。だから、その分は社員に少しでも報いたいと考えまして、期末の臨時ボーナスを支給しましたし、毎月3千円を在宅勤務手当として支給しようと。それで先日、昨年4月から1年間分をさかのぼって、社員に支給したところです。
―― ところで、今、世界では半導体不足が続いていますよね。半導体不足が世界の自動車メーカーの生産計画にも影響を及ぼしているということで、加賀電子にも当然、半導体の引き合いは多いと思うんですが、この辺の現状はどう認識していますか。
塚本 ようやく自動車の生産も回復してきたかなと思っていたのですが、足元の半導体不足はかなり深刻です。米中問題で中国は半導体を海外から調達できなくなるということで、今、ものすごい勢いで国内投資を進めています。ですから、半導体製造装置メーカーは大変な受注を抱えています。
ところが、残念なことに日本の半導体メーカーは昔と違って元気が無くなってきました。わたしは今いろいろなところで申し上げているのですが、最近になって、経済産業省が台湾の半導体受託生産世界最大手・台湾積体電路製造(TSMC)を日本へ誘致しようとしていますよね。でも、わたし個人の意見としては、海外から優秀な企業を誘致するよりも、まずは日本製の半導体を育てることが大事なのではないかと思うんです。
世界的な半導体不足の裏で中国が米国企業の再編に待った
新たな半導体材料を住友金属鉱山と共同開発
―― 本当ですね。国としての基本戦略が問われている。
塚本 半導体の設計やデザインを行う会社は日本にもあるわけで、当社は富士通エレクトロニクス(現・加賀FEI)を子会社化したからよく知っているんですが、例えば、富士通とパナソニックの半導体事業を統合したソシオネクストは、回路線幅が3㌨や5㌨(㌨は10億分の1)㍍の半導体をデザインできる力があるわけです。
これは電気自動車(EV)や自動運転向けに使われる「SoC(システム・オン・チップ)」と呼ばれる最先端の半導体で、これだけの技術を持った会社はそうはありません。だから、作るところさえあれば、日本でもできるんです。
その意味では、わたしは国がある程度の資金を援助して、半導体産業というものを考えていってほしいと思っています。
―― かつて半導体は産業のコメと言われましたよね。これは今も言えるんですか。
塚本 もちろんですよ。日本の半導体産業の力が無くなってきたのは、巨額な投資をする余裕がなくなってきたことが原因ですから、ある程度、国が援助してやって、企業には5年か10年で返してもらえばいいと思うんですがね。
例えば、SoCを作ると言っても、今の中国が作れるのは15㌨くらいなんです。ソシオネクストのように3㌨のような最先端の半導体を作る技術はまだないんですよ。
―― なるほど、これは微細化という技術ですか。
塚本 ええ。半導体というのは、微細化するにつれて、設計が複雑で、高度な技術が必要になります。
一時期に比べて、日本の半導体メーカーの力が弱くなったとはいえ、メモリーではキオクシアホールディングス(旧東芝メモリホールディングス)、マイコンではルネサスエレクトロニクス、CMOSセンサーではソニーと、それぞれの分野ごとに役者は揃っています。
システムの頭脳を担うCPU(中央演算処理装置)の会社が無いのが残念ですが、いずれにせよ、日本にはまだ優秀な技術がありますから、こうした技術の根を絶やさないためにも、国がある程度、国策として関与してほしいと思います。
―― これはいい問題提起ですね。国策として半導体をどう考えるか。もう一度、半導体を日本の手に取り戻せと。
塚本 これから自動車一つとっても、先ほど申し上げたような自動運転だとか、先進運転支援システム(ADAS)など、特殊な半導体の需要は確実に増えるわけですからね。
―― そうなると、加賀電子もそこに絡んでくる?
塚本 もちろん、われわれも絡まなくてはなりません。実は住友金属鉱山と一緒に「シリコンカーバイド(SiC)基板」の開発を行っています。
EVは電圧の高い半導体が必要になってくるんですが、SiCは電力の制御を行うパワー半導体などに使用される半導体材料として今後の需要拡大が期待されています。
やはり、時代と共に求められる商品や技術は変わってきますから、われわれもお客様から聞かれたら、そうしたニーズに対応した商品をお届けしなければなりません。その意味では、われわれも世の中の変化に対して、きちんとアンテナを張っていないといけませんね。
経済安全保障をどう考える? 甘利明・自民党税制調査会長を直撃
